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第19話 アルカディアの国づくり

たるとが少しだけ身を乗り出した。


「アルカディアはどうやってこんなに大きな街になったんですか?」


「そこからですね」


ビルズは頷いた。


机の上に積まれた資料の中から一枚を取り出す。


「皆さんがどこまでご存じか分かりませんので、最初から説明しましょう」


「お願いします!」


たるとが元気よく返事をする。


「まず、第五階層は第一階層と同じく比較的安全な階層です」


ビルズは資料へ視線を落とした。


「もちろん魔物は出現しますが、他の階層と比較すればその数は少ない」


「その点では人が生活する場所として適していたと言えるでしょう」


「なるほど……」


たるとが真剣に頷く。


「そして何より重要なのが――」


ビルズが一度言葉を切った。


「《階層転移陣》のデメリットが、第五階層には存在しないことです」


「デメリット?」


ゴウマが尋ねる。


「はい」


ビルズは頷く。


「皆さんも昨日、第一階層から転移してきたのでご存じでしょう」


「通常、《階層転移陣》を使用すると転移先はランダムになります」


「ああ」


俺も頷く。


昨日、レオンから聞いた話だ。


指定できるのは階層まで。


その階層のどこへ転移するかまでは選べない。


「しかし」


ビルズが机の上に大きな地図を広げた。


「第五階層だけは違います」


指先が地図の南側へ向かう。


「転移先が固定されているんです」


「ここ」


指先が一点で止まる。


「第五階層南部にある祠」


「皆さんが昨日到着した場所ですね」


「あそこですか!」


たるとが地図を覗き込む。


「第五階層へ転移した場合、必ずあの祠に到着します」


「つまり」


シズクが静かに口を開いた。


「第五階層であれば確実に同じ場所へ人が集まるということですね」


「その通りです」


ビルズは頷く。


「人が集まる場所が決まっている」


「これは街を発展させるうえで非常に大きな利点になります」


人が集まる。


物が集まる。


情報が集まる。


昨日、レオンから聞いた話と同じだ。


実際にアルカディアを歩いた後では、その意味が以前よりも理解できる。


昨日見た大通り。


無数の店。


行き交う冒険者。


あれほど多くの人間が集まる理由の一つが、この転移陣なのだ。


「まあ」


それまで黙っていたガルドが口を挟んだ。


「《階層転移陣》を使わなくても移動はできるけどな」


「そうなのですか?」


たるとが首を傾げる。


「ああ」


ガルドは椅子に深く腰掛ける。


「ただ……」


少しだけ苦笑した。


「あまり現実的な話じゃねぇんだ」


「といいますと?」


「この世界は十の階層に分かれてる」


ガルドが指を十本広げる。


「だがな」


「実際には全部、地続きなんだ」


「地続き……?」


たるとの虎耳がぴくりと動く。


俺もガルドを見る。


「各階層にはいくつものエリアがある」


「草原だったり、森だったり、山だったりな」


「そういうエリアを進んでいけば、いずれ次の階層へ続く場所へ辿り着く」


「だったら」


ハヤテが首を傾げる。


「普通に歩いて次の階層へ行けるんじゃないのか?」


「そう簡単じゃねぇ」


ガルドが口角を上げた。


「階層と階層の境界には、とんでもなく強い魔物がいる」


「それが――」


一拍。


「《階層守護者》だ」


「……」


俺は以前聞いた話を思い出す。


階層攻略。


その最後に立ちはだかる存在。


通常の魔物とは比較にならない力を持つボス。


「いわゆるエリアボスってやつだな」


ガルドは楽しそうに笑う。


「そいつをぶっ飛ばせば、その階層は攻略完了!」


拳を握る。


「次の階層へ続く道が解放される」


さらに指を立てた。


「それと同時に新しい階層の《階層転移陣》も使えるようになるってわけだ」


「なるほど……」


たるとが頷く。


「では、攻略されていない階層には簡単には行けないんですね」


「そういうことだ!」


「まあ」


アイスが口を開く。


「《階層守護者》を倒して道が開いているなら徒歩で階層間を移動すること自体はできる」


「ただし相当な距離になるだろうね」


「ああ」


ガルドが頷く。


「だから普通は転移陣を使う」


「何日もかけて歩くより一瞬で飛んだ方が楽だからな!」


「確かに!」


たるとが大きく頷いた。


ビルズが話を引き継ぐ。


「我々も当初は第一階層に拠点を作ることを検討していました」


「第一階層に?」


「はい」


「比較的安全ですし、始まりの階層ですから」


ビルズは地図の上へ指を滑らせる。


「ですが、問題がありました」


「転移先がランダムでは人を集めることが難しい」


「物資の輸送にも時間がかかります」


「さらに、街の位置を知らない人間が簡単に辿り着けるとも限らない」


ゴウマが腕を組む。


「大規模な街を作るには不向きか」


「そのように判断しました」


ビルズが頷いた。


「そこで候補となったのが第五階層です」


「比較的安全」


「転移先が固定されている」


「既に攻略済みであり、他階層との往来も可能」


「人を集める条件が揃っていました」


「それで……」


たるとが地図を見つめる。


「ここに拠点を作ったんですね」


「はい」


ビルズが静かに笑う。


「それがアルカディアの始まりです」


「そうなんだよ!」


ガルドが楽しそうに声を上げた。


「最初は本当に小さな拠点だったんだ!」


両手で小さな幅を作る。


「今のアルカディアからじゃ想像もできねぇくらいにな!」


「でも第五階層は便利だろ?」


「転移陣から人が来る」


「比較的安全だから住みやすい」


「そうすると少しずつ人が増えていってな!」


ガルドは当時を思い出すように笑う。


「家を増やして!」


「店を作って!」


「道を広げて!」


「壁まで作って!」


どんどん声が大きくなる。


「気付いたら拠点が街になって!」


さらに両腕を広げる。


「街がもっとデカくなって!」


そして。


「いつの間にか俺が国王だなんて言われてんだよ!」


「……」


ガルドは腕を組んだ。


「これがよ!」


「全っ然、性に合わねぇんだ!」


「……」


ビルズの目が細くなった。


「ガルドさん」


「ん?」


「その話は以前にも聞きました」


「そうだったか?」


「はい」


即答だった。


「そもそも国王になったのは、皆さんで話し合って決めたことでしょう」


「あなた自身も了承しました」


「ですから、いい加減に認めてください」


「分かってるって!」


ガルドが豪快に笑う。


「そのうちちゃんとやるさ!」


「その『そのうち』がいつなのかを聞いているんです」


「細かいことは気にすんな!」


「細かくありません」


一切の間がなかった。


「……」


ガルドが黙る。


強い。


やはりビルズは強い。


戦闘力とはまったく別の意味で。


「……はぁ」


ビルズが天井を見上げた。


「あぁ、神よ……」


「いつになれば私は休めるのでしょうか……」


「おい!」


ガルドが慌てる。


「そこまで深刻じゃねぇだろ!」


「深刻です」


「即答!?」


レオンが隣で笑っている。


クロードも口元を緩めた。


「だから仕事をしろと言っただろ」


「クロードまで言うんじゃねぇ!」


どうやらこの二人の関係は思っていた以上に大変らしい。


主にビルズが。



「……失礼しました」


ビルズが眼鏡を押し上げる。


「お見苦しいところをお見せしました」


「い、いえ!」


たるとが慌てて首を振った。


「ははは……」


そしてガルドを見る。


「自由な国王で大変そうですね……」


「おい!」


ガルドが即座に反応する。


「聞こえてるぞ!」


「す、すみません!」


「謝らなくていいですよ」


「ビルズ!?」


容赦がない。


「まあいいじゃねぇか!」


ガルドは気を取り直すように笑った。


「俺たちだって最初から国になるなんて思ってなかったんだ」


そのまま窓の外を見る。


「それが今じゃ中央都市なんて呼ばれてる」


窓の向こう。


数え切れない建物が並んでいる。


その間を大勢の人々が行き交っていた。


「ですが」


ビルズが静かに続ける。


「人が増えればおのずと問題も増えていきました」


その声で空気が変わる。


再び。


アルカディアを支える副ギルドマスターの顔へ戻っていた。


「代表的なものが――」


一拍。


「土地と住居です」


「住居か」


ゴウマが反応した。


「はい」


「人が増えれば当然、住む場所が必要になります」


ゴウマは腕を組んだ。


「俺たちの集落も同じだ」


全員の視線が集まる。


「今では二百人を超える大所帯になっている」


「だが、住居がまったく足りていない」


現在も建設を続けている。


それでも人が増えた速度に追いついていない。


「アルカディアではどう解決した?」


ゴウマが尋ねる。


「簡単な話です」


ビルズは答えた。


「人を集めました」


「人?」


「はい」


「建築が得意なプレイヤーを片っ端から集めたんです」


指を一本立てる。


「大工」


もう一本。


「建築職」


さらに。


「素材加工を得意とする者」


「測量ができる者」


「運搬が得意な者」


「それぞれに役割を与え、住居の建設を進めました」


「なるほど」


ゴウマの目が鋭くなる。


完全に仕事の顔だ。


「ただ家を建てただけではありません」


ビルズは続ける。


「土地を整備する」


「街の区画を決める」


「道路を作る」


「住居区と商業区を分ける」


「必要な施設を配置する」


「人が増えれば、さらに外側へ街を拡張する」


「その繰り返しです」


シズクも興味深そうに聞いていた。


「城壁はどの段階で?」


「かなり早い段階ですね」


ビルズが答える。


「第五階層は比較的安全とはいえ、魔物が存在しないわけではありません」


「それに人が増えれば、魔物以外への備えも必要になります」


「やはり……」


シズクが小さく頷く。


「防衛設備は街の拡張と同時に考える必要があるのですね」


「その通りです」


シズクは何かを覚えておくように《白晶》へ視線を落とした。


帰ったらまた結界について考えるのだろう。


「今の規模になるまで」


たるとが尋ねる。


「どれくらいかかったんですか?」


「そうですね……」


ビルズが少し考える。


「現在の規模になるまでには、一年ほどかかりました」


「一年……」


たるとの目が丸くなる。


「そんなに……」


「むしろ早い方だと思います」


ビルズは答える。


「ゲームのシステムによる補助がありますから」


「現実で同規模の都市を一から作るのであれば、到底一年では済まないでしょう」


「まあ最初は大変だったぜ!」


ガルドが笑う。


「俺たちだって最初から今みたいな街を作れたわけじゃねぇ!」


「一軒作って」


「また一軒作って」


「人が増えたらまた作って!」


「そうやって少しずつ広げたんだ」


「少しずつ……」


たるとが小さく呟く。


そして笑った。


「私たちと同じですね」


「ん?」


ガルドがたるとを見る。


「私たちも今」


たるとは自分たちの集落を思い浮かべるように話し始めた。


「皆で外壁を作っています」


「住居も増やしています」


「道路も整備して」


「畑も広げて」


「研究所や訓練場も作る予定です」


指折り数えていく。


「まだ街とは呼べないかもしれませんけど……」


少しだけ照れくさそうに笑う。


「少しずつ形にはなり始めました」


「おお!」


ガルドの顔が一気に明るくなる。


「皆で協力して街を作ってんのか!」


「はい!」


「いいじゃねぇか!」


ガルドが豪快に笑った。


「いいギルドなんだな!」


「はい!」


たるとは胸を張る。


「みんな家族みたいなギルドです!」


「……」


ガルドが一瞬だけ目を丸くする。


そして。


「はっはっは!」


大きく笑った。


「そりゃいい!」


「そういう場所なら街を作るのも楽しいだろうな!」


「はい!」


たるとも嬉しそうに笑う。


俺はそんな二人を見ながら思う。


アルカディア。


そして俺たちの集落。


規模はまったく違う。


人数も違う。


歴史も違う。


それでも始まりは少し似ているのかもしれない。


誰かが安心して暮らせる場所を作る。


必要なものを一つずつ増やしていく。


そうして人が集まりいつしかただの拠点が帰る場所へと変わっていく。



「では」


アイスが手を挙げた。


「もう一つ質問してもいいか?」


「もちろんです」


ビルズが頷く。


「国の運営はどのようにしているんだ?」


「運営ですか」


「はい」


アイスはガルドを見る。


「これほど大きな街です」


「一人や二人で管理できる規模ではないはずだ」


「その通りです」


ビルズが即答した。


「重要なのは役割分担ですね」


「役割分担……」


「人には得意不得意があります」


ビルズは机の上で指を組む。


「戦闘が得意な者」


「建築が得意な者」


「商売が得意な者」


「人をまとめることが得意な者」


「計算や管理が得意な者」


「それぞれを見極め、適した役割へ配置しました」


「例えば私ですが――」


ビルズが自分を指差す。


「戦闘はそれほど得意ではありません」


「ですが」


眼鏡を押し上げる。


「頭は良い方だと思っています」


「自分で言うんですね」


たるとが思わず口にする。


「事実ですので」


強い。


「そのため私は国王の補佐として」


ビルズは続ける。


「街の予算管理」


「物資の流通」


「人員配置」


「施設の管理」


「各組織との調整」


「その他、様々な仕事を――」


一度止まった。


ガルドを見る。


「フォローという名の押し付けられた仕事をこなしています」


「おい!」


ガルドが声を上げる。


「言い方!」


「間違っていますか?」


「……」


「ガルドさん?」


「……悪かったって!」


負けた。


「話し合いが終わったら仕事するから!」


「ガルドさん」


ビルズが振り返る。


「その言葉を何度聞いたと思いますか?」


「……」


「昨日も聞きました」


「……」


「一昨日も聞きました」


「……」


「その前も」


「もういいだろ!」


ガルドが耐え切れずに叫ぶ。


「分かった!」


「やる!」


「今日は絶対やる!」


「言いましたね?」


「おう!」


「レオンさん」


「ん?」


突然振られたレオンが顔を上げる。


「証人をお願いします」


「任せろ」


「レオン!?」


クロードが肩を震わせている。


「逃げられないな」


「お前まで!」


ハヤテが俺へ顔を寄せた。


「ビルズさん強いな……」


「うん」


俺も小さく頷く。


戦闘ではなく。


別の意味で。


たるとが勢いよく手を挙げた。


「食料についても聞きたいです!」


「食料ですか」


ビルズは何事もなかったように表情を戻した。


切り替えが早い。


「はい!」


「これだけの人数が暮らしているなら」


「毎日ものすごい量の食べ物が必要ですよね?」


さすがたると。


食料になると目が真剣だ。


「その通りです」


ビルズが頷く。


「食料の確保は街を維持するうえで最重要事項の一つです」


「その一部を担っているのが冒険者ギルドです」


「冒険者ギルド?」


「はい」


ビルズが説明を続ける。


「魔物の肉を集める依頼」


「薬草や食用植物の採取」


「木の実」


「魚」


「その他、食料として利用できる素材の納品依頼」


「そういった依頼を冒険者へ出しています」


「なるほど……」


たるとが何度も頷く。


「冒険者が食料を集めるんですね!」


「ですが」


ビルズは続ける。


「当然、それだけでは安定しません」


「魔物の出現状況や採取量に依存していては、人口の多い都市を維持できませんから」


「では?」


「農業です」


「畑!」


たるとの耳が立った。


「アルカディアから少し離れた場所に大規模な農地を整備しています」


「そこで小麦や野菜などを生産しています」


「街で一日にどれだけ消費されるのか」


「備蓄をどの程度確保するのか」


「収穫量が減った場合どう補うのか」


「それらを計算しながら生産量を調整しています」


「……そこまで」


たるとの表情が少し引き締まる。


俺たちの集落にも畑はある。


だが今までそこまで細かく考えたことはなかった。


人が増えれば。


当然、必要な食料も増える。


「さらに」


ビルズが続ける。


「街の飲食店や商人も独自に冒険者へ依頼を出せるようにしました」


「この食材が欲しい」


「この素材を集めてほしい」


「特定の魔物の肉が必要」


「そういった依頼ですね」


「そうそう!」


ガルドが口を挟む。


「俺もたまに肉集めの依頼受けるぞ!」


ビルズがガルドを見る。


「国王の仕事から逃げるために?」


「違ぇよ!」


「本当に?」


「本当だ!」


「……」


「なんだその目は!」


たるとが小さく笑う。


ビルズもわずかに口元を緩めた。


再び俺たちを見る。


「冒険者が素材を集める」


「商人が買い取る」


「料理人が加工する」


「客が購入する」


「そこで得た利益がまた別の場所へ流れる」


「そうした循環によって街全体が動いています」


「循環……」


モルフォが反応した。


「興味深いですね」


眼鏡を押し上げる。


「つまり街そのものを一つの巨大な生態系として考えることも――」


「モルフォ」


「はい?」


「今は街の話だよ」


「私も街の話をしています」


「生態系って言ったよね?」


「構造としては似ています」


「そうなの?」


「はい」


真顔だ。


「人、物資、資金、情報」


モルフォは指を立てる。


「それぞれが循環し、どこか一つが滞れば全体へ影響を与える」


「なるほど」


シズクが頷いた。


「確かに似ていますね」


「シズクまで?」


「理屈は通っています」


モルフォが少しだけ得意そうな顔をした。


なんだか悔しい。


「とにかく!」


たるとが話を戻す。


「すごく参考になります!」


勢いよく頷く。


「私たちの街でも使えそうな仕組みがたくさんありますね!」


「そうですね」


ビルズは静かに微笑んだ。


「ですが」


その一言で。


再び空気が引き締まる。


「忘れてはいけません」


「街を作るというのは」


ゆっくりと俺たち一人ひとりを見る。


「建物を建てることだけではありません」


「……」


「人が暮らす」


「働く」


「食べる」


「物を作る」


「必要な場所へ運ぶ」


「傷つけば治療する」


「問題が起きれば解決する」


「敵が来れば守る」


一つずつ言葉が積み重なっていく。


「それらすべてを維持する仕組みが必要になります」


誰も口を挟まなかった。


「立派な城壁があるだけでは街とは呼べません」


「巨大な建物が並んでいるだけでも同じです」


ビルズは静かに続ける。


「そこに人がいて」


「その人たちが生活できて」


「明日もここで暮らしたいと思える」


「それを支え続けることができて」


「初めて街は街として機能します」


「……」


俺は静かに考えていた。


城壁。


住居。


道路。


研究所。


訓練場。


宿。


俺たちは今、それらを作ろうとしている。


だがそれだけでは足りない。


食料。


仕事。


物資。


警備。


治療。


人の流れ。


役割。


そしてそれらを維持し続ける仕組み。


作って終わりではない。


そこで暮らし続けられなければ意味がない。


「……」


たるとも黙っていた。


膝の上で小さく手を握っている。


そして。


「……私たちにも」


小さな声。


「できるでしょうか?」


その言葉にはいつもの元気さはなかった。


二百人を超えるプレイヤー。


NPC。


それだけの生活を支えるということ。


ようやくその重さが見えてきたのかもしれない。


ビルズはすぐには答えなかった。


たるとを真っ直ぐ見つめる。


そして。


「それを決めるために――」


静かに言った。


「皆さんは今日ここへ来たのでしょう?」


「……」


たるとが少しだけ目を見開く。


やがて。


「……はい」


小さく。


それでも確かに頷いた。


俺たちは顔を見合わせる。


国を作る。


昨日までその言葉はあまりにも大きすぎてどこか現実味がなかった。


だが今は違う。


住む場所。


食べるもの。


働く場所。


人を守る仕組み。


街を動かす役割。


一つずつ俺たちが今作っているものと繋がり始めている。


国を作るということ。


その意味が少しずつ現実のものとして見え始めていた。

第19話を読んでいただき、ありがとうございます!


今回はアルカディアがどのように発展してきたのか、そして街を維持するために必要な仕組みについてのお話でした。


少しずつ現実味を帯びてきた《王虎の牙》の国づくり。


果たして、たるとたちはどんな答えを出すのか。


次回もお楽しみに!

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