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第1話 帰る場所づくり

第3章「建国編」スタートです!


《深淵の剣》との戦いを終えた《王虎の牙》。


ここからは仲間たちと一緒に自分たちの街を作っていきます。


それでは、第3章の始まりです!

――朝。


第一階層のマップ端。


王虎の牙の集落。


東の空から昇った朝日が森の木々を照らしていく。


柔らかな光が差し込む中、集落にはすでに多くの人々の声が響いていた。


「そっち、ゆっくり運べ!」


「了解!」


「木材はこっちだ!」


「石材追加で届きました!」


「こっちにも人手を頼む!」


「今行く!」


あちこちから飛び交う声。


木材を運ぶ音。


石材を積み上げる音。


地面を均す音。


新しい建物を築く音。


かつてここは森の中に築かれた小さな拠点にすぎなかった。


王虎の牙の仲間たちとこの場所で暮らすNPCたち。


食事をして笑い、時には騒ぐ。


そんな小さな集落だった。


だが今は違う。


俺は少し高い場所から集落を見渡した。


「……変わったな」


思わず言葉が漏れる。


人がいる。


以前とは比べものにならないほど多くの人が。


《深淵の剣》から救出されたプレイヤー。


その中からこの場所に残ることを選んだ者たち。


償うために残った元《深淵の剣》の構成員。


そして。


拠点を失い、この場所で暮らすことを選んだ《白銀戦線》の仲間たち。


昨日まで空いていた場所にも人の姿がある。


笑い声が聞こえる。


誰かを呼ぶ声が聞こえる。


まだ街と呼ぶには小さい。


けれどもう以前と同じ集落ではなかった。


「そうね」


隣から声が聞こえた。


リンファだ。


俺と同じように集落を眺めている。


「少し前までは本当に小さな集落だったもの」


「うん」


リンファの視線が下へ向く。


そこには石材を運んでいる数人の男たちがいた。


元《深淵の剣》の構成員。


まだ周囲との間に僅かな距離がある。


会話も少ない。


当然だと思う。


ついこの間まで敵だった。


すぐにすべてを忘れて仲良くしろと言われても無理な話だ。


それでも彼らは逃げなかった。


ここに残ることを選んだ。


自分たちがしてきたことから目を逸らさず。


これから何かを作ることで償おうとしている。


「みんな頑張ってるわね」


リンファが穏やかに笑う。


「そうだね」


俺も頷いた。


壊す側にいた人間が今日は何かを作るために石を運んでいる。


不思議な光景だ。


でも悪くない。


俺はそう思った。



「みなさーん!」


集落の中央。


たるとの元気な声が響いた。


「一度集まってくださーい!」


作業をしていた人たちが次々と手を止める。


「なんだ?」


「何か始めるのか?」


「行ってみようぜ」


少しずつ人が集まってくる。


王虎の牙。


白銀戦線。


新たにこの場所へ加わった住民たち。


NPCたちも何事かと集まってきた。


やがて広場を埋めるほどの人が集まった。


その中心にたるとが胸を張って立っている。


隣にはゴウマ。


そして大きな紙が広げられていた。


俺もリンファと一緒に人混みの後ろへ移動する。


「それでは!」


たるとが両手を上げる。


「今日から!」


少し間を置いて。


満面の笑顔。


「本格的な街づくりを始めます!」


一瞬、静かになる。


直後。


「おおおおおっ!」


歓声が上がった。


「ついにか!」


「やるぞ!」


「街づくりなんて初めてだ!」


あちこちから声が上がる。


たるとも嬉しそうに笑っていた。


「はい!」


「でも!」


人差し指を立てる。


「いきなり全部を作るのは無理です!」


「なので!」


「一つずつ作っていきましょう!」


そこでゴウマが前へ出た。


「まずは俺から説明しよう」


広げられた紙。


いや、設計図だ。


たるとが考えたこの集落の未来の姿。


ゴウマがその一角を指差す。


「最優先は外壁だ」


場の空気が少し引き締まる。


「理由は単純」


ゴウマが周囲を見渡した。


「この場所を守るためだ」


静かになる。


「人が増えた」


「住民も増えた」


「そして」


一度言葉を切る。


「守るべきものも増えた」


誰も口を挟まない。


《深淵の剣》との戦いを経験した者ならその言葉の意味が分かる。


どれだけ穏やかな場所でも守る力がなければ奪われる。


俺たちはそれを嫌というほど知った。


「だから最初に」


ゴウマが設計図を指でなぞる。


「集落全体を囲う外壁を作る」


「同時に住民用の家も増やす」


「それが終われば道路を整備する」


さらに指を動かす。


「その後に店や施設だ」


武器屋。


宿泊施設。


訓練場。


研究施設。


そして集落の中央を通る大きな道。


設計図の中にはまだ存在していない街の姿が描かれていた。


「最初から全部を完成させる必要はない」


ゴウマが言う。


「一つずつだ」


「今日より明日」


「明日よりその次」


「少しずつ暮らしやすい場所にしていけばいい」


「はい!」


たるとが頷く。


そして皆を見渡した。


「みんなで作りましょう!」


「ここにいる人たちが安心して暮らせて」


「出かけてもまた帰ってきたいって思える場所を!」


その言葉に何人もの表情が変わった。


中でも。


元《深淵の剣》の構成員たち。


彼らは黙ってたるとを見ていた。


これまで彼らはゼノスの命令に従い、誰かから奪い誰かが築いたものを壊す側にいた。


その過去が消えることはない。


だからこそ彼らはここに残った。


償うために。


そして今。


その手で新しい場所を築こうとしている。


「……本当に」


一人の男が呟いた。


「俺たちも……ここにいていいのか?」


周囲が静かになる。


たるとは男を見る。


迷わなかった。


「もちろんです!」


即答。


「でも俺たちは……」


「ここに残るって決めたんですよね?」


「……ああ」


「だったら!」


たるとは笑った。


「一緒に作りましょう!」


男が目を見開く。


「過去にしたことがなくなるわけじゃありません」


たるとの声が少しだけ穏やかになる。


「だからこれから作っていけばいいと思います」


「……」


「家も」


「街も」


「信頼も」


男は何も言わなかった。


ただ拳を握り締める。


やがて。


「……分かった」


小さく頷いた。


「俺たちにも」


「やらせてくれ」


たるとの笑顔がさらに大きくなる。


「もちろんです!」


周囲から小さな拍手が起こった。


それは次第に広がっていく。


俺はその様子を静かに眺めていた。


この世界では強さがなければ守れないものが多かった。


弱ければ大切なものを奪われる。


そんな現実を何度も見てきた。


だから俺たちは強くなった。


戦うために。


守るために。


でも、今目の前に広がっているのは戦うための集まりじゃない。


奪うためでもない。


何かを築くために人が集まっている。


これも俺たちが求めていた強さなのかもしれない。



「よし!」


ゴウマが大きく手を叩いた。


パンッ!


「それじゃあ作業開始だ!」


「まずは外壁の基礎から始める!」


「力仕事ができる奴は俺のところへ来てくれ!」


「おう!!」


誰よりも大きな声が響いた。


ガンテツだ。


「そういうことなら俺の出番だな!」


ズシン。


巨大な石材の前へ立つ。


普通なら。


何人かで運ぶ大きさ。


それを。


「ふんっ!」


持ち上げた。


「……」


周囲が静かになる。


「よし!」


ガンテツはそのまま歩き出した。


「これはどこに置けばいい!」


「……」


「……」


初めて見る住民たちが固まっている。


俺も思わず口を開いた。


「ガンテツ」


「ん?」


「それ、一人で持つ必要ある?」


「何言ってんだ!」


豪快に笑う。


「力仕事は俺の出番だろ!」


「いや」


ハヤテが横から口を挟む。


「助かるけどさ」


石材を見る。


ガンテツを見る。


もう一度石材を見る。


「毎回思うけど基準がおかしいんだよな」


「そうか?」


「そうだよ」


「まあ~」


眠たげな声。


セリアが欠伸をしながら歩いてくる。


「ガンテツだからね~」


「どういう意味だ!」


「そのままの意味~」


「分からん!」


「分からなくていいと思うよ」


「ガハハハハ!」


なぜかガンテツ本人が一番笑っている。


周囲からも笑いが起きた。


今はこんなくだらないことで笑える。


そのことが少し嬉しかった。



「ガウさん!」


「ん?」


呼ばれて振り返る。


ツキがいた。


小さな身体で木材を抱えている。


「これ!」


「運ぶの手伝って!」


「……」


見るからに重そうだ。


というよりよくここまで運べたな。


「貸して?」


「うん!」


受け取る。


やっぱりツキ一人に持たせるには少し重い。


「無理しなくていいよ」


「でも私も手伝いたい!」


ツキは元気よく答えた。


「みんな街を作ってるんでしょ?」


「だったら私もやる!」


「そっか」


「うん!」


元気だ。


その後ろ、少し離れた場所にヨミが立っていた。


「……」


いつもの無表情。


狐耳が僅かに動いている。


尻尾も小さく揺れていた。


ツキが俺の横から顔を出す。


「お姉ちゃんも手伝いたいって!」


「……!」


ヨミの尻尾が止まった。


「ツキ……」


「だってそうでしょ?」


「……」


否定しない。


俺はヨミを見る。


「手伝ってくれる?」


「……」


一瞬、迷ったように見えた。


それから小さく頷く。


「……うん」


「ありがとう」


「……」


尻尾がまた小さく揺れた。


まだこの場所に完全に馴染めたわけじゃない。


きっと自分がここにいていいのか迷うこともあると思う。


でも焦る必要はない。


一日。


また一日。


少しずつでいい。


ツキが笑って。


ヨミがその隣にいて。


いつかここにいることが当たり前になればそれでいい。



外壁の建設は順調に進んでいた。


大勢の人が協力し基礎となる石材を一つずつ並べていく。


もちろん一日で完成するようなものではない。


集落全体を囲うとなれば。


必要な石材も。


木材も。


人手も。


膨大になる。


それでも少しずつ形になっていた。


「そこはあと少し右です!」


声が響く。


シズクだ。


彼女は建設中の外壁の前で地面へ何かを書き込みながら位置を確認していた。


その周囲にはいくつもの小さな魔石が整然と並べられている。


「シズク」


近くにいたハヤテが覗き込む。


「それ何?」


「防御結界の核です」


「核?」


「はい」


シズクは魔石を一つ持ち上げる。


一見すればただの青白い魔石。


しかしその内部には複雑な魔力の流れが刻み込まれていた。


「これを外壁内部へ一定間隔で埋め込みます」


「そうすることで外壁全体へ防御結界を展開できるようになります」


「へぇ……」


ハヤテが感心したように魔石を見る。


「つまりただ石の壁を作るだけじゃないってことか」


「はい」


シズクが頷く。


「普通の外壁だけでは強力な魔法やスキルを完全に防ぐことは難しいです」


「特に」


一瞬。


シズクの表情が真剣になる。


「今回のような襲撃を考えるなら」


ハヤテも黙った。


《深淵の剣》。


あれほどの規模の敵がもしこの集落を直接襲っていたら……。


今の防備では守り切れなかったかもしれない。


「だから」


シズクは外壁を見上げる。


「次はもっと守れるようにしたいんです」


静かな声だった。


だがそこには強い意思があった。


「ここで暮らす人たちが何があっても安心して暮らせるように……」


「そのための結界です」


俺は少し離れた場所からその言葉を聞いていた。


シズクは戦場で前に出るタイプじゃない。


派手な一撃で敵を倒すわけでもない。


でもこういう時、誰よりも頼りになる。


「配置はどうする?」


ゴウマが設計図を持ってやってきた。


シズクはすぐに地面へ広げる。


「外壁全体へ等間隔に配置します」


指で位置を示していく。


「一つの核だけで維持するのではなく」


「複数の核を繋ぎ」


「魔力を外壁全体へ循環させます」


「一つ壊されたらどうなりますか?」


ノエルが尋ねた。


大盾を背負い。


外壁の厚さを確認していたらしい。


「他の核で補います」


シズクは即答した。


「ただし、破壊される数が増えれば当然結界の強度も低下します」


「なるほど」


ノエルが外壁へ手を触れる。


「なら核そのものを外から狙われない位置に埋め込む必要もありますね」


「はい」


「それも考えています」


二人が設計図を覗き込む。


そこへ。


「興味深いですね」


声が加わった。


モルフォだ。


いつの間に来たのか。


シズクの持つ魔石をじーっと見ている。


「結界を複数の核で繋ぎ、魔力を循環させる」


「非常に興味深い構造です」


シズクが顔を上げる。


「モルフォさん?」


「この技術」


モルフォは魔石を指差した。


「研究施設にも応用できるかもしれません」


「研究施設?」


「はい」


モルフォの目が輝く。


「例えば」


指を一本立てる。


「貴重な資料の保護」


二本。


「危険な研究対象の隔離」


三本。


「特定の環境を必要とする生物の飼育」


「そして」


少し間を置く。


「虫たちの研究環境をより完璧に――」


「やっぱりそこに行くんだ」


ハヤテが即座に突っ込んだ。


「当然です」


モルフォは真顔だった。


「研究対象を安全に守ることは研究者の責務です」


「虫も?」


「虫だからこそです」


「そ、そう……」


ハヤテが一歩下がる。


シズクが思わず小さく笑った。


「モルフォさんらしいですね」


「そうでしょうか?」


本気で首を傾げている。


その時。


「私も見ていい~?」


眠たげな声。


セリアだった。


「セリアさん」


シズクが場所を空ける。


セリアはしゃがみ込み。


魔石を覗き込んだ。


「ふ~ん」


指先で魔石の周囲をなぞる。


「この魔力の流れ~」


「ここでちょっと詰まってるね~」


「え?」


シズクの表情が変わった。


セリアが指差す。


「ここ~」


「一回こっちに流してから戻してるでしょ~?」


「はい」


「それなら~」


セリアは地面へ簡単な魔法式を書き始める。


「こことここを直接繋いで~」


「こっちの流れを少し細くすれば~」


「消費する魔力を減らせるかも~」


「……」


シズクが式を見る。


数秒。


じっと考える。


そして目を見開いた。


「確かに……」


「これなら」


指で式を追う。


「結界強度をほとんど落とさずに維持に必要な魔力を減らせます」


「でしょ~?」


セリアが眠たそうに笑う。


モルフォも式を覗き込む。


「魔法構造そのものを調整する発想ですか」


「相変わらずですね」


「そうかな~?」


セリアが欠伸をする。


「面白そうだったから考えただけだよ~」


「それで思いつくのがおかしいんだって」


ハヤテが呟く。


「ハヤテ~?」


「何でもありません」


即答。


周囲から笑いが起こる。


シズクも小さく笑った。


だがすぐに魔石へ視線を戻す。


「試してみます」


「うん~」


「もし成功すれば結界の維持時間をかなり延ばせそうです」


「そのデータ」


モルフォが食いつく。


「完成したらぜひ――」


「モルフォさん」


「まずは外壁からです」


「……そうですね」


また笑いが起こった。



午後。


作業はさらに進んでいく。


ガンテツが巨大な石材を運び。


ゴウマが全体へ指示を飛ばす。


ハヤテが足りない資材を各所へ届ける。


リンファは住民たちと一緒に細かな作業を手伝う。


ノエルは外壁の厚みや防御面を確認する。


ツキも小さな木材を一生懸命運んでいる。


その後ろをヨミがついて歩く。


そして外壁ではシズクが中心となり、セリアとモルフォが協力して防御結界の核を組み込んでいく。


「次!」


「はい!」


魔石が外壁内部へ埋め込まれる。


シズクが両手を当てる。


「接続します」


淡い光。


一つ目の核。


二つ目。


三つ目。


魔力の線がゆっくりと繋がっていく。


そして。


キィィン――。


淡い光が。


完成した部分の外壁を一瞬だけ覆った。


「……!」


周囲から声が上がる。


「光ったぞ!」


「これが結界?」


シズクは目を閉じ。


魔力の流れを確認する。


やがて。


「……成功です」


小さく笑った。


「おお!」


歓声。


セリアも嬉しそうに笑う。


「やったね~」


モルフォは真剣な顔で何かを書き留めていた。


「この魔力循環は記録しておきましょう」


「研究施設への応用が――」


「だからまず外壁だって」


「分かっています」


たぶん。


分かっていない。


俺は少し離れた場所から。


その光景を見ていた。


力。


スキル。


魔法。


今まで何度も戦場で使ってきた。


敵を倒すために。


仲間を守るために。


でも今は違う。


ガンテツの力は街を築くために。


シズクの結界は住民を守るために。


セリアの魔法はより長く安全を維持するために。


モルフォの知識はこれから作られる施設のために。


みんなの力が少しずつ一つの場所を作っている。


それがなんだか嬉しかった。



「ガウ」


「ん?」


振り返る。


たるとが立っていた。


手にはあの大きな設計図。


「どうしたの?」


「ちょっと休憩」


「そっか」


たるとは俺の隣へ来る。


二人で建設途中の外壁を見る。


まだほんの一部。


集落全体を囲うには。


程遠い。


その向こうには建設途中の家。


運ばれていく木材。


作業を続ける人たち。


走り回るツキ。


それを追いかけるヨミ。


ガンテツと何か言い合っているハヤテ。


笑っているリンファ。


魔石を囲んで話しているシズクたち。


いろんな人がいる。


「……」


たるとがぽつりと呟いた。


「皆で街づくりするの」


少し間を置いて。


「楽しいですね」


俺は集落を見る。


「……そうだね」


自然と声が柔らかくなった。


たるとは設計図を胸の前で抱える。


「もっと大変だと思ってました」


「大変じゃないの?」


「大変です!」


即答だった。


思わず笑う。


「でも」


たるとも笑った。


「一人じゃありませんから」


「……」


「みんながいます」


「だから」


完成途中の外壁を見る。


「きっと」


「素敵な街になります」


俺も同じ場所を見る。


まだ街とは呼べない。


外壁も途中。


家も足りない。


道も整っていない。


店もない。


訓練場もない。


何もかもこれからだ。


でもだからこそ。


「うん」


俺は頷く。


「そうなるといいね」


たるとは嬉しそうに笑った。


「はい!」



夕方。


太陽が森の向こうへ沈み始める。


「今日はここまでだ!」


ゴウマの声が響いた。


「お疲れ!」


「終わったぁ!」


「腹減った!」


作業を終えた人々が。


それぞれ道具を片付け始める。


誰かが誰かを呼ぶ。


今日の作業について話している人がいる。


明日はここをやろうと相談している人もいる。


子供たちの笑い声も聞こえる。


完成したものはまだ少ない。


外壁もほんの一部。


住民の家もまだまだ足りない。


それでも朝にはなかったものが夕方にはそこにある。


今日一日でほんの少しだけ未来の輪郭が見えた気がした。


俺は立ち止まり、夕日に照らされた集落を見渡す。


帰ってきた人がいる。


新しく暮らし始めた人がいる。


過去を償おうとしている人がいる。


ここで生きようと決めた人がいる。


そんな人たちが同じ場所で同じものを作っている。


帰る場所は誰かから与えられるものじゃない。


きっと。


こうして。


みんなで少しずつ。


築いていくものなんだ。


俺は夕日に染まる建設途中の外壁を見上げた。


まだ小さな集落。


それでもここがいつか誰もが安心して「ただいま」と言える場所になる。


そんな未来を少しだけ想像した。

第1話「帰る場所づくり」を読んでいただきありがとうございます!


まずはみんなで外壁づくりから。


戦いに使ってきた力も今度は街を築き、仲間を守る力へ。


小さな集落がこれからどんな街になっていくのか、楽しんでいただけたら嬉しいです!


次回もお楽しみに!

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