衝撃的な不可解
クマムシの文章を直接読んだジョンは衝撃を覚えた。誤読をしたのではないかと何度も読み直したり辞書を引いて確かめたり人工知能を使って分析したりした。しかしクマムシはアジア諸国が監視団を結成して日本を再軍備させるべきだと提案している。生まれてからずっとイギリスに暮らしているジョンは東アジア情勢にさほど詳しくはなかったが、クマムシのブログが国際社会を挑発する文章だと分かる。他の文章を読んでみると更に過激だ。中国男性やウクライナやパレスチナを非難している。極めて排外主義的で危険だ。
しかし何度も読んでいくうちにクマムシがナチス好きでもなければアジア侵略を賛美しているわけでもない事が何となく分かる。アジア侵略を非難されて軍事力を持てない日本がウクライナに限られた範囲で支援しようとしたのにナチス扱いされた。日本男性や日本企業ではなく弱い日本女性や子どもを狙った中国男。ネタニヤフとの支持者ではなく平和を願う民間人を狙うパレスチナとイラン。クマムシなりに社会の不条理を強く感じている。
アジアの監視団についても日本の暴走を防ぐ為の方法であって、アジア侵略を賛美しているわけではない。アメリカに依存したり中国を過小評価したりする状況をクマムシは嫌がっているのだ。
ここ十日ほど、クマムシのブログは閲覧されているようだが不思議とコメントはなかった。ジョンの気に入っているアカウントの日本男性による紹介で様々な人達が閲覧しているようだが言語の壁が大きいのか皆、黙っているのだろう。翻訳機を使用しても正確なニュアンスまでは分からない。クマムシの文章を全く理解できない者も少なくないはずだ。また、皆はクマムシを挑発することでクマムシによる反撃を警戒しているのかもしれない。もしくは第三者から嫌がらせだと非難されるのを恐れているのだろう。クマムシの文章を不快に思った者はクマムシのアカウントを黙ってブロックすれば十分だ。
ジョンは心がむず痒くなった。クマムシが無視できなくなった。不快や憎悪よりも不可解や衝撃が脳内に走る。クマムシは本当に人種差別主義者で異常者なのか。それを検証したくなった。しかし誰もコメントを書かない。ジョンはクマムシを紹介したアカウントに思い切って文章を直接読んだことを伝えた。彼も同様に不安を抱えていたようでジョンのコメントに安堵の返信をした。




