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第7話 守るための準備

王虎の牙の集落。


今日も街づくりは続いていた。


「そこもう少し右へ寄せてください!」


「了解!」


仲間たちの声が響く。


かつてこの地に広がっていたのはただの森と小さな集落だけだった。


しかし今は違う。


少しずつ、着実にこの場所は街へと姿を変え始めていた。



「城壁もあと少しですね」


たるとが完成間近の壁を見上げる。


巨大な石造りの壁。


集落を囲むように築かれた防壁だ。


最初に着手した、大規模な建設事業だった。


外からの脅威から仲間を守るため。


安心して暮らせる場所をつくるため。


多くの仲間たちが力を合わせ、ここまで築き上げてきた。


「ここまで来るとはな」


ガンテツが腕を組む。


「最初は本当に小さな場所だったのに今じゃ、立派に壁までできてやがる」


隣にいたゴウマが頷く。


「まだ完成ではない」


「だが、大きな前進だ」


城壁の上から見渡す景色。


その内側には増えた家々と作業に励む仲間たちの姿、そして笑い声がある。


少しずつここは「暮らす場所」へと変わりつつあった。



「家の方も順調ですね」


リンファが周囲を見渡す。


以前は、多くの仲間がテントや簡易的な寝床で生活していた。


しかし今では木造の家がいくつも建ち並んでいる。


まだ全員分には足りない。


それでも、一つずつ。


帰る場所は確実に増えていた。


「大工組も頑張ってますからね~」


セリアが眠たげに言う。


「住む場所があるって大事ね~」



そして、新たに始まった作業がある。


道路整備だ。


俺が視線を向けた先では、地面を整え、道を作っていた。


これまでは森の中をそのまま歩くだけで、決まった道など存在しなかった。


しかし、人が増え、建物が増え、街として機能させるには必要なものだ。


「中央通りを作る予定です」


たるとが説明する。


「広場から各施設へ移動しやすいようにしたいんです」


「それに……」


たるとは街を見渡した。


「誰かが迷わず帰れる場所にしたいです」


その言葉に、周囲の仲間たちが静かに頷く。



城壁。


住居。


道路。


少しずつ、必要なものが整っていく。


まだ完成した街ではない。


まだ足りないものも多い。


それでも誰もが感じていた。


ここはもうただの集落ではない。


「街」になろうとしているのだ。


そして、街が大きくなるほど守るために必要なものも増えていく。


そのための準備が誰にも知られない場所で静かに始まっていた。



王虎の牙の集落。


地下。


まだ誰にも知られていない場所。


そこでは静かに作業が進められていた。


「ここまで掘れば十分だろう」


ゴウマが壁を確認する。


広い空間。


堅牢な石造り。


ただの地下室ではない。


万一に備えて設けられる場所。


地下牢。


「本当に造るんですね」


たるとが周囲を見渡す。


その表情にはわずかな複雑さが浮かんでいた。


「できれば……使うことがないといいのですが」


その言葉にアイスが静かに応える。


「この世界に絶対はない」


「どれだけ平和を願っても脅威が消えるとは限らない」


深淵の剣との戦い。


あれほどの力を持つ存在がこの世界には確かにいた。


もし、同じような脅威が現れた時。


何の備えもなければ。


守れるものも守れない。


「これは誰かを傷つけるための場所じゃない」


ノエルが言う。


「守るための場所です」


その言葉に全員が頷いた。



この地下牢の存在を知っている者は限られている。


たると。


ガウ。


ハヤテ。


ゴウマ。


リンファ。


シズク。


セリア。


アイス。


サイオン。


ガンテツ。


バレット。


ノエル。


モルフォ。


一般の仲間達には伝えていない。


不安を与えないため。


そして、この場所が必要になる未来など誰も望んでいないからだ。


「たると」


俺は声をかける。


「本当に大丈夫か?」


たるとは少し考えたあと小さく笑った。


「大丈夫です」


「皆が安心して暮らせる場所を作るためなら必要なことだと思います」


「でも……」


少しだけ視線を落とす。


「できればこの場所がずっと使われないままだと嬉しいです」


その言葉に誰も反論できなかった。



街は大きくなっている。


仲間は増えている。


だからこそ守る責任も増していく。


強い敵と戦うためだけではない。


仲間達の日常を守るため。


帰る場所を失わないため。


必要な備えだった。


「地上に戻るぞ」


ゴウマが言う。


全員が頷く。


地上ではまだ仲間達が街を作っている。


笑い声が響いている。


その日常を守るために。


王虎の牙は、少しずつ未来への備えを進めていた。

第7話「守るための準備」を読んでいただき、ありがとうございます!


今回は、少しずつ変化していく王虎の牙の街を描いた回でした。


最初は小さな集落でした。


仲間達が集まり、簡単な家を建て、食料を確保しただ生き残るための場所だった。


今では城壁が作られ、住居が増え、道路の整備まで始まりました。


少しずつですがここは確実に「街」へと変わり始めています。


そして今回は街が大きくなったからこそ必要になる「備え」も描きました。


深淵の剣との戦いで王虎の牙は大きな力を持つ存在と戦いました。


どれだけ仲間を大切にしていても。


どれだけ平和を願っていても。


脅威が完全になくなることはありません。


だからこそ守るための準備が必要になる。


地下牢という場所は誰かを傷つけるために作るものではありません。


仲間達が安心して暮らせる場所を守るためのものです。


たるとが願うように。


この場所が使われることがない未来が一番良い。


それでも。


大切なものが増えたからこそ、守る覚悟も必要になっていきます。


王虎の牙は、ただ強い者が集まったギルドではありません。


仲間が帰ってこられる場所を作るために。


少しずつ未来への準備を進めています。


次回も、成長していく王虎の牙を描いていきます。


お楽しみに!

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