第22話 一ヶ月の積み重ね
朝の空気はまだ涼しい。
日によっては、わずかに肌寒さを感じることもある。
しかし。
昼を過ぎる頃には気温が上昇し、じんわりと汗ばむほどの陽気へと変わっていく。
季節は着実に夏へと向かっていた。
そんな中。
俺たちの集落では今日も朝早くから活気ある声が飛び交っている。
「そこ、もう少し右だ!」
「了解!」
「次の石材を運んでくれ!」
「木材はこちらへお願いします!」
「そっち通るぞー!」
外壁。
住居。
道路。
畑。
集落の至る場所で作業が進められている。
一ヶ月前。
アルカディアから帰還した俺たちは、ここで暮らす全員を集めて今後の方針を話し合った。
どんな街にしたいのか。
何が必要なのか。
何から作るべきなのか。
そして俺たちなりの答えを一つ出した。
――皆が安心して暮らせる街。
――外へ出掛けても、また帰ってきたいと思える街。
それから一ヶ月。
全員がそれぞれの役割を担いながら、少しずつ街づくりを進めてきた。
俺は集落の中を歩きながら周囲へ視線を巡らせる。
一ヶ月前とは明らかに景色が違う。
未完成だった外壁は左右へ大きく伸びている。
新しい住居も増えた。
土が剥き出しだった場所には道が作られ始め。
畑も以前よりかなり広くなっている。
「……順調だな」
思わず言葉が漏れた。
まだ完成には遠い。
それでも。
一ヶ月という時間は、確かにこの場所を変えていた。
◇
集会場の前を通りかかった時だった。
中から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「外壁は順調だな」
ゴウマだ。
少し覗く。
机の上いっぱいに地図と資料が広げられていた。
その向かいにはアイスが座っている。
「現在、およそ七割だ」
アイスが資料へ目を落とした。
「このまま大きな問題が起きなければ、夏を迎える頃には完成できる」
「七割か」
ゴウマが腕を組む。
「予定より少し早いな」
「ああ」
「人数が増えたことも大きい」
「元《深淵の剣》の連中もかなり手伝ってくれている」
ゴウマが小さく頷く。
「住居は?」
「三割ほどだ」
「まだ足りんな」
「今もテント生活の者は多い」
アイスが地図の一角を指す。
「今は外壁と並行して進めているが、外壁が完成すればそこへ割いていた人員を住居建設へ回せる」
「そうすれば一気に進むだろう」
「道路は?」
「一割程度」
「遅いな」
「優先度を落としていたからな」
アイスは苦笑する。
「外壁」
「住居」
「食料」
「まずは安全に生活するために必要なものを優先している」
「道路はその後でもいい」
「そうだな」
ゴウマが資料を閉じる。
「焦る必要はない」
「アルカディアも一年かけて今の形になった」
「俺たちも一つずつだ」
「ああ」
アイスも静かに頷いた。
俺は二人の会話を聞きながら、その場を離れた。
誰か一人がすべてを動かしているわけじゃない。
ゴウマやアイスが全体を調整し。
それぞれの持ち場では、それぞれが責任を持って動いている。
アルカディアで聞いた。
役割分担。
今では俺たちも自然とそれができるようになっていた。
◇
住居区画。
そこでは大工組の仲間たちが新しい家を建てていた。
槌を打つ音。
木材を削る音。
そこに混じって豪快な声が響く。
「そっち持ち上げろ!」
「せーの!」
「おおおおっ!」
ガンテツだ。
数人がかりで持ち上げる木材を一緒に支えている。
少し離れた場所ではバレットが板材を運んでいた。
「お」
ガンテツが俺に気付く。
「ガウじゃねぇか!」
「手伝いに来たのか?」
「うん」
建設途中の家を見上げる。
「何かある?」
「そりゃ助かる!」
ガンテツが笑う。
「そこの木材を運んでくれ!」
「分かった」
俺は近くに積まれた木材へ手を伸ばした。
持ち上げる。
「それ結構重いぞ?」
バレットが声を掛けてくる。
「問題ないよ」
「私でもこれくらいなら持てる」
「相変わらず見た目と力が合ってねぇな」
「余計なお世話」
「ははっ」
バレットが笑う。
二人で木材を運ぶ。
「そこだ!」
大工組の一人に言われた場所へ置く。
「助かった!」
「次は?」
「こっちの板材を!」
「了解」
再び資材へ向かう。
その途中。
俺は建設途中の家を見上げた。
まだ骨組み。
壁も半分しかない。
屋根もない。
今はただの建設途中の建物だ。
だけど。
完成すれば。
ここで誰かが朝を迎える。
食事をして。
仲間と話して。
疲れた身体を休める。
そして次の日。
またここから外へ出ていく。
「……」
家というのは。
ただ雨風を防ぐための箱ではないのかもしれない。
生活が始まる場所だ。
帰ってくる場所だ。
「ガウ?」
バレットがこちらを見る。
「どうした?」
「いや」
俺は板材を持ち上げた。
「ちゃんと作らないとなと思って」
「そりゃそうだ」
バレットは新しい家を見る。
「俺も昔は宿とか野営ばっかだったけどな」
少しだけ笑う。
「帰る場所があるってのは悪くねぇ」
「そうだね」
アルカディアでの会議後にバレットが話した言葉を思い出す。
――帰りたいって思える場所なら、俺はもう見つけてる。
そのバレットが今は自分の手でその場所を作っている。
「ほら!」
ガンテツの声。
「二人とも止まってねぇで次だ!」
「はいはい」
「分かってるよ」
俺たちは再び作業へ戻った。
◇
昼過ぎ。
住居建設を一旦終えた俺は、集落の中を歩いていた。
「ガウ!」
後ろから声。
振り返る。
たるとだった。
その隣にはノエルとヨミもいる。
三人とも手に資料を持っていた。
「何してるの?」
「住民の皆さんからご相談を受けていました!」
たるとが資料を見せる。
「生活用品が足りない場所や」
「完成した住居へ誰に入ってもらうかとか!」
「色々です!」
ノエルが補足する。
「現時点では住居の数が限られています」
「そのため、子供のいるNPCの家族やNPCの高齢者などを優先して割り振る案を検討しています」
「なるほど」
ヨミも静かに続ける。
「……それと」
「畑からも相談が来てる」
「畑?」
「うん」
「人口が増えたから」
少し考える。
「食べる量もかなり増えてるみたい」
「現在の畑だけでは」
ノエルが言う。
「いずれ供給が追いつかなくなる可能性があります」
「だから拡張ですね!」
たるとが拳を握る。
「アルカディアでも食料は大事だって言ってました!」
「そうだね」
「見に行ってみようか」
「はい!」
俺たちは四人で畑へ向かった。
◇
集落の外れ。
以前は小さかった畑が、今では何倍もの広さへ拡張されていた。
まだ整備途中の土地も多い。
それでも。
何本もの畝が並び。
若い芽が顔を出し。
NPCの住民やプレイヤーたちが一緒になって作業をしている。
そしてその中に小さな狐耳が見えた。
「よいしょ!」
ツキだ。
小さな身体で土を運んでいる。
「頑張ってるね」
声を掛ける。
「ガウお姉ちゃん!」
ツキが勢いよく振り返った。
狐耳が立つ。
「見て!」
俺の手を引く。
「これ!」
指差した先。
畝には小さな苗が綺麗に並んでいた。
「ツキが植えたの!」
「全部?」
「うん!」
「……本当に?」
「ちょっとだけ手伝ってもらった!」
「やっぱり」
「ちょっとだけだよ!」
必死に主張している。
「すごいね」
頭を撫でる。
「えへへ!」
ツキが嬉しそうに笑う。
「もっといっぱい作るの!」
「いっぱい?」
「うん!」
両手を広げる。
「そうしたら!」
「みんなでいっぱい食べられるから!」
「……」
たるとが隣で穏やかに笑った。
「ツキちゃんも立派な街づくりの一員ですね!」
「えへへ!」
胸を張る。
その後ろ。
ヨミが妹を見つめている。
表情はいつもと大きく変わらない。
ただ。
背後の尻尾だけがゆっくりと左右へ揺れていた。
俺はヨミの隣へ立つ。
「こっちに来て良かったね」
「……」
ヨミが少しだけ目を細める。
「うん」
小さく頷いた。
「本当に」
そして。
「感謝してます」
「私たちに?」
「全部に」
ツキを見る。
畑で働くNPCたち。
たると。
ノエル。
そして集落。
「ここに来られたこと全部」
「そっか」
それ以上は言わなかった。
言う必要もない気がした。
少し離れた場所では。
たるとが畑を管理している住民たちと話している。
「この辺りまで広げられそうですか?」
「問題ありません」
「ただ、水を運ぶ距離が長くなります」
「水路が必要になるかもしれませんね」
ノエルが地形を見る。
「それも検討した方が良さそうです」
また一つ。
必要なものが増えた。
街が大きくなれば。
住む人が増え。
食べる量も増える。
そして畑を広げれば、今度は水が必要になる。
一つ作ればまた次が必要になる。
アルカディアで聞いた話が今では自分たちの問題として分かる。
◇
畑を離れ。
今度は道路整備の現場へ向かう。
「おいッス~!」
サイオンが手を上げた。
額には薄く汗が浮かんでいる。
「お疲れ様」
「お疲れッス~」
手にしていた地図をぱたぱたと扇ぐ。
「道路はどう?」
「順調!」
胸を張る。
そして。
「……と言いたいところッスけどね~」
すぐに苦笑した。
「まだ全体の一割くらいッス」
「やっぱり時間かかる?」
「かかるッスね~」
サイオンが整備途中の道路を見る。
地面を平らにする。
幅を測る。
必要な場所へ石を敷く。
排水も考える。
建物を避け。
将来的な区画まで想定する。
単純に道を作るだけではない。
「でも」
道路整備組の一人が口を開く。
「この道が完成すればかなり変わりますよ」
指を差す。
「中央広場から住居区」
「住居区から鍛冶場」
「畑」
「研究施設」
「訓練場」
「それぞれを繋ぐ予定です」
サイオンが地図を広げた。
「基本は中央広場から放射状ッスね~」
「将来的には外壁の門から外にも道を伸ばす予定ッス」
「街道みたいに?」
「そうッス!」
「人が増えた時のことも考えないといけないッスからね~」
「なるほど」
地図にはいくつもの線。
今はまだただの線だ。
けれど完成すれば。
人が歩き。
荷物が運ばれ。
店が並び。
生活を繋ぐ道になる。
「何かあったら言ってね」
俺は地図を返す。
「手伝える時は来るから」
「助かるッス!」
サイオンが笑った。
「その時は石運びお願いするッスよ!」
◇
集落の中央へ戻る。
今度は外壁の方が少し騒がしかった。
「……?」
何かあったのか?
近づいていく。
そこにはシズク。
セリア。
モルフォ。
そして数名の作業員が集まっていた。
「シズク」
声を掛ける。
「何してるの?」
シズクが振り返った。
「ちょうど良いところに来ました」
「?」
「結界の試験を行います」
「おお」
俺も外壁を見る。
一部。
ほぼ完成している区画。
その内側には一定間隔で魔石が埋め込まれていた。
一ヶ月前。
シズクを中心に設置を始めた防御結界の核。
今ではかなりの数が外壁へ組み込まれている。
「これまで単体では問題なく稼働していました」
シズクが《白晶》を握る。
「今日は複数の核を接続し」
外壁を見る。
「実際に面として結界を展開します」
「成功すれば?」
「完成した区画から順次、防御結界を展開できるようになります」
「なるほど」
セリアが魔石の前にしゃがんでいる。
「魔力の調整も終わったよ~」
「今のところ流れは安定してる~」
モルフォも眼鏡を押し上げた。
「各核の同期率も許容範囲です」
「理論上は問題ありません」
「理論上?」
「実験は結果が出るまで分かりません」
怖いことを言う。
「爆発しない?」
「可能性は低いです」
「ゼロではないの?」
「研究に絶対はありません」
「少し離れてようかな」
「賢明です」
真顔で言われた。
俺は少し下がる。
シズクが外壁へ向き直った。
《白晶》を掲げる。
「始めます」
静かな声。
次の瞬間。
――フォン。
《白晶》が淡く輝いた。
それに呼応するように。
外壁へ埋め込まれた魔石が一つ。
光る。
二つ。
三つ。
四つ。
順番に淡い光が灯っていく。
「……」
光はやがて線となり。
魔石と魔石を繋いだ。
そして。
――ブゥン。
低い音。
次の瞬間。
外壁の外側を覆うように半透明の膜が展開された。
「おお……」
思わず声が漏れる。
淡い光の壁。
陽の光を受けて僅かに揺らめいている。
「成功です!」
シズクが小さく息を吐いた。
その表情には珍しく。
僅かな達成感が浮かんでいた。
「やったね~!」
セリアが嬉しそうに笑う。
「魔力も安定してるよ~」
モルフォも結界へ近づく。
「予想より損失率も低いですね」
「この状態なら全周展開も現実的です」
シズクは結界を見つめている。
「まだ一部分です」
「外壁全体へ展開した時に同じ状態を維持できるとは限りません」
相変わらず慎重だ。
「でも」
俺も結界を見る。
「一ヶ月前よりかなり進んだね」
「……はい」
シズクが小さく頷く。
「確実に」
その言葉が少し嬉しそうに聞こえた。
「完成したら凄そうだな」
「完成させます」
即答。
「そのためにやっていますから」
「頼もしいね」
「当然です」
やっぱりシズクらしい。
◇
外壁沿いを歩いていると前方から二人の男が歩いてきた。
アレン。
そしてダリオ。
二人とも元《深淵の剣》に所属していた。
二人は周囲を確認しながら歩いている。
「アレン」
声を掛ける。
「あ」
こちらに気付く。
「ガウさん」
「巡回?」
「はい」
アレンが頷く。
「外壁が伸びた分、確認する場所も増えましたから」
ダリオも苦笑する。
「最近は一周するだけで結構時間かかるんですよ」
「そんなに?」
「一ヶ月前とは全然違います」
確かに外壁の範囲が広がった。
つまり守るべき範囲も増えた。
「大変?」
俺が尋ねる。
アレンは少し考え。
「……でも」
周囲を見る。
作業する人たち。
走り回る子供たち。
畑。
建設途中の家。
「嫌じゃないです」
「むしろ」
少しだけ笑った。
「守る場所があるっていうのは悪くないですね」
「……」
一ヶ月前なら。
こんな顔でこの場所を歩くアレンを想像できただろうか。
元《深淵の剣》。
俺たちと敵対していた者。
罪悪感を抱え、自分たちがここにいていいのか迷っていた。
でも今は巡回をして。
住民に声を掛けられ。
「アレン!」
少し離れた場所からNPCの男が手を振った。
「後で荷物運ぶの手伝ってくれ!」
「分かりました!」
アレンが自然に返事をする。
「……」
もう元《深淵の剣》だからではない。
この街で暮らす住民だ。
「頑張ってるね」
俺が言う。
「……はい」
アレンが笑う。
「できることをやります」
「それでいいと思う」
「ありがとうございます」
二人は再び巡回へ戻っていった。
その背中を見送る。
一ヶ月。
外壁が伸びた。
家が増えた。
道路ができた。
畑も広がった。
でも。
変わったのはきっとそれだけじゃない。
◇
夕方。
西の空が赤く染まり始める。
日中の暑さも和らぎ、涼しい風が街の中を抜けていった。
「今日はここまでにするぞ!」
ゴウマの声が響く。
各所で作業をしていた仲間たちが次々と手を止める。
「お疲れー!」
「また明日!」
「明日はこっちの家を仕上げるぞ!」
「道路も頼むぞ!」
「分かってるッス~!」
あちこちから声。
俺も作業を終えた仲間たちと一緒に中央広場へ戻る。
たると。
ノエル。
ヨミ。
シズク。
セリア。
モルフォ。
バレット。
ガンテツ。
サイオン。
そして。
畑から戻ってきたツキ。
「皆さん!」
たるとが元気よく声を上げた。
「今日もお疲れ様でした!」
「お疲れ!」
「疲れたー!」
「腹減った!」
「ご飯にしましょう!」
その一言で歓声が上がる。
「飯だー!」
「やったー!」
「たると」
ゴウマが呆れたように言う。
「今日一番大きい歓声じゃないか?」
「食事は大事です!」
「お前も嬉しそうだな」
「もちろんです!」
笑いが広がる。
俺はその光景を見渡した。
一ヶ月前。
アルカディアから帰ってきた時。
まだ互いに遠慮していた者もいた。
《白銀戦線》。
元《深淵の剣》。
元奴隷だった人たち。
NPC。
それぞれがまだどこか別々の集団だった。
でも今は一緒に木材を運び。
一緒に土を掘り。
一緒に飯の話をしている。
「アレン!」
ガンテツが遠くから声を掛ける。
「明日、こっち手伝え!」
「巡回が終わってからなら!」
「おう!」
「ダリオさん!」
NPCの女性が手を振る。
「荷物ありがとうございました!」
「いえいえ!」
ツキは畑のNPCたちに囲まれ。
今日植えた苗の話を得意げにしている。
ヨミはその少し後ろで静かに笑っている。
バレットはカイルに何か弓の構えについて聞かれていた。
シズクとセリアは結界試験について話し、モルフォはその横で大量にメモを取っている。
サイオンは道路整備班と明日の工程を確認していた。
「……」
街が変わっただけじゃない。
人も変わった。
一ヶ月という時間の中で。
少しずつこの場所で一緒に暮らす人になっていった。
「ガウ?」
隣からたるとの声。
「どうしました?」
「いや」
俺は小さく笑った。
「一ヶ月で随分変わったなって」
「はい!」
たるとが嬉しそうに頷く。
「みんなで頑張りましたから!」
「そうだね」
ゴウマもこちらを見る。
「まだ完成には程遠い」
「外壁は七割」
「住居は三割」
「道路は一割」
「畑もまだ拡張が必要だ」
「こうして聞くと全然ですね!」
たるとが笑う。
「だが」
ゴウマも口元を緩める。
「一ヶ月前より確実に前へ進んでいる」
アイスも頷いた。
「街づくりは一日ではできない」
「焦る必要はない」
「できることから一つずつ」
「はい!」
たるとが大きく頷く。
一つずつ。
外壁。
家。
道。
畑。
結界。
そして。
人と人との繋がり。
それら全部が積み重なってこの場所を少しずつ変えている。
「明日も頑張りましょう!」
たるとが拳を上げる。
「おー!」
周囲から声が返る。
俺は空を見上げた。
赤く染まる夕暮れ。
頬を撫でる風には。
少しずつ夏の気配が混じり始めていた。
外壁は完成へ近づき。
住居は増え。
道路は伸び。
畑は広がっていく。
これからもこの場所は変わり続けるだろう。
「……楽しみだな」
小さく呟く。
まだ完成した街とは呼べない。
足りないものはいくらでもある。
それでもここで笑う人がいる。
働く人がいる。
明日のことを話す人がいる。
そしてここへ帰ってきたいと思う人がいる。
それなら。
もう十分。
ここは確かに。
俺たちの帰る場所になりつつあった。
第22話を読んでいただき、ありがとうございました!
アルカディアから帰還して一ヶ月。
外壁や住居だけではなく、そこに暮らす人たちの関係も少しずつ変わってきました。
まだまだ完成には遠いですが、一歩ずつ「帰る場所」が形になっています。
次回もお楽しみに!




