「最悪な出会いは、夢の中で。」
すべての始まりは、私が十二歳の春だった。
その日、私は見知らぬ庭園に立っていた。
足元には白い石畳。左右には色とりどりの花が咲き、少し離れたところから水の流れる音が聞こえる。
頭上には、雲ひとつない青空。
風が吹くたびに木々の葉が揺れ、柔らかな陽射しが地面にまだらな影を落としていた。
『……どこ、ここ』
見覚えのない場所だった。
ついさっきまで、自分の部屋で眠っていたはずなのに。
不思議に思って頬をつねってみる。
痛い。
もう一度、少し強めにつねる。
やっぱり痛い。
『夢って、痛いんだっけ……?』
首を傾げながら辺りを見回した、そのときだった。
「おい」
背後から声がした。
振り返ると、少し離れたベンチに男の子が座っていた。
私と同じくらいの年齢だろうか。
整った顔立ちに、涼しげな目元。きちんと着こなした白いシャツは、どこかのお坊ちゃんみたいだった。
彼は膝の上に開いていた分厚い本から顔を上げ、ひどく迷惑そうにこちらを見ていた。
「さっきから何やってんだよ、お前」
『……え?』
「頬っぺた何回もつねって。馬鹿なの?」
初対面の男の子に、馬鹿と言われた。
『……は?』
「聞こえなかった? 馬鹿なのかって聞いたんだけど」
その瞬間、私は確信した。
この男の子とは、絶対に仲良くなれない。
少なくとも、そのときは本気でそう思っていた。




