反応
作業所から帰り数学の勉強を終えると湯利は簡単な食事と入浴を済ませる。寝る前に一時間ほどブログを書く。毎日確かめるが閲覧された形跡はない。湯利は悔しいとは思わなかった。むしろどんな酷い事を書いても炎上しないので気が楽だった。二十代の頃にSNSで女性差別を繰り返すアカウントに何度も暴言をぶつけたらアカウントが凍結になった。それ以来、SNSを使わないようにしていたが、頭の中に浮かぶ考えを整理する為に細々とブログを続けている。コメントどころか読まれもしない。
ロシアに侵略されたウクライナが昭和天皇をヒトラーと同一視するようなコメントをした時に湯利はブログでウクライナを罵った。平和の祭典を開催していたイスラエルの民間人を襲撃したイランとパレスチナを非難もした。中国で日本女性と子どもを殺害しようとした中国男を呪った。それでも炎上どころか反応がなかった。
しかし先日、閲覧された形跡があった。のべ数百人ほどだ。いつもは多くても三人ほどだしそれも一か月に一度ほどだ。湯利は訝った。思想を変えたわけでもなければ話題性のある話をしたわけでもない。
日本の再軍備の是非を問うた文章が注目を浴びている。一週間前に書いた文章である。三日ほど前から今日まで反応がある。
日本は二十世紀にアジア侵略をしたのでそれを反省して憲法九条で軍事力を否定している。しかしそれは自国の事は自国で守るという責任を放棄する事でもある。現在の日米地位協定は全く対等ではなく、日本もからもアメリカからも批判されている。右翼はアメリカとの同盟を強化しようとするが、左翼はそれに猛反発している。湯利はブログでインドを含めたアジア諸国が監視団を結成して日本政府や自衛隊と連携して安全保障を強化すべきだと提案した。アジア諸国に監視され、日本が暴走することもなければ、日本が自国に対して責任放棄する事もない。中国とアメリカは大国なので傍聴に徹する。アジア諸国は大国ほど人員を少なく地位の低い者を派遣し、小国は地位の高い者を多く派遣する。予算や戦略は暗号学を駆使して機密情報を守りながら信頼性を保ち、公表できる事は全世界に向けて公表する。米中だけではなく他の国々の警戒も考える。
今のところはコメントはなく、炎上はしていない。しかし湯利は気味の悪さを感じた。諜報機関が監視しているのだろうか。けれども諜報機関も暇ではないし実現性が低くて下らない内容ならば無視するはずだ。
湯利はこの文章を消そうか迷ったが放置することにした。炎上しそうになれば削除すれば良い。




