エルザは魔王(お兄様)に現行犯逮捕されたが反撃した!
とうとうエルザの怒りが爆発します(笑)
倉庫に近付いてくる足音にエルザは
息を潜めて動きを止めた。エルザが隠れている所は倉庫の大きな宝箱の中だ。そう簡単には見つからない所にある宝箱の筈なのにナデルの足音は真っ直ぐにエルザのいる宝箱に向かってきている。そしてエルザの願いは神様には届かず宝箱はギィィと音をたてながら開けられてしまった。
「エルザ、捕まえた」
(人生、終わったな・・・)
差し込んできた光と共に魔王の声がする。宝箱に縮こまっていたエルザを何事もなかったかのように抱き上げたナデルはハイツにお礼を言った。
「ありがとう」
「エルザ、そんなことだったんなら早く言えばよかったんだぞ」
「(そんなことで済んじゃうのかよ、おじさん・・・)」
ナデルと笑い合うハイツにエルザは途方にくれた。と言うかいつの間に仲良くなったんだ。ナデルから降ろされたはいいが視線が怖くて逃げれそうにない。
初めてあった時からいつだって義兄はエルザより一枚上手である。平民モブの雑魚キャラがボス戦にいる魔王に勝てるわけがない。
エルザは魔王に現行犯逮捕された。
問答無用で公爵家の馬車に乗せられたエルザは只今、説教を受けている。本物の角が生えてるんじゃないかと疑うほどナデルの顔は険しい。エルザは甘いものを食べたかっただけなのに、解せぬ。
「聞いてるのか?」
「一応、聞いてます」
「どこに空を飛んで買い物をしにいくやつがいるんだ」
「ここにいます」
「そうか、ってそうじゃないだろ!」
開き直ったエルザにもはや怖いものなどなく素直に手を上げた。見た目は大人に見えるがエルザはまだ15歳の子供だ。成人しているナデルとは七歳差もある。ちょっとぐらいの我が儘は許してほしいところだ。ふんと顔をそむけたエルザにナデルは大きなため息を吐いた。
「そもそも空を飛べるのは魔力量が多い貴族だけだ。教えてもいないのに簡単に飛べるのがまずおかしい」
「え、そうなの?」
「ああ、飛べるのは俺が知る限り俺たちを含めてこの世界には六人だけ。飛ぶのには大量の魔力がいるんだ。俺も初めて飛んだときは魔力枯渇を引き起こしたぐらいだ」
「嘘でしょ!?私、できちゃったけど!」
「ナディア様の才能を受け継いたからだろうな、あの方は天才だった」
信じられない言葉を聞いた気がする。空を飛べるのはこの世界に六人だけ、もちろんその中にはエルザも含まれている。たが、エルザはナデルのように魔力枯渇なんて起こしていない。
それに空を飛ぶ魔法を作ったのはエルザの亡き母ナディアらしい。
これではエルザが普通じゃないということになってしまう。
モブのエルザができるということはヒロインであるミーネスもできる筈だ。
可能性にかけてナデルに恐る恐る聞いてみた。
「それって、ミーネスもできるよね?」
「アホか妹よ?ミーネス嬢はお前より魔力も少ない上に光属性しか持ってないだろ」
「・・・・嘘だ」
「まぁ、エルザは普通じゃないしな。俺のあの授業についてこれるなんて絶対にあり得ないことだったんだけど」
「へ?」
「普通だったら死んでるよ。俺の攻撃受けて平然と立っていられるなんて普通じゃないし」
「殺す気だったんのか!?妹を!?」
さらりと恐ろしいことを言うナデルの横っ面を一度ぶん殴ってもいいだろうか。「魔力枯渇中に体力づけなんて下手をしたら死んでるよ」と笑いながら言う兄がいてたまるか。改めて思うが、やっぱりこの男は鬼畜だった。
「いやー、どこまでいけるのか試してみたくなってね?俺の推測は正しかったな」
「なってね、じゃないだろ!?下手したら死んでたよ?!」
「あまりの可愛さについ?」
「誤魔化すなよ、・・・・やっぱり一回だけ殴らせて?」
「お、落ち着いて!拳握んないで頼むから、俺魔法使いだから物理攻撃には弱いんだよ!?」
「嘘つけ!!散々剣片手に物理攻撃してきたやつがなにいってんの!?」
エルザの背後に怒れる虎が現れたように見える。今までのストレスが爆発寸前のエルザは拳を握っている。ゆらりと立ち上がったエルザを止められるものはここにいない。そのエルザを追い込んだ悪の元凶ナデルは真っ青になって首を振っていた。何故なら今、この馬車はエルザにより魔法無効化されているからだ。
ナデルが教えてもいない知りもしない魔法をいとも容易くしてしまう可愛い妹がどこまでできるか試して見たくなっただけである。だが、その代償は割りと大きかった。
「覚悟はいい?お、に、い、さ、ま?」
「は、はやまるな!エルザ!わざとじゃなかったんだ!」
「へぇ、そう。だから?」
ナデルの言い訳も空しく、 怒れるエルザの綺麗な右ストレートがナデルの頬にきまった。




