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不人気と言われようともデバッファーを極める ~攻撃スキルが無くても戦えます~  作者: 功刀


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黄金蝶探し⑥

「ダメ元でいい! 喰らえ、《ブラインド》!」


 俺は一か八か、状態異常が効きにくそうな巨大生物に向かって暗闇のデバフを放った。

 黒い霧のようなエフェクトがタランチュラの複眼を覆う。


『ギ……!? ギシャァァァァァッ!』


 タランチュラが視界を奪われ、狂ったように暴れ出した。


「お。効果があった!」


 しかもかなり深く効いているようだ。闇雲に脚を振り回すが、その攻撃は虚しく空を切るばかりだ。


「ヌハハハ! 隙だらけだぞ、貴様!」


 ガルフォードが豪快に笑い、無防備になった横腹に盾の一撃を叩き込む。

 タランチュラが大きく揺らぐ。今ならいける!


「畳みかけるぞ! 一気に落とせ!」

「了解!」


 サクラとテレサも攻撃に転じようと駆け出した、その瞬間だった。


 ザザザザザッ……!


 周囲の藪や地面の裂け目から、カサカサという不快な音が無数に響き渡った。

 俺たちが警戒する間もなく、広場の四方八方から、大量のモンスターが溢れ出してきたのだ。


「きゃっ!? なにこれ!」


 サクラが悲鳴を上げる。

 現れたのは、ベノム・タランチュラをそのまま小さくしたような、子蜘蛛の群れだった。小さいとはいえ、大型犬ほどのサイズはある。その数は20、いや30はいるだろうか。


「子蜘蛛の増援か! くそっ、ボスの体力が減ると湧くパターンか!」


 本体への攻撃に集中したいタイミングで、この数の雑魚は厄介すぎる。一体一体は大したことなくても、これだけの数に囲まれれば一瞬で食い殺される。


「きゃあっ! こっちに来ないでよ!」


 テレサがハンマーで数匹を吹き飛ばすが、すぐに後続が湧いて出てくる。

 前線のガルフォードとサクラも、子蜘蛛に足を取られて本体への攻撃が続かない。


「まずいな……このままだと押し潰されるぞ!」


 俺が範囲攻撃スキルの有無を確認しようとした時だった。

 後方で援護していたマリアが、一歩前に出た。


「あらあら、ずいぶんと賑やかになってきたわね。……でも、私の前で数で勝負しようだなんて、甘いわよ?」


 マリアは優雅に杖を掲げ、詠唱を開始した。

 その周囲に、陽炎のような熱気が渦巻き始める。


「燃え盛る業火よ、螺旋を描き、敵を灰燼と化せ! 《フレイムストーム》!!」


 叫びと共に、杖の先から巨大な炎の渦が発生した。

 それは見る見るうちに大きくなり、意志を持った竜巻となって、子蜘蛛の群れの中心へと突っ込んでいった。


 ゴオオオオオオオオォォォッ!!


『キィィィィィィィッ!!』


 炎の竜巻に巻き込まれた子蜘蛛たちが、断末魔の悲鳴を上げながら次々と燃え上がり、宙へと巻き上げられていく。

 圧倒的な火力。そして、完璧な攻撃範囲。

 たった一撃の魔法で、広場を埋め尽くしていた子蜘蛛の群れは、あとかたもなく焼き尽くされてしまった。


「す……すごい……!」


 サクラが目を丸くする。

 あれほど広範囲で高威力魔法を、このタイミングで完璧に決めてくるとは。この人もまた、只者ではない。


「ふぅ……。ちょっと熱くなりすぎたかしら?」


 マリアはふわりと髪をかき上げ、涼しい顔で微笑んだ。


「お見事だ、マリア! 雑魚掃除、感謝するぞ!」


 ガルフォードが盾を鳴らして称賛する。

 邪魔者は消えた。あとは、目の前の親玉だけだ。


「さあ、邪魔はいなくなったわよ! 今度こそ決めるわよ!」


 テレサがハンマーを担ぎ直し、炎の中で無傷で残っていたベノム・タランチュラを見据える。

 子蜘蛛を失い、視界を奪われ、孤立無援となった巨大蜘蛛。

 もはや、俺たちを止めるものは何もない。


「総攻撃だ! サクラ、テレサ、ガルフォードさん! 全力で行け!」

「応ッ!!」


 俺の号令に、三人が同時に飛びかかる。

 最後の一押しとして、タランチュラに杖を向けた。


「 《アーマーダウン》!」


 防御力を下げるデバフが、タランチュラの硬い外殻を脆く変える。

 そこへ、三人の必殺の一撃が同時に炸裂した。


「喰らえ! 《シールド・インパクト》!!」

「吹き飛べぇぇぇッ!!」

「はあぁぁぁぁっ!!」

「《ファイヤーボール》!!」


 ガルフォードの重い盾撃。

 テレサの豪快なハンマー。

 サクラの鋭い剣閃。

 そしてマリアのスキル。


 4つの衝撃が一点に集中し、タランチュラの巨体を粉砕した。


『ギ……シャァァァァァ……!』


 断末魔の叫びと共に、ベノム・タランチュラは仰向けに倒れ、光の粒子となって崩れ去っていった。

 後に残されたのは、静寂と、勝利の余韻だけだった。


「や、やった……!」

「勝った……!」


 サクラとテレサが、互いに顔を見合わせてハイタッチをする。

 俺も大きく息を吐き、杖を下ろした。

 急造の混成パーティだったが、想像以上の連携を見せてくれた。これなら、この先も戦っていけるかもしれない。


「見事な采配だったぞ、参謀殿!」


 ガルフォードが、兜を脱いで豪快に笑いながら近づいてきた。野性的な顔には、清々しい笑顔が浮かんでいる。


「いや、あんたの盾のおかげで助かったよ。あんな戦い方、初めて見た」

「ハッハッハ! 盾も使いようによっては最強の武器になるのだよ! ……さて」


 ガルフォードは笑いを収め、広場の奥にある巨大な蜘蛛の巣へと視線を向けた。

 そこには、戦闘中もずっと変わらずに輝き続けていた、二つの小さな光があった。


「約束の報酬を、山分けといくか」


 俺たちは頷き合い、蜘蛛の巣へと歩み寄った。

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