第7話 豪快な熊獣人
森の出口から現れた五人のプレイヤー。
先頭を歩くのは、大柄な熊獣人の男だった。
二メートル近い巨体。
背中には巨大なモーニングスター。
持ち手にチェーンを収納した特殊な武器らしく、見た目以上に厄介そうな雰囲気を纏っている。
その後ろには槍使い。
斧使い。
杖を持った魔法職。
そして弓使い。
全員が武装していた。
「初めましてだな!」
熊獣人の男が豪快に笑う。
「俺はガンテツ!」
「こっちは俺の仲間だ!」
敵意は感じない。
少なくとも俺にはそう見えた。
「王虎の牙のガウ。」
「ハヤテだ。」
ハヤテが軽く手を挙げる。
「今日は何しに来たんだ?」
俺が聞くと、ガンテツは腕を組んだ。
「実はな。」
「この辺の森に拠点を作ろうと思ってる。」
「拠点?」
「ああ。」
ガンテツは頷く。
「俺達もずっと攻略組として最前線にいたんだ。そろそろ腰を落ち着ける場所が欲しくてな。」
攻略組。
ゲームクリアする為、ストーリーを追って攻略しているメンバーの事だ。
「それで場所を探してたら、この辺りが気に入った。」
なるほど。
それなら話は分かる。
「でも近くに他のプレイヤーがいるなら話は別だ。」
ガンテツが笑う。
「近所付き合いは大事だからな!」
「だから挨拶に来た!」
「引っ越しの挨拶かよ。」
ハヤテが呆れたように言う。
「大事だろうが!」
「隣人と揉めると面倒なんだぞ!」
妙に現実感のある理由だった。
俺はハヤテを見る。
ハヤテも肩をすくめる。
どうやら同じことを思ったらしい。
「なら案内するよ。」
◇
集落へ入った瞬間。
ガンテツ達は足を止めた。
畑。
水路。
木造の家々。
走り回る子供達。
洗濯物を干しているNPCのおばあさん。
畑仕事をしている農家のNPC。
プレイヤーとNPCが一緒に笑いながら暮らしている。
デスゲームになった世界とは思えない光景だった。
「……すげぇな。」
ガンテツが呟く。
「本当に作ったのか。」
「まだまだ小さいけどね。」
俺は答える。
「でも少しずつ大きくしていく予定。」
「へぇ。」
ガンテツは周囲を見回す。
その視線が、一瞬だけ鋭くなった。
まず俺を見る。
次にハヤテ。
「ほぉ。」
小さく漏らす。
それ以上は何も言わない。
でも、その目は戦士の目だった。
人を見る目。
強さを測る目。
◇
「ただいま。」
「おかえりなさい!」
集会所へ入ると、たるとが笑顔で迎えてくれた。
その右側にはシズク。
左側にはセリア。
シズクはたるとの隣に立っていた。
対してセリアは椅子に座ったまま眠そうに目を擦っている。
「んー……お客さん?」
「セリア。」
「起きてるよー。」
「起きてる顔じゃありません。」
「ひどいなぁ。」
シズクがため息を吐く。
その少し後ろにはゴウマとリンファもいた。
「初めまして。」
「王虎の牙のゴウマだ。」
「リンファよ。よろしくね。」
ゴウマが軽く頭を下げる。
リンファは穏やかに微笑んだ。
「初めまして!」
たるとも頭を下げる。
「王虎の牙ギルドマスターのたるとです!」
ガンテツは目を丸くした。
「お前さんがギルドマスターか?」
「はい!」
「小せぇな!」
「よく言われます!」
たるとは胸を張る。
威張ることじゃない。
ハヤテが吹き出した。
ガンテツも大笑いする。
「はっはっはっ!!」
「面白ぇ嬢ちゃんだ!」
「ガンテツさん達はどうしてここへ?」
たるとが首を傾げる。
「これから近くに住むかもしれねぇからな。」
「近所への挨拶だ。」
「よろしく頼む!」
「はい!」
「こちらこそよろしくお願いします!」
たるとは嬉しそうに笑った。
その笑顔を見て。
ガンテツは少しだけ目を細める。
「……警戒しないのか?」
「悪い人達ではなさそうなので!」
また胸を張る。
だから威張ることじゃない。
「はっはっはっ!」
ガンテツが笑う。
「面白いな嬢ちゃん!」
その時だった。
ガンテツの視線が部屋をゆっくり見回す。
たると。
俺。
ハヤテ。
ゴウマ。
リンファ。
シズク。
セリア。
一人一人を見る。
観察するように。
確かめるように。
「……なるほどな。」
ガンテツが笑う。
「どうかしましたか?」
たるとが聞く。
「いや。」
ガンテツは腕を組む。
「お前さん達、強ぇな。」
部屋が静かになる。
「俺も攻略組として最前線にいた。」
「それなりに強いから分かる。」
「普通は俺みたいなのが来るともっと警戒するしもっと殺気立ってる。」
「だがお前さん達は違う。」
ガンテツの視線が俺へ向く。
「ガウ。」
「お前は狩る側の目をしてる。」
次にハヤテを見る。
「自分の腕に自信があるな。」
次にゴウマ。
「兄ちゃんも相当な修羅場を潜ってるな。」
「……よく分かるな。」
「目でわかる。」
そしてリンファを見る。
「お姉さんは後ろから全部見てるタイプだな。」
リンファが小さく笑う。
「観察は得意なの。」
最後にシズクとセリアを見る。
「そっちの二人は護衛役か。」
シズクが少しだけ目を見開く。
「……どうしてそれを?」
「立ち位置。」
ガンテツが答える。
「嬢ちゃんを守れる場所にずっといる。」
シズクは黙る。
セリアは眠そうに笑った。
「すごーい。」
ガンテツは笑う。
「伊達に最前線で生き残ってねぇんだ。」
そして。
立ち上がった。
「決めた。」
巨大なモーニングスターを肩に担ぐ。
「なぁ。」
その顔は戦士の顔だった。
「俺と手合わせしねぇか?」
敵意じゃない。
挑発でもない。
純粋な興味。
強い相手を前にした戦士の顔。
「この集落。」
ガンテツが笑う。
「思った以上に面白そうだ。」
次回!初の戦闘描写になります!
お楽しみに!




