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影の暗殺者は復讐に奔る  作者: 結城 からく


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第9話 前編

 私は動きを止めて吐血する。

 握り込んだ影の刃が崩れて霧散していく。


 それを見たミレイスがすかさず連撃を繰り出した。

 私は瞬時に胴体を滅多刺しにされた挙句、首を刎ね飛ばされる。

 高速で回転する視界に、狂喜するミレイスが映り込んだ。


「やった、伝説の暗殺者を私が――」


 刹那、私は損傷した肉体と頭部を影に溶け込ませて同化し、漆黒の腕を伸ばした。

 光の魔術の保護を穿ち、油断したミレイスの首筋を断ち切る。

 迸る血飛沫。

 間の抜けた顔でミレイスは私を見つめる。

 彼の双眸は驚愕と困惑に染まっていた。


「えっ……」


「影の魔術を舐めすぎだ。この程度で戦闘不能になることはない」


「そ、んな……」


 ミレイスは血に塗れながら倒れる。

 そして二度と起き上がることはなかった。


 私は影との同化を解除して生身の身体に戻る。

 ただし傷口は影で埋めておいた。

 これで放っておけば自然治癒するだろう。

 切断されたばかりの首が少しぐらつくが、機能的な支障はない。


 振り返ると聖騎士は全滅していた。

 それを成し遂げたノルとサリーアは疲労している。

 二人とも軽傷を負っているものの、まだ余裕はありそうだ。


 私は二人に歩み寄って声をかける。


「大丈夫か」


「ああ、こいつらが弱すぎて退屈だったくらいだぜ!」


 指輪を着けたノルは、拳に雷撃を纏わせて不敵に笑う。

 今回の戦闘でかなりの精度で使いこせるようになったらしい。

 なかなか器用なので、今後手に入れた指輪も彼に渡してもいいかもしれない。


 サリーアは思い詰めた様子で倒れる聖騎士達を眺めている。


「…………」


「平気か」


「心の整理は付いていないが、覚悟はできている。私は正義のために戦わねばならない。たとえ味方だろうと邪魔をすれば倒す」


「良い意気込みだ」


 聖騎士達の持ち物を漁りつつ、ノルは私に問う。


「アグタル家の当主はどうなったんで?」


「逃げたが問題ない。既に影の魔術で補足済みだ」


 私は密かに伸ばしていた影の糸を握り、力を込めて一気に引き寄せる。

 しばらくすると遠くから悲鳴が聞こえてきた。

 やがて足首に影の糸が絡まったロンが部屋の中へ戻ってくる。

 勢いよく飛び込んできたロンは床を転がった末に顔面を強打した。


 痛がるロンだったが、私達を見て激しく狼狽する。


「お、おおっ、ちょっと待ってくれ! 話し合いをしよう! 我々は互いに歩み寄れるはずだっ!」


「……何だ、その情けない姿は。アグタル卿……あなたは半端な心構えでここにいるのか?」


 サリーアは静かに憤る。

 彼女の剣の切っ先がロンの喉元に突き付けられた。

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