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第7話 豪快な熊獣人

先頭には大柄な熊獣人の男が立っている。


身長は二メートル近くに達する巨体。


背中には巨大なモーニングスターを背負っている。


見た目以上の威圧感を放つ武器だった。


その後ろにも四人。


全員が武装している。


ガンテツが後ろを振り返る。


「こっちは俺の仲間だ!」


敵意は感じない。


少なくとも、現時点では。


「《王虎の牙》のガウ」


「ハヤテだ」


ハヤテが軽く手を挙げる。


「何しに来たの?」


俺が尋ねるとガンテツは腕を組んだ。


「実はな」


「この辺りの森に拠点を構えようと思ってる」


「拠点?」


「ああ」


ガンテツは大きく頷く。


「俺たちも攻略組としてずっと最前線で戦ってきた」


「そろそろ腰を落ち着けられる場所が欲しくてな」


攻略組――


ゲームクリアを目指し、最前線で戦い続けるプレイヤーたちのことだ。


「それで場所を探していたらこの辺りが気に入った」


なるほど。


それなら話は分かる。


「だが、近くに他のプレイヤーがいるなら話は別だ」


ガンテツは豪快に笑う。


「近所付き合いは大事だからな!」


「だから挨拶に来た!」


「引っ越しの挨拶かよ」


ハヤテが呆れたように笑う。


「大事だろうが!」


「隣人と揉めると面倒なんだぞ!」


妙に現実味のある理由だった。


俺は思わず笑う。


「確かに」


「だろ?」


ガンテツは満足そうに頷いた。


「集落を案内するけど暴れないでね」


「おう! 暴れないぞ!」


こうして俺たちはガンテツたちを集落に案内した。



集落へ足を踏み入れた瞬間、ガンテツたちは足を止めた。


ガンテツが静かに呟く。


「村を作ったのか?」


「まだまだ小さいけどね」


俺は笑う。


「これから少しずつ大きくしていく予定なんだ」


「へぇ……」


ガンテツはゆっくりと集落を見渡す。


子供たちの笑い声。


畑で働くNPC。


談笑するNPCたち。


その様子を見て小さく笑った。


「気に入った?」


俺が尋ねる。


「ああ」


ガンテツは頷く。


「こういう場所は嫌いじゃないからな!」


そう言って穏やかに笑うと再び俺たちの後を歩き始めた。



「ただいま」


「おかえりなさい!」


集会所へ入ると、たるとが笑顔で迎えてくれた。


その右にはシズク。


左にはセリア。


シズクはたるとの隣に立ち、セリアは椅子に座ったまま眠そうに目をこすっている。


俺は全体が見渡せるように集会場の入口の横に立つ。


「んー……お客さん?」


「セリア」


「起きてるよ~」


「起きてる顔じゃありません」


「ひどい~」


シズクが小さくため息をつく。


その後ろにはゴウマとリンファもいた。


「初めまして」


ゴウマが一歩前へ出る。


「《王虎の牙》のゴウマだ」


「リンファよ。よろしくね」


リンファも穏やかに微笑んだ。


「初めまして!」


たるとも元気よく頭を下げる。


「《王虎の牙》ギルドマスターのたるとです!」


ガンテツは目を丸くした。


「お前さんがギルドマスターか?」


「はい!」


「小せぇな!」


「よく言われます!」


たるとは胸を張る。


威張ることではない。


ハヤテが吹き出す。


ガンテツも豪快に笑う。


「はっはっはっ!」


「面白ぇ嬢ちゃんだ!」


「ガンテツさんたちはどうしてここへ?」


たるとが首を傾げる。


「これから近くに住むかもしれねぇからな」


「近所への挨拶だ」


「よろしく頼む!」


「はい!」


「こちらこそよろしくお願いします!」


たるとは嬉しそうに笑った。


その笑顔を見てガンテツは少しだけ目を細める。


「……警戒しないのか?」


「悪い人たちじゃなさそうなので!」


また胸を張る。


だから威張ることじゃない。


「はっはっはっ!」


ガンテツは腹を抱えて笑った。


「面白いな、嬢ちゃん!」


「それに――」


笑いを収めると部屋の中をゆっくり見渡す。


俺。


ハヤテ。


ゴウマ。


リンファ。


シズク。


セリア。


そして、たると。


一人ひとりへ視線を向ける。


「……なるほどな」


小さく呟く。


「どうかしましたか?」


たるとが不思議そうに尋ねる。


「いや」


ガンテツは笑った。


「いいギルドだと思ってな」


その言葉にたるとは嬉しそうにはにかんだ。


「ありがとうございます!」


「まだ来たばかりだってのにそんなことまで分かるのか?」


ハヤテが尋ねる。


「全部分かる訳ではない」


ガンテツは肩をすくめる。


「だがな、ギルドの雰囲気ってのは入った瞬間に何となく分かるもんだ」


そう言って豪快に笑った。


その言葉を聞いて俺も少しだけ嬉しくなった。


この集落はみんなで作ってきた場所だから。


部屋に穏やかな空気が流れる。


そんな中、ガンテツがふっと笑った。


「決めた」


そう言うと、背中に背負っていた巨大なモーニングスターを肩へ担ぐ。


俺はそっと鞘に手を伸ばす。


その瞬間、部屋の空気が変わった。


さっきまでの豪快な笑顔ではない。


歴戦の戦士の顔だった。


「なあ」


ガンテツがハヤテを見る。


「俺と手合わせしねぇか?」


突然の申し出だった。


敵意はない。


挑発でもない。


純粋に強そうな相手と戦ってみたい。


そんな戦士らしい好奇心だった。


ガンテツは笑う。


「さっきから見てたが何となく分かる」


「お前ら……ただ者じゃねぇだろ?」


ハヤテも笑みを浮かべた。


「いいね! 受けて立つ!」


「おっ!」


ガンテツが嬉しそうに笑う。


「話が早ぇな!」


「強い奴と戦える機会なんてそうそうないからな」


ハヤテは肩を回しながら笑う。


「それに」


「俺もあんたみたいなデカい相手は嫌いじゃない」


「はっはっはっ!」


ガンテツは腹を抱えて笑う。


「ますます気に入った!」


その様子を見ていたガンテツが連れてきた四人が苦笑した。


「始まった……」


四人のうちの一人が呆れたように呟いた。


シズクが小さく呟く。


「ガンテツさん戦うの好きなんですね」


「見るからに戦闘狂だもんね~」


セリアが眠そうに笑う。


「戦闘狂って言うな!」


ガンテツは豪快に笑った。


「俺は戦うのが好きなだけだ!」


「同じようなもんじゃない?」


俺が苦笑すると部屋に笑い声が広がる。


「じゃあ決まりだな!」


ガンテツは拳を握る。


「場所はどうする?」


「集落の裏に広場がある」


ハヤテが答える。


「訓練にも使ってる場所だから手合わせにはちょうどいい」


「よし!」


ガンテツは力強く頷いた。


「楽しみになってきた!」


こうしてガンテツとハヤテの手合わせが決まったのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございました!


次回はガンテツとハヤテの手合わせ回です!


楽しんでいただけたら嬉しいです。


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