第8話 後編
ミレイスが両手を前に突き出した。
緩く曲げた十本の指に光の魔術を集中し、輝く鉤爪を形成していく。
それを縦横無尽に振るってきた。
(なるほど。珍しい戦法だな)
光の鉤爪を弾きつつ、私はミレイスの攻撃に感心する。
奇抜さとは裏腹に隙が無い。
指の絶妙な動きでこちらの防御をずらしてくるのが面倒だ。
威力自体も光の魔術なので申し分なかった。
直撃すれば人体を容易く切り裂くだろう。
「伝説の暗殺者カイド・モータル……あなたとはずっと殺り合ってみたかったのですよ」
ミレイスは興奮と歓喜の混ざった表情で言う。
指の動きが加速し、テーブルや壁、調度品まで無差別に切断し始めた。
私は影の刃で受け流し、或いは回避することで対処する。
「実はね、私は命令や立場なんてどうでもいいのですよ。強者との戦って血みどろの勝利を掴み取る。それだけが生き甲斐ですので。己の欲望に従ううちに騎士団長になってしまいましたが、それすら興味がないのです」
「快楽殺人者か」
「ええ、どうぞご自由にお呼びください。あなたとの殺し合いに比べれば、すべてが些事なのですよ」
ミレイスの興奮が最高潮に達した。
十本の刺突を防ごうとした瞬間、一部の鉤爪が伸びる。
伸びた鉤爪は影の刃を潜り抜けると、私の胸を抉るように貫いた。




