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「23歳ー神城刹那」
二十三歳。
刹那は、笑うことが上手くなっていた。
相手が望むときに微笑む。
必要な場面で冗談を言う。
礼儀正しく、穏やかに、適切な距離を保つ。
誰もが彼を好青年だと評した。
けれど、彼をよく知る人間ほど、その笑顔を恐れた。
「神城さんって、優しいですよね」
新人社員がそう言うと、先輩は少し困ったように笑った。
「……そう見える?」
「はい。いつも丁寧ですし」
「そうね。でも、仕事では一切容赦しないわよ」
実際、刹那の判断は冷徹だった。
成果を出せない事業には、迷わず撤退を命じた。
長年の取引先であっても、必要がなければ契約を見直した。
感情に流されることはない。
誰かに嫌われることも、恐れない。
彼にとって大切なのは、正しい判断を下すことだけだった。
その姿は、まさに神城家が望んだ後継者そのものだった。




