黄金蝶探し⑩
「ギシャァァァァッ!!」
マリアの勘は当たっていた。
森を抜けた湿地帯で俺たちが遭遇したのは、大木ほどもある太さの巨大な蛇――『ジャイアント・アナコンダ』だった。
「来るぞ! 迎撃だ!」
俺の合図で戦闘が始まる。
しかし結論から言えば、この戦いは一方的なものだった。
『フンッ!』
ガルフォードが大盾で蛇の突進を受け止め、弾き返す。
「そこよ!」
サクラとテレサが左右から挟み撃ちにし、その長い胴体を切り刻み、叩き潰す。
そして俺とマリアが後方からデバフと魔法の集中砲火を浴びせる。
先ほどのタランチュラと比べれば、攻撃パターンも単純で、防御力も低い。
ほんの数分もしないうちに、巨大蛇は悲鳴を上げながら光の粒子となって消滅した。
「ふぅ、終わったね」
「楽勝楽勝!」
戦闘終了後、俺たちはすぐに周囲を捜索した。
藪の中、木の陰、蛇が出てきた穴の中……
だが。
「……いないわね」
「うん。どこにもいない」
サクラとテレサが首を振る。
黄金蝶の姿は、どこにもなかった。
「ハズレか……」
俺はため息をついた。
ボスクラスのモンスターだからといって、必ず黄金蝶を持っているわけではないらしい。あるいは、もっと強力なボスでないとダメなのかもしれない。
「まあ、そう簡単にはいかないか」
「だな。だが、方針は間違っていないはずだ。次に行こう」
気を取り直し、俺たちはさらに森の奥へと進んでいった。
湿地帯を抜け、少し標高が上がってきたあたりで、岩肌が露出したエリアに出た。
そこで、俺たちは奇妙なものを発見した。
「ねえ、あれ……」
サクラが指差した先。
切り立った岩壁の根元に、ぽっかりと口を開けた、暗い横穴があった。
自然にできた洞窟のようだが、その入り口付近には、なぜか人工的な石柱のようなものが倒れている。
「洞窟……か?」
「なんだか、ただの洞窟って雰囲気じゃないわね。奥から変な風が吹いてくるし」
人工的に掘られたものではなく、自然の岩盤が崩落してできたような、荒々しい入り口だ。中からは冷たく湿った風が吹き出してきており、何とも言えない不気味な気配を漂わせている。
「いかにも『何かいます』って感じね」
テレサが顔をしかめる。
確かに、洞窟の中から漂ってくるのは、カビ臭いような、もっと古い時代の空気のような匂いだ。
「怪しいな」
「うむ。黄金蝶が隠されているとすれば、こういう場所こそ相応しい」
「少なくとも、さっきの蛇よりは期待できそうだ」
俺たちは顔を見合わせ、頷いた。
「行ってみる価値はあるな」
隊列を組み直し、慎重にその暗い洞窟の中へと足を踏み入れた。
静寂と闇に包まれた洞窟。
その奥底に待ち受けているものが、黄金蝶であることを祈りつつ、俺たちは一歩一歩、先へと進んでいった。
俺は杖を握り直し、洞窟の入り口を睨みつけた。
奥からは微かに、何かが這いずるような音や、水が滴る音が反響して聞こえてくる。
「入るぞ。灯りが必要だな」
「任せて。《ライト》!」
マリア杖を掲げた。
すると周囲が暖かな光に包まれる。
「じゃあ、あたしが先頭を行くわ。狭い場所ならハンマーの出番だし!」
「いや、先頭は吾輩が務めよう。盾持ちが先陣を切るのは戦場の常識だ」
ガルフォードが立ちはだかる。
「そお? そんじゃお願い」
ガルフォード、テレサ、サクラ、俺、マリアの順で隊列を組み、俺たちは慎重に洞窟へと足を踏み入れた。
中はひんやりとしていて薄暗い。
壁面はゴツゴツとした岩肌で、所々に見たことのない発光する苔が生えている。
足元はぬかるんでいて歩きにくい。
「うぅ……なんか出そう……」
サクラが俺の背中にぴったりとくっついて歩く。
その時、前方の暗闇から、バサバサバサッ! という羽音が響いた。
「来るぞ!」
ガルフォードが盾を構える。
現れたのは、巨大なコウモリの群れだった。
赤く光る目でこちらを睨み、鋭い牙を剥き出しにして襲いかかってくる。
「雑魚だ! 蹴散らせ!」
俺が叫ぶと同時に、マリアが火球を放ち、テレサがハンマーを振り回す。
狭い洞窟内での乱戦となったが、個々の能力が高い俺たちにとっては苦戦する相手ではない。数分の戦闘で、コウモリたちは全滅した。
「ふぅ。今のところは、ただの雑魚敵ばっかりね」
「油断するな。奥に何かいるはずだ」




