黄金蝶探し⑪
洞窟の奥へと進むと、道は徐々に狭くなり、最後には大きな岩壁に突き当たって行き止まりになっていた。
「ええ~!? 行き止まりぃ!?」
テレサががっくりと肩を落とし、悔しそうに岩壁を蹴飛ばす。
「ここまで来てハズレ!? あのコウモリたちの分しか経験値稼げてないじゃない!」
「まあまあ、そういうこともあるわよ。戻りましょうか」
マリアがなだめるように言うが、俺は違和感を拭えずにいた。
ただの行き止まりにしては、空間が不自然に整いすぎている。床は平らにならされ、岩壁もまるで人工的に削られたかのように垂直に切り立っている。
「ただの行き止まり……ではない気がするな……」
俺は《ライト》の魔法で照らされた洞窟内を、隅々まで観察した。
すると、地面に奇妙なものが埋まっているのに気がついた。
「おい、待て。あれを見ろ」
俺が指差した先。
床の岩盤から、直径30センチほどの円柱状の突起物が、地面からわずかに突き出しているのが見えた。
それも一つではない。よく見ると、岩壁の手前に、等間隔で五つの突起物が、半円を描くように並んでいるのだ。
「何これ? キノコ?」
テレサが不思議そうに近づき、その突起物の一つを突っつく。
硬い石の感触だ。植物ではない。
「疲れたし、ちょうどいい椅子がわりね」
テレサはそう言うと、不用意にもその突起物の上にどっかりと腰を下ろした。
ガコンッ
「えっ?」
鈍い音と共に、テレサの座った突起物が、ズズズ……と地面に沈み込んだのだ。
「うわわっ! 沈んだ!?」
テレサが慌てて飛び退く。
しかし、何も起こらない。突起物は沈んだままで、静寂が戻る。
「……なるほど。そういうことか」
このギミックの正体が分かった。
「これは『スイッチ』だ。重さに反応して沈む仕掛けになってる」
「スイッチ……? でも、何も起きないよ?」
「一つだけじゃダメなんだ。見ろ、突起物は全部で五つある」
俺は並んでいる五つの突起物を指差す。
「そして、俺たちのパーティメンバーは、ちょうど5人だ」
「あ……!」
全員が理解したようで、顔を見合わせる。
「つまり、同時に全部のスイッチを押せってことか!?」
「そういうことだ。1人でも欠けたら開かない、5人パーティ限定の隠し扉ってわけだ」
もし俺たちが3人のままだったら、あるいはガルフォードたちと合流していなければ、このギミックの前で指をくわえて引き返すしかなかっただろう。
5人揃った今だからこそ、挑戦権が得られたのだ。
「やるぞ。それぞれ一つずつ、スイッチの上に乗ってくれ」
俺の指示に従い、全員が配置につく。
一番左にガルフォード、その隣にテレサ、中央にサクラ、右隣にマリア、そして一番右端に俺。
「よし、せーの!」
俺の掛け声に合わせて、全員が同時に突起物の上に足を乗せ、体重をかけた。
ガガガガガガッ……!
重苦しい地響きと共に、目の前の岩壁が左右に割れ始めた。
埃を舞い上げながら、ゆっくりと開いていくその先には、更なる深淵へと続く暗い通路が口を開けていた。
「開いた……!」
「すげぇ! マジで開いたわ!」
テレサが興奮して跳ねる。
やはり、この先には何かがある。ただの行き止まりなんかじゃない、選ばれし者だけが辿り着ける秘密の場所だ。
「5人いないと開かないギミックか……。運営も、なかなか粋なことしやがる」
俺は感心と呆れが混ざったような声を漏らす。
ソロや少数パーティ救済のためのボーナス措置がある一方で、こういったフルパーティでなければ攻略できない要素も用意されている。どのプレイスタイルを選んでも、何かしらの楽しみとリスクがあるというわけだ。
「でも、これって逆に言えば……この先には『5人で挑むべき難易度』の何かが待ち受けているってことよね?」
マリアが冷静な声で指摘する。
その言葉に、全員の表情が引き締まる。
「ああ、間違いない。覚悟して進もう」
俺たちは武器を構え直し、開かれた扉の奥へと、一歩ずつ足を踏み入れた。
その先には、巨大な空間と、そして今まで見たこともないような異様な光景が広がっていた。




