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第22話 守る力

白銀戦線の拠点入口。


巨大な衝撃が響いた。


ゴォォン!!


ゴウマの《天砕拳》。


大地の力を込めた拳。


その一撃を受けたヴァルガの身体が吹き飛ぶ。


壁を突き破りそのまま建物へ激突する。


轟音。


柱が折れる。


壁が崩れる。


大量の瓦礫がヴァルガを飲み込んだ。



ゴウマは拳を下ろす。


「……。」


周囲を見る。


崩れた建物。


壊れた壁。


そして静まり返った戦場。


ゴウマは小さく呟く。


「……アイスに後で謝ろう。」



しばらくして。


瓦礫が動く。


「……。」


中から一人の男が這い出てくる。


ヴァルガ。


しかし先ほどまでの姿とは違う。


狂獣化バーサーク・ビースト》は解除されている。


身体中傷だらけで呼吸も荒い。


「はぁ……。」


「はぁ……。」


それでもまだ立とうとしていた。


その姿を見ていた。


深淵の剣のプレイヤー達。


彼らは先ほどまでの戦いを見ていた。


圧倒的な力を持つヴァルガ。


それを打ち破ったゴウマ。


誰もが理解していた。


勝てない。


「……。」


一人。


また一人。


武器を地面へ置く。


「降参します。」


「もう戦えません。」


深淵の剣のプレイヤー達が。


次々と武器を手放していく。


「……。」


ヴァルガの表情が歪む。


「何をしている!」


低い声。


「降参するな!」


「雑魚どもが!」


プレイヤー達が震える。


「でも……。」


「もう無理です!」


「勝てません……!」


その言葉にヴァルガの目が怒りに染まる。


「だったら…!」


大剣を握る。


「俺が……!」


「殺してやる!」


大剣を振り上げる。


降参した仲間へ。


振り下ろそうとする。


その瞬間、ゴウマが動いた。


「救えないな…。」


地面へ手をかざす。


「《岩槍陣》」


瞬間。


地面が震える。


ヴァルガの足元。


大地から鋭い岩の槍が突き上がる。


「……っ!」


ヴァルガの胸に岩の槍が突き刺さる。


「もう終わりだ。」


ゴウマの言葉が静かな戦場に響く。


ヴァルガはもう動かなかった。


力と力のぶつかり合い。


それは守るための力が勝った瞬間だった。



白銀戦線の拠点内部。


崩壊した通路。


その中央で、二人が対峙していた。


《白銀戦線》ギルドマスター、アイス。


そして、《深淵の剣》四天王ミレイア。


ミレイアは、影の中からゆるやかに姿を現す。


黒い影を纏ったその姿は、まるで最初からそこに在ったかのようだった。


「……。」


アイスは小さな杖を強く握りしめる。


「サイオンだったか?」


ミレイアが静かに問いかける。


「無事なのか?」


その一言に、アイスの表情が変わる。


「お前が……。」


「サイオンを……!」


普段のアイスであれば、冷静に状況を分析していただろう。


だが、その瞬間だけは違った。


仲間を傷つけられた怒りが、理性を揺さぶる。


ミレイアは、その変化を見逃さない。


「なるほど。」


「そこが弱点か。」


ミレイアは静かに笑った。


「教えてくれ。」


「あの時の男は。」


「まだ生きているのか?」


アイスの目が鋭くなる。


「……。」


ミレイアは続ける。


「あれほど仲間を守ろうとして。」


「最後まで戦い抜いて。」


「それでも倒された。」


「守ると言いながら。」


「何ひとつ守れていない。」


その瞬間。


アイスの魔力が揺らいだ。


「……黙れ。」


ミレイアは淡々と言う。


「怒ったか?」


「やはりな。」


「感情は隙になる。」


アイスは小さな杖を構え直す。


「仲間を侮辱するな!」


ミレイアは嘲るように笑う。


「仲間?」


「弱者を守るために戦う。」


「非効率な思想だ。」


「だから負ける。」


アイスは歯を食いしばる。


「ぐっ……。」


そして、魔力が一気に広がった。


「アークスキル」


「《氷界支配アブソリュート・ゼロ》」


瞬間。


アイスの周囲から熱が奪われていく。


床。


壁。


空気。


あらゆるものが凍結を始める。


アイスが小さな杖を突き出した。


「《氷柱槍》!」


地面が一斉に凍りつく。


無数の氷柱が勢いよく突き上がった。


しかし、ミレイアは微動だにしない。


「アークスキル」


「《深影支配アビス・シャドウ》」


瞬間。


ミレイアの身体は影へと沈んだ。


氷柱は虚空を貫く。


次の瞬間、別の影からミレイアは姿を現す。


「遅い。」


再び消える。


また現れる。


氷の攻撃と影の移動。


二つの支配能力が、激しくぶつかり合う。



「なるほど。」


ミレイアが呟く。


「力は十分だ。」


「だが迷いがある。」


アイスの動きが止まる。


「……何?」


ミレイアは影の中から声を響かせる。


「仲間を守る。」


「その甘い考えがお前を縛っている。」


アイスは周囲を見渡す。


影。


どこから来るのか。


その瞬間。


足元から影が伸びた。


「《影縫》」


影の刃が、アイスの影を貫く。


「……っ!」


身体が止まる。


足が動かない。


ミレイアは静かに歩み寄る。


「動けないだろう。」


「これが影を支配する力だ。」


影がさらに広がる。


「《影槍》」


死角から、影の槍が突き出された。


「《氷壁》!」


アイスは咄嗟に氷の壁を展開する。


ガキィン!!


影槍の軌道が逸れる。


だが完全には防ぎきれなかった。


「……っ!」


鋭い痛みが走る。


影槍が脇腹を抉る。


血のエフェクトが散る。


アイスは膝をついた。


「……。」


ミレイアは静かに見下ろす。


「仲間を想う心。」


「それは強さにもなる。」


「だが。」


「同時に弱点にもなる。」


アイスは杖を握り直す。


深手を負ってなお。


それでも、戦意はまだ失われていなかった。

第22話「守る力」を読んでいただき、ありがとうございます!


今回はゴウマVSヴァルガ。


そしてアイスVSミレイア。


二つの戦いが描かれた回でした。


ヴァルガは「強い者が勝つ」という力による支配を信じる戦士。


対してゴウマは「力は誰かを守るために使うもの」という信念で戦いました。


ただ強いだけではなくその力を何のために使うのか、そこが二人の大きな違いでした。


そしてアイスの前に現れたミレイア。


サイオンを傷つけた相手を前に普段冷静なアイスも感情を揺さぶられます。


ミレイアは相手の心の隙を突く戦い方を得意とする敵です。


果たしてアイスは「仲間を想う心」を弱点として終わらせてしまうのか。


それともそれを力へ変えることができるのか。


次回、アイスとミレイア。


氷と影の戦いがさらに激しく動き出します。

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