集団リンチ
湯利は週五日、相変わらず黙々と竹籠を作っていた。最初は職員から手取り足取り教わって不細工な代物しかできなかったが、五年の間に一般の客に売れるような作品を製作できるようになった。焦って早く作るよりも地道に正確に作った方が良い。工賃は一か月に二万円貰えればよい方だったが、両親から仕送りをもらっているので独り暮らしができている。
数学と物理と化学の勉強を終えた後、寝る前にブログを更新していく。この間はセクシャルマイノリティについて語った。今晩は非常に過激な内容を書くことにした。タラが読んでいる可能性があったが、愛想をつかされてもかまわないと思った。
去年、東北で殺人事件が起きて話題になった。アメリカ企業が運営している無料動画サイトでもその事件を非難しているアカウントが沢山あった。湯利は視聴するだけで、動画を一度も投稿したことがない。
若い女性を幼馴染の女が男を含めた複数人数を集めて集団暴行して殺害した残虐な事件だ。主犯格だった女は自分より体格の良い男を性行為で制御して言いなりにさせ、更に複数の女を恐怖で支配させて一人の被害者に死ぬまで暴力をふるったのだ。地元の警察官を性的に制御しようとして捜査を攪乱させたりもした。
無料動画サイトのアカウントの人達は主犯格である女を「アバズレ」「鬼畜」と罵倒し、いかに主犯格が異常で卑劣で醜いかを感情的に語っていた。湯利も被害者の女性が非常に可哀想だと思った。被害者には落ち度らしい落ち度はなかったようだ。しかし同時に湯利は感情的に主犯格を罵る人達に違和感を覚えた。彼等は罵倒できる女が現れて憂さ晴らしができて楽しんでいるのではないかと疑った。
そう思っているうちに湯利は被害者が女性ではなく、自分の手は汚さずに闇バイトで弱者を脅して実行犯に仕立て上げ、老婦人ばかりを狙うトクリュウが被害者だったら良かったのにと思うようになった。自分よりも圧倒的に体格の良い男を性的関係になって支配できる加害者ならば女性一人をわざわざリンチして惨殺する意味はない。トクリュウみたいな卑劣で凶悪な犯罪者を殺害した方が、周りを恐怖で支配できるし賛美する第三者も現れる。過去にも重度障碍者施設でテロを起こした元介護士を賛美した者もいるぐらいだ。
しかしこんな事は勤務先の作業所にも両親にも言えない。




