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王子様、話しかけないでください!

やらかしたと思った時にはすでにエルザの周りに人だかりができていた。あり得ないほどの歓声と拍手のフルコンボにエルザは自分がしでかしたことを猛烈に後悔した。これでは地味をモットーに学園生活を送ろうとしていた目標がパーになりかねない。どうにかせねばと考えていたエルザにとどめの一撃が入った。



「実技、筆記ともに百点ですわ!」



「素晴らしい!稀代の新入生だ!」



「彼女が新入生代表で間違いないな!」



「え、いや、待ってくだ」



「おめでとう!エルザ嬢!」



「・・・・・」



(イ、イヤァァァァーー!!待ってくれぇぇー!!)



学園長だと言ういい笑顔のおじいさんに肩を叩かれたエルザの魂は一瞬どこかに飛んで行った。周りが感激している中、当の本人であるエルザの目は死んでいる。自分で自分の首を絞めたエルザの平凡学園生活は始まってもいなかったのに終わりを告げた。











次の日、やらかした原因の花火は絶賛され、実技筆記ともにオール満点を取ったエルザは見事に新入生代表になってしまった。やらかしたエルザを待っていたのは恐ろしい形相をしたヨーコの説教、二時間コースだ。待女であるが元王宮教師をしていたヨーコに勝てるエルザではなかった。




初日からやらかしたエルザはこの先を思い浮かべてヨーコとため息をはいた。そんな二人とは違い、リディだけは「さすがお嬢様!!」と満面の笑みを浮かべて喜んでくれたが。












「エルザぁぁ!!同じクラスだね!」



「そうですわね、ミー」



「その口調、全然似合わないね!」



「うるさいわ!!」



エルザと同じクラスになったミーネスは真っ先に駆け寄ってきた。エルザが淑女としての姿勢を取ろうとしても、思ったことを包み隠さないミーネスのペースに引っ張られて断念してしまうのが今の現状だ。久しぶりに会ったミーネスは美少女っぷりに拍車をかけていたが、貴族になってもある意味何も変わらない親友にエルザは喜んでいいのか悪いのか悩んでいる。




オール満点を取得したエルザは一番上のSクラスになり、その中にはヒロインのミーネスや攻略者に悪役令嬢、そしてあまり顔を合わせたくない王子様というゲームのキャラクターが勢揃いしていた。試験から次の日、初めて顔を会わせたクラスメイトに意味のわからない熱い眼差しを向けられたエルザはトイレに駆け込み、小一時間は出てこれなかった。常備していた特製胃薬がなければ危うくキラキラしたブツが口から出て大惨事を起こすところだった。




その後も教室に戻ったエルザは初騒動の影響で一部の生徒(主に男性)から熱い眼差しを受けながら授業をすることになってしまった。逆にエルザが授業中に熱い視線を送るのは前世で一番の推しだった今年38のイケオジ教師、ブルーディラ・バイオレンだ。エルザを憐れに思った神様の慈悲なのかSクラスの担任で登場したのだ。



「あぁ、カッコいいわ」



「誰が?」



「ブルーディラ先生はイケオジね、萌える!」



「じゃあ、私は?」



「・・・何なんですか、いきなり」



はうと恍惚に顔を赤らめていたエルザに隣の席に座っている、つまらなそうな表情をしたアジェットが話しかけてきた。話しかけられたエルザはしかめっ面である。


なんの因果かエルザの右隣の席はアジェット、左隣はヒロインことミーネス、前は攻略者の一人の侯爵子息シエル、後ろも攻略者の一人の公爵子息カミラ。どこを向いてもゲームのキャラクターしかいない、奇跡のコンボを果たしていた。



「王子様はカエルで十分よ、絵本であるじゃないカエルの王様」



「何か言ったかい?ミーネス嬢」



「何よ?文句ある?」



「そっちこそなんだい?」



「ケンカするなら他所でどうぞ」



右と左でにらみ会う二人に挟まれたエルザは本日何度目かの大きなため息をはき、机に頬杖をついた。周りに助けを求めても苦笑いをされて親指を立てられる始末だ。



(誰か席、交換してくれ!頼むから!)



同じクラスな上に隣の席になってしまっためんどくさい王子様にエルザの胃はきりきりと痛んでいた。










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