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クマムシ

 ジョンは日本の映画と漫画を好んだ。父親が日本映画が好きなので幼い頃から観ていた。時々、父親は子どもだったジョンに英訳された漫画も買い与えてもいた。ジョンは学生の時は中国語か韓国語か迷ったが、日本語を選択した。会社で働いていた時は日本人との交渉に通訳を任されてもいた。日本人は非常に英語が苦手で訛りも強い。独特な文化や考え方をするのでジョンの会社の同僚たちは困惑していた。言葉だけではなく漫画で日本文化に慣れていたジョンは同僚達に根気強く説明した。


 実家のレストランで働いている現在ではジョンは電子書籍で日本の漫画を読んでいる。最近は日本映画よりも韓国映画やインド映画を英語字幕で視聴している。最近読んでいる日本の漫画はママ友が集まって子供と一緒に温泉巡りをする素朴な話だ。以前は架空世界や魔法や戦闘ばかりの漫画を好んでいたが、今では女性達が和気藹々と生活を楽しむ話に楽しみを感じる。


 ジョンはSNSを利用するが時事問題や政治問題には興味がない。世界経済状況や戦争の報道を追っても精神が疲弊するし、差別に怒る人達による憤りに共感しても自己嫌悪と強者への猜疑心が強くなるばかりだ。環境問題を気にかけても温暖化や動物が救われるわけでもない。厨房で料理しながら客と母親の世間話を聞くぐらいで十分だ。客達はスポーツや芸能で花を咲かせることもあれば経済や政治や環境問題を熱心に解説することもある。絶妙に冗談にして笑い飛ばす者もいる。


 ジョンは自分が読んだ漫画や視聴した映画の感想を語るアカウントを探して閲覧する。ジョンはSNSで熱弁するよりも他人の話を覗くばかりだ。ブロックされるのが嫌なので余計なコメントもしない。ジョンが気に入っているアカウントは十件ある。皆、登場人物達を罵倒する者はいないし過激な言葉で誰かを挑発することもない。自分たちの持っている知識や経験を踏まえながら感想を語っている。


 それらのアカウントのうちの一つは日本人男性のアカウントだ。彼は日本語も英語も流暢に使いこなしている。音声や動画も発信しており、英語を話す時、日本訛りが強いが十分に意味が通じる。


 ある時、彼は長い文章で「クマムシ」という名前のアカウントについて語っていた。クマムシは日本人であり日本のブログを利用している。日本在住で日本語しか使えないようだ。しかし思想が独特だ。彼はクマムシの文章を読んでいるうちに不安になり、英語でクマムシを語ることで読者の反応を確かめたくなったのだ。


 ジョンはクマムシのブログを直接確かめることにした。

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