第31話 夏だ!海だ!水着だ!
巨大蛸との戦いからしばらく後――。
季節はすっかり夏へと移り変わっていた。
真っ青に澄んだ空。
容赦なく照りつける太陽。
街には建設作業の音と住民たちの活気ある声が響いている。
王虎の牙の集落も徐々に街としての形を整えつつあった。
そんな中――。
たるとは額の汗を拭いながら歩いていた。
「暑いです~」
耳は力なく垂れ下がり尻尾も元気を失っている。
俺は思わず苦笑した。
「まだ午前中だよ」
「もう限界です~」
たるとは木陰へと駆け込むとそのままその場に座り込んだ。
そこへ資材を担いだゴウマが通りかかる。
「何を休んでいる!」
「建設はまだまだこれからだぞ!」
「うぅ~……」
たるとは恨めしそうに空を見上げる。
じりじりと照りつける日差しは、容赦なく大地を焼いていた。
本格的な夏が、ついに到来したのである。
たるとは勢いよく立ち上がった。
「決めました!」
「今日は建設作業、お休みです!」
集まっていたメンバーが一斉にたるとを見る。
「みんなで海に行きます!」
「おおー!」
住民たちから歓声が上がる。
バレットは小さく笑った。
「たまには息抜きもいいな」
ノエルも頷く。
「皆さんも働き詰めでしたからね」
セリアは目を輝かせる。
「楽しそ~♪」
ツキは飛び跳ねた。
「やったー!」
その様子を見た俺は、誰にも気付かれないよう、そろり……そろり……と後ろへ下がる。
「じゃあ私は警備でも――」
ガシッ。
肩を掴まれた。
恐る恐る振り返る。
そこには満面の笑みを浮かべたたるとが立っていた。
「どこにいくんですか?」
笑顔なのに妙な迫力がある。
「いや、その……街の警備とか」
「今日はお休みです」
即答だった。
「でも――」
「全員参加です♪」
逃げ道は完全に塞がれてしまった。
◇
集会所へ戻るとリンファが腕を組んで待っていた。
「ふふっ」
「そんなこともあろうかと」
そう言って取り出したのは大きな木箱だった。
蓋を開けた瞬間――。
「わぁ~!」
色とりどりの水着がずらりと並んでいる。
フリル付きのもの。
スポーティーなもの。
大人びたデザインのもの。
可愛らしい柄のものまで実に多種多様だ。
たるとは目を輝かせる。
「リンファさん、いつの間にこんなに!」
「暇を見つけて作っておいたの」
「せっかく海へ行くのだから皆で楽しめた方が良いでしょう?」
女性陣は一斉に水着を手に取り始めた。
「これ可愛い~」
「こちらも素敵ですね」
「迷ってしまいますね」
賑やかな声が部屋中に響く。
その光景を見た俺はそっと出口へ向かった。
「よし、私は外で待って――」
「ガウ」
またしても肩を掴まれた。
振り返るとたるとがにっこりと微笑んでいる。
嫌な予感しかしない。
「私、男!」
思わず叫ぶ。
だがたるとは満面の笑みのまま頷いた。
「知ってますよ?」
一本の水着を差し出す。
「はい!これ着てください!」
「聞いてた!?」
「もちろんです!」
「今ではすっかり乙女になっているくせに~」
「誰のせいだと思ってる!」
女性陣が一斉に笑い出す。
数分後――。
半ば強引に試着室へ押し込まれた俺は水着姿で引っ張り出されていた。
一瞬、部屋が静まり返る。
そして次の瞬間。
「「「「「「可愛い~!」」」」」」
たると。
リンファ。
シズク。
セリア。
ノエル。
ヨミ。
ツキ。
全員が目を輝かせている。
「もう好きにして……」
久しぶりに始まった俺の着せ替え大会。
どうしてこうなったのか。
……これのせいで、私は……いや、俺は……。
俺は女性陣のおもちゃになってしまうのだった。
今回は夏の始まりということで皆で海に行くことに。
そしてガウ着せ替え大会開催です(笑)
なぜガウが中身は男なのに乙女になっていったかが少しずつ分かると思います!
次回はいよいよ海へ!
夏ならではのイベントをお楽しみに!




