第8話 手合わせ
結構激しい戦いになりました!
「俺と手合わせしねぇか?」
敵意じゃない。
挑発でもない。
純粋な興味。
強い相手を前にした戦士の顔。
「この集落。」
ガンテツが笑う。
「思った以上に面白そうだ。」
そして――
「いいぜ。」
真っ先に返事をしたのはハヤテだった。
「ハヤテ?」
俺は思わずそっちを見る。
ハヤテはニヤリと笑った。
「強い奴と戦える機会なんてそうないしな。」
「それに――」
ハヤテは肩を回す。
「俺もあんたみたいなデカい相手とやるのは嫌いじゃない。」
「はっはっはっ!!」
ガンテツが豪快に笑う。
「気に入った!!」
「話が早ぇ兄ちゃんだ!!」
「裏に空き地があるんだ。」
ハヤテが親指で集落の裏を指す。
「そこでやろうぜ。」
「おう!」
即答だった。
完全にやる気満々である。
俺は小さくため息を吐く。
まぁ。
こうなる気はしてた。
◇
集落の裏手。
開拓予定地として空けてある広場。
木々に囲まれているが、それなりに広い。
手合わせをするには十分だった。
「おー、いい場所じゃねぇか。」
ガンテツが周囲を見回す。
「だろ?」
ハヤテが笑う。
「面白そうじゃねぇか。」
後ろから声が聞こえた。
振り返るとバレットが腕を組んで立っていた。
「せっかくだし見物させてもらうぜ。」
「お前も来たのか。」
ガンテツの仲間達も少し離れた場所で見守っている。
たると達も集まっていた。
「頑張ってくださいー!」
たるとが両手を振る。
次の瞬間だった。
淡い光が空中に現れる。
赤い魔法石。
青い魔法石。
決闘用魔法石。
正式名称は忘れた。
たぶんやたら長かった気がする。
プレイヤー同士が決闘申請を行った時だけ出現する特殊なシステムだ。
デスゲームになった今でも、この機能だけは残っている。
決闘中に受けたダメージは全て魔法石が肩代わりする。
ダメージを受ければ石に亀裂が入り。
限界を迎えれば砕ける。
そして。
先に魔法石を壊された方が負け。
プレイヤー本人が死ぬことはない。
攻略組の訓練。
模擬戦。
技術交流。
この世界で数少ない、安全に全力を出せるシステムだ。
「準備はいいな?」
ゴウマが二人を見る。
「おう。」
「いつでも。」
ハヤテが腰の刀へ手を添える。
ガンテツは巨大なモーニングスターを肩へ担ぐ。
ゴウマが手を上げた。
「――始め!!」
次の瞬間。
ハヤテが消えた。
「なっ――!?」
ガンテツの仲間達が目を見開く。
速い。
抜刀。
《白夜》
ハヤテの愛刀。
普段の戦いで使う相棒。
ガキィィィン!!
火花が散った。
ガンテツは《震天》を横に構える。
白夜の斬撃を真正面から受け止めていた。
「おぉっ!!」
そのまま。
振り抜く。
巨大な鉄球が唸りを上げる。
「っと!」
ハヤテが跳ぶ。
轟音。
震天が地面へ叩き込まれる。
土が舞い上がる。
地面が砕ける。
「うわっ……!」
たるとが思わず声を上げた。
「すごい威力……。」
シズクも目を見開く。
「あれはまともに受けたくありませんね。」
「受けたらぺちゃんこだねぇ。」
セリアが眠そうに言った。
「違いない。」
バレットも苦笑する。
土煙の向こう。
ハヤテが距離を取る。
「いやいや。」
笑う。
「すげぇな、おっちゃん。」
「はっはっはっ!!」
ガンテツも笑う。
「兄ちゃんこそ強えじゃねぇか!!」
ガンテツの後ろ。
仲間達が声を上げる。
「リーダー!!」
「負けるなー!!」
「ぶっ飛ばしてください!!」
ガンテツが豪快に笑う。
そして。
その目が変わる。
戦士の目。
強敵を前にした目だった。
震天を肩へ担ぐ。
「なら――」
ニヤリと笑う。
「俺も少し本気を出すとするか。」
ガチャリ。
金属音。
震天の持ち手が開く。
次の瞬間。
ジャラララララッ!!
持ち手の中から鋼の鎖が飛び出した。
「……チェーン?」
ハヤテが目を細める。
「驚くのはまだ早ぇぞ?」
巨大な鉄球が唸る。
鋼の鎖が地面を這う。
ガンテツはニヤリと笑った。
次の瞬間。
震天が唸った。
ジャララララッ!!
鉄球が大きく円を描く。
「っ!」
ハヤテが飛び退く。
巨大な鉄球が鼻先を通り過ぎた。
風圧だけで前髪が揺れる。
だが終わらない。
ガンテツは鎖を引く。
戻ってきた鉄球が、今度は逆方向から襲い掛かった。
「おらぁ!!」
横薙ぎ。
振り上げ。
叩きつけ。
鎖によって自由を得た鉄球が、縦横無尽に暴れ回る。
「近付けねぇ……。」
「いや、近付かせないのか。」
あれは武器じゃない。
戦場そのものだ。
間合いに入ろうとした瞬間に叩き潰される。
「はっはっはっ!!」
ガンテツが笑う。
「どうした兄ちゃん!!」
「さっきの勢いはどうしたぁ!!」
「言ってくれるな!」
ハヤテも笑う。
次の瞬間。
踏み込む。
白夜が閃く。
ガキィィィン!!
火花が散る。
だが。
受け止めたのは鉄球じゃない。
鎖だった。
「なっ!?」
白夜へ鎖が巻き付く。
「武器ってのは振り回すだけじゃねぇ。」
ガンテツが笑う。
「こう使うんだよ!!」
そのまま震天が振り下ろされる。
「っと!」
ハヤテが無理やり白夜を引き抜く。
轟音。
地面が弾け飛ぶ。
「うわぁ……。」
たるとが目を丸くする。
「あれ反則じゃないですか?」
「反則ではない。」
ゴウマが苦笑した。
「むしろ上手い使い方だ。」
「すごいですね。」
シズクも真剣な顔になる。
「鎖で攻撃、拘束、防御を同時に行っています。」
「めんどくさい相手だねぇ。」
セリアが眠そうに頷いた。
俺も同意だった。
正直、面倒臭い。
敵に回したくない。
そう思わせる戦い方だった。
「だが。」
リンファが小さく笑う。
「ハヤテも慣れてきてるわ。」
その言葉通りだった。
最初は押されていた。
だが今は違う。
鉄球の軌道。
鎖の長さ。
戻ってくる速度。
ガンテツの癖。
ハヤテは全部観察している。
たぶんあいつは数えている。
攻撃の間隔。
呼吸。
踏み込み。
そういう奴だ。
「はっ!」
白夜が閃く。
ガキン!!
肩。
「ぐっ!」
脚。
「おっ!」
腕。
小さな傷。
だが確実な一撃。
その度にガンテツの魔法石へ亀裂が増えていく。
「リーダー!」
仲間達が声を上げる。
「押されてます!」
「分かっとるわ!」
ガンテツは笑う。
むしろ楽しそうだった。
ハヤテも笑う。
そして。
ガンテツが震天を肩へ担いだ。
魔力が集まる。
空気が震える。
「おいおい……。」
バレットが目を細める。
「まだ何かあるのかよ。」
ジャラララララッ!!
鎖が唸る。
震天へ魔力が流れ込む。
そして。
鉄球が膨れ上がった。
人の頭ほどだった鉄球が。
樽ほどに。
馬車ほどに。
そして――
大岩のような大きさへ変わる。
「でっっっか!?」
たるとが叫ぶ。
「大きすぎませんか!?」
「はっはっはっ!!」
ガンテツが笑う。
「これが俺の全力だ!!」
巨大な鉄球を空へ放つ。
空高く。
高く。
高く。
そして。
ガンテツが叫んだ。
「奥義――!!」
空を覆う影。
まるで隕石だった。
「《落天撃》!!」
巨大鉄球が落ちる。
逃げ場がない。
そう見えた。
「ハヤテ!!」
たるとが叫ぶ。
だが。
ハヤテは動かない。
いや。
違う。
見ている。
落下地点。
鎖の角度。
鉄球の軌道。
全部。
そして。
「――そこか。」
地面を蹴る。
次の瞬間。
ドゴォォォォォォン!!
大地が揺れる。
轟音。
土煙が空へ舞い上がる。
衝撃波が木々を揺らす。
俺達ですら思わず腕で顔を庇った。
「やったか!?」
ガンテツの仲間が叫ぶ。
その時だった。
「しまっ――!!」
ガンテツの目が見開く。
巨大化した鉄球は地面へめり込んでいる。
鎖は伸び切っている。
そして。
大技の直後。
震天は重い。
隙が生まれる。
土煙の中から影が飛び出した。
ハヤテだった。
無傷。
ギリギリ。
本当に紙一重で避けていた。
「悪いな。」
白夜が閃く。
「大技の後は隙だらけだ。」
刃が首を通過。
同時に。
パリン――
赤い魔法石が砕け散った。
静寂。
誰も喋らない。
そして。
次の瞬間。
「はっはっはっはっはっ!!」
ガンテツが豪快に笑った。
「参った!!」
震天を肩へ担ぐ。
「俺の負けだ兄ちゃん!!」
ハヤテが白夜を鞘へ戻す。
「危なかったけどな。」
「違ぇねぇ!!」
ガンテツが笑う。
「あと少し遅れてりゃ、今頃兄ちゃんの魔法石が砕けてた!」
「ふっ。」
ハヤテも笑う。
ガンテツが右手を差し出した。
「楽しかったぜ!!」
「ああ。」
ハヤテもその手を握る。
「俺もだ。」
その光景を見て、俺は少しだけ笑った。
勝っても笑う。
負けても笑う。
こういう戦いは嫌いじゃない。
「すごかったです!!」
たるとが駆け寄る。
「お二人ともすごかったです!!」
「はっはっはっ!!」
ガンテツが笑う。
「嬢ちゃんの仲間は化け物揃いだな!!」
「そうですか?」
「そうだとも!!」
ガンテツの視線が俺達を順番に見ていく。
俺。
ゴウマ。
リンファ。
シズク。
セリア。
そして最後にバレット。
「お前さん達。」
ニヤリと笑う。
「思ってた以上に面白ぇ連中だ。」
そして。
豪快に笑った。
「近所付き合い、これからよろしく頼むぜ!!」
たるとが満面の笑みを浮かべる。
「はい!!」
「こちらこそよろしくお願いします!!」
その日。
王虎の牙はまた一つ。
大切な縁を手に入れたのだった。
ちなみにハヤテは2刀流なんですよね~。
まだまだ隠された能力なんかも!?
そのうちキャラの細かい設定などを公開したいですー!




