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滲み出る暴力

 今晩は重度障碍者施設でテロを起こした犯人と元首相を殺害したテロリストを嘲笑した。湯利は二人の犯罪者が大嫌いだった。発達障碍者でもある湯利は偽善者面をしながら安楽死と決めつけて障碍者を虐殺した犯人を許容できなかった。仮に障碍者本人や介助疲れの家族が死を望んだとしてもそれは当事者達の問題であって第三者の驕りで障碍者を殺すべきではない。極右翼と批判されていた元首相を殺害したテロリストも果敢に権力に戦いを挑んだのではなく、脚光を浴びてやり場のない怒りをぶちまけただけだ。他に殺害したかった人物が厳重に守られているから元首相を狙っただけだ。テロリストとしても三流だ。


 しかしネットでこの二人を賛美する者が少なくない。人間とは所詮は感情的で卑劣だ。ネットで騒ぐ人達が魂の有る人間とは思えない。一見理路整然と本音を吐露しているようでいて言葉の重みが感じられない。湯利は心が冷めるのをまざまざと感じる。障碍者施設でテロを起こした犯人の悲しい過去や障碍者家族の介助疲れが話題になっても全く犯人に同情できない。元首相を殺害したテロリストの悲しい過去に同情し思想に同調する人達が下らない。


 むしろ幼馴染をリンチして殺害した主犯格の女がトクリュウを殺害してれば良かっただろうと強く想像してしまう。トクリュウはヤクザの美学すらない非常に卑劣で悪虐な連中だ。老婦人ばかりを狙って可哀想な弱者を操って生命や財産を奪い続けている。障碍者ではなくトクリュウが消えた方が社会の為だ。


 誰も湯利の考えを理解する者はいない。両親にも勤務先である作業所・美桜の人達にも話せない。訪問看護や主治医に打ち明けても宥(なだ)められるばかりだ。話を傾聴してもらうだけでも有難いが鬱屈は消えない。主治医も看護師も頭ごなしに湯利の話を否定はしないが、守秘義務として封印する。残虐性を抱える人間自体は珍しくないし、悪虐な考えがよぎるのは仕方ないことだ。自己嫌悪になっても仕方がない。しかし、思考と発言と実行との間にはそれぞれ大きな隔たりがある。暴力は決して許されない。


 ブログで湯利は発達障碍者だと公言している。本名も住所も一切晒していないし、画像を一枚も挙げていない。匿名な空間だからこそ、自分の内面や障害を公にできる。


 タラは今日もブログを覗いているだろうか。湯利は少し気になったが深追いする気はなかった。

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