1/39
「夢の中の、嫌な奴。」
――私が初めて恋をした相手は、夢の中にしか存在しなかった。
もっとも、出会った当初の彼を好きになるなんて、天地がひっくり返ってもあり得ないと思っていた。
口を開けば悪口ばかり。偉そうで、生意気で、何を言っても必ず言い返してくる。
顔だけは腹が立つほど整っていたけれど、性格は最悪。
そんな男の子だった。
それなのに。
何年も経った今でも、私は彼の声を覚えている。
『……絶対迎えに行く。だから待ってろよ、馬鹿』
あの日、泣きそうな顔でそう言った彼は、最後まで私の手を離そうとしなかった。
そして、その夜を最後に。
私は二度と、彼の夢を見なくなった。




