暗号学と英語
ブログで数学について語った数日後にタラから再度コメントが届いていた。タラは湯利の向学心を誉めて数学の勉強を応援している。知識を武器に他人を攻撃したり見下ししたりする知識人よりも、知識不足でも学ぶ姿勢のある者の方が余程誠実だ。挫折しそうになるだろうが、思考し続けることに人間の価値がある。
イギリス人であるタラが素直に応援しているのか皮肉を言っているのか湯利には一瞬分からなかった。日本の受験戦争は過去の話で現代では外国の方が遥かに学歴社会だ。中国も韓国も高校卒業試験と大学入試に人生を賭けている。アメリカもイギリスも学士課程よりも修士課程や博士課程を雇う。高校数学で挫折した日本人は低学歴でしかない。
しかしタラは湯利が過去にアジア諸国による監視団について暗号学について触れたことについて興味を示しているようだ。暗号学は数学と英語の知識は欠かせない。同時に人文科学と社会科学の知識も活かされる分野でもある。英語を深く学べば暗号学に触れる機会も増える。日本語で暗号学を学ぶのには限界がある。世界的に暗号学の専門家は不足気味だ。英語を学びながら暗号学の基本を少しずつ学ぶ。独学で学んで間違った知識を身に着けたり杜撰な暗号を考案するのは危険だが、一般人が気軽に専門家から暗号学を学べる場所は限られている。
タラはブロックチェーンや暗号資産について簡単に解説していた。ブロックチェーンは権力分散型な上に改竄は非常に難しい画期的なシステムで様々な契約や取引に活かせる。しかし色々なコストがかかるので簡単に実用化されるのは難しい。ギャンブルみたいな投資で暗号資産を扱うべきではない。
湯利は金融や経済には全く詳しくないが、限られた予算と知識と経験を活かして状況を判断しながら優良企業に投資する株式投資が面白いとは思っていた。二十代の頃はカネ転がしを貧困層を追い詰める富裕層の忌まわしい遊びだと嫌悪していたが、富裕層でなくても株式投資に参加できる。ブロックチェーンの仕組みは確かに興味深い。
英語はどうしても苦手だ。何度試みても挫折する。長文を読もうとしても一文の長い文章には苛立ちを覚える。聴き取りも全くできない。単語がなかなか覚えられない。湯利は英語を学び直す気にはなれなかった。けれどもタラには興味を持った。未だタラのアカウントを直接覗く気にはならないが、タラが勉強を応援しているのは皮肉ではなさそうだ。




