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第20話 狂獣

白銀戦線の拠点入口。


瓦礫によって塞がれた外壁の前で、二人の男が対峙していた。


一人は、巨大な大剣を携えた男。


《深淵の剣》四天王。


ヴァルガ。


もう一人は、メリケンサックを構えた男。


《王虎の牙》。


ゴウマ。


「……。」


互いに一歩も譲らない。


ヴァルガが笑う。


「守るための力ってやつを見せてみろ。」


次の瞬間。


ヴァルガが踏み込んだ。


巨大な大剣が、上空から振り下ろされる。


ただ振るっただけ。


それだけで周囲の空気が震える。


「っ!」


ゴウマは避けない。


拳を握り締める。


そして振り下ろされる大剣の側面へ拳を叩き込んだ。


ガァン!!


金属音が響く。


真正面から受けるのではなく刃の軌道だけをずらす。


大剣はゴウマの横を通り過ぎ、地面へ突き刺さった。


その隙。


ゴウマが一気に距離を詰める。


「結構器用じゃねぇか!」


ヴァルガが笑う。


「ただの脳筋じゃなさそうだ!」


ゴウマの拳が迫る。


「《岩砕拳》」


拳へ全身の力を集中。


防御ごと砕くための重い一撃。


しかしヴァルガは片手を前へ出す。


その拳を受け止めた。


「……!」


ゴウマの表情が変わる。


止められた。


ヴァルガは笑う。


「悪くねぇ。」


「だが。」


次の瞬間。


軽く跳躍。


空中から身体をひねり。


ゴウマの腹部へ強烈な蹴りを叩き込む。


「ぐっ……!」


ゴウマは咄嗟に腕を交差させる。


防御している。


それでも衝撃を完全には殺せない。


身体が後方へ押し出され地面を削りながら滑っていく。


ゴウマはゆっくり立ち上がる。


「……。」


重い。


一撃一撃が純粋な力で押し潰してくる。


ヴァルガも大剣を構え直す。


「いいな。」


「やっぱり面白ぇ。」


「こういう奴と戦うのは久しぶりだ!」


再び二人がぶつかる。


先に動いたのはヴァルガ。


「《叩砕》」


大剣を大きく振り上げ。


その重量を全て乗せて叩き落とす。


受ければ防御ごと破壊される一撃。


ゴウマは横へ流す。


「《震脚》」


強烈な踏み込み。


地面へ衝撃を伝える。


その振動でヴァルガの足元が揺れる。


一瞬。


体勢が崩れる。


そこへ。


「《崩拳》」


ゴウマが踏み込む。


防御の隙間を狙い相手の体勢ごと崩す拳。


しかしヴァルガは笑った。


「甘ぇ!」


踏ん張る。


崩れた体勢のまま。


無理やり力で耐える。


そして。


「《裂断》」


大剣を横薙ぎに振り抜く。


ゴウマは身体を低く沈めて回避しそのまま懐へ入る。


しかしヴァルガも止まらない。


「《轟刃》」


踏み込みと同時に。


大剣を斜めに振り抜く。


速度よりも威力を重視した破壊の一撃。


ゴウマは拳を前へ出す。


「……!」


拳と大剣がぶつかる。


衝撃が周囲へ響き渡る。


「《叩砕》」


ヴァルガが大剣を振り下ろす。


その一撃は地面を砕くほどの威力。


しかしゴウマは横へ流れる。


「《震脚》」


ヴァルガの足元が揺れる。


その瞬間。


「《崩拳》」


ゴウマが踏み込む。


防御の隙間を狙った拳。


しかしヴァルガは大剣でガードする。


「同じパターンが通用するか!」


力で押し返すがゴウマは止まらない。


「《連砕打》」


左右の拳を連続で叩き込む。


一発では崩れないなら何度でも打ち込む。


一発一発が重い。


ヴァルガの身体が揺れる。


「……!」


その瞬間。


ゴウマの拳がヴァルガの防御の隙間を抜ける。


「《穿撃》」


一点へ集中した拳。


防御では止められない。


「ぐっ……!」


ヴァルガの身体が大きく吹き飛ぶ。


地面を跳ね。


そのまま後方の壁へ激突する。


ドォン!!


壁に亀裂が走る。


砂煙が舞う。


その中でヴァルガがゆっくり立ち上がる。


口元を歪める。


「なかなかやるな。」


大剣を肩に担ぐ。


「ただの守るだけの奴じゃねぇ。」


「ちゃんと戦える力を持ってやがる。」


ゴウマは構えを崩さない。


「まだ終わっていないだろ。」


その言葉に。


ヴァルガは笑う。


「ああ。」


「まだだ。」


大剣を握り直す。


そして空気が変わる。


「ここまで俺を楽しませた奴は久しぶりだ!」


「とっておきを見せてやる!」


ヴァルガの身体から凄まじい力が溢れ出す。


周囲の空気が震える。


地面が揺れる。


ゴウマが目を細める。


「……。」


ヴァルガが吠える。


「アークスキル」


「《狂獣化バーサーク・ビースト》」


瞬間。


ヴァルガの身体能力が跳ね上がる。


大剣を握る腕。


全身の筋肉。


纏う気配。


全てが別物へ変わる。


狂獣。


その名の通り。


力そのものを解放した姿だった。


「……!」


ゴウマは構える。


次の瞬間。


ヴァルガが動く。


圧倒的な速度。


巨大な大剣が迫る。


「《獣王撃》」


狂獣化した腕力で放つ、破壊力特化の一撃。


ゴウマは受け止める。


しかし。


「ぐっ……!」


耐えきれない。


身体が後方へ吹き飛ぶ。


地面を削りながら転がる。


立ち上がる前に。


ヴァルガが迫る。


「《狂牙斬》」


一撃必殺の威力を秘めた連続斬撃。


ゴウマは防ぐ。


避ける。


しかし一撃一撃が重い。


「これが……狂獣か。」


圧倒的な力。


速度。


破壊力。


通常時とは別次元だった。


「ウガァ!」


さらに。


「《暴獣突進》」


一直線。


ただ破壊するためだけの突撃。


ゴウマは防御する。


だが押し切られる。


完全な防戦。


しかしゴウマの目は冷静だった。


見ている。


攻撃。


動き。


癖。


「……。」


「なるほどな。」


ヴァルガが大剣を振り上げる。


「《破壊衝》」


大剣を地面へ叩きつける。


周囲へ広がる衝撃波。


その瞬間。


ゴウマが踏み込む。


ヴァルガが迫る。


しかしゴウマの動きが変わった。


受ける。


耐える。


それだけだった男が。


攻撃を。


流す。


避ける。


受け流す。


「……!」


ヴァルガが目を見開く。


「力は上がったが…」


ゴウマが言う。


「動きは単調だ!」


ヴァルガの表情が歪む。


「ウガァ!」


大剣を振り下ろす。


大振り。


その瞬間。


ゴウマは懐へ入り込む。


「《地砕投》」


相手の力を利用した投げ技。


ヴァルガの巨体が宙へ浮く。


そのまま。


地面へ叩きつける。


轟音。


「グハッ!」


しかし。


ヴァルガはすぐに立ち上がる。


「確かに脅威的だが…」


「知能が低くなっているな。」


ヴァルガが吠える。


「ウガァ!」


大剣を握り直す。


全身の力を集中する。


狂獣化の力を全て乗せた。


ヴァルガ最大の一撃。


「《狂天破砕》」


狂獣の力を限界まで引き出し、大剣を振り下ろす最大破壊技。


ゴウマは構える。


「アークスキル」


「《大地掌握ガイア・グリップ》」


発動。


地面が震え、大地の力がゴウマへ集まる。


力。


軌道。


タイミング。


「そこだ。」


ヴァルガの必殺技が放たれる。


しかしゴウマは一歩だけ動く。


紙一重で回避。


「!?」


ヴァルガが驚く。


その隙。


ゴウマの拳へ。


大地の力が集まる。


「終わりだ。」


「《天砕拳》」


守るために鍛えた拳。


大地のエネルギーを込めた一撃。


ヴァルガへ炸裂する。


大地が震え、巨大な衝撃。


ヴァルガの身体が吹き飛ぶ。


そして静寂が訪れるのだった。

第20話「狂獣」を読んでいただき、ありがとうございます!


今回はゴウマとヴァルガ。


二人の「力」に対する考え方がぶつかった回でした。


ヴァルガは強い者が上に立つ。


力ある者が全てを決める。


そう信じています。


ゴウマは力は誰かを守るために使うもの。


仲間を守るためにあるもの。


そう信じています。


同じように強さを求めていても。


二人が目指している場所は全く違いました。


そしてヴァルガは《狂獣化バーサーク・ビースト》を発動。


圧倒的な力でゴウマを追い詰めました。


しかし力が増しましたが理性が低くなっています。


そこをゴウマは見抜きました。


経験。


判断力。


仲間を守るために積み重ねてきたもの。


それが最後の勝負を分けました。


《狂獣》と《大地掌握》。


二つの力の激突。


勝ったのはより強い力を持つ者ではなく。


守るために戦った者でした。


次回。


戦場はさらに激しく動きます。


王虎の牙と深淵の剣。


それぞれの戦いの結末が近づいてきます。


お楽しみに!

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