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第19話 疾風迅雷

白銀戦線の拠点内部。


二人の戦いはさらに激しさを増していた。


槍。


刀。


互いの武器が何度もぶつかり合う。


しかし。


ハヤテは決断する。


ゆっくりと。


腰にあるもう一本の刀へ手を伸ばした。


「……。」


バルドは静かに見ている。


そして。


ハヤテは刀を抜いた。


《黒曜》


二本の刀。


《白夜》と《黒曜》


その瞬間ハヤテの纏う空気が変わった。


鋭い眼差し。


研ぎ澄まされた殺気。


戦うためだけの表情。


バルドは初めてわずかに目を細めた。


「これがお前の本来の戦い方か。」


ハヤテは二本の刀を構える。


「久しぶりに使うけどね。」


バルドは槍を握り直す。


「ならばこちらも相応の力を使う。」


槍を構え、魔力が広がる。


「アークスキル」


空気が震える。


「《槍域支配ランス・ドメイン》」


瞬間。


周囲の空間が変化する。


バルドを中心とした一定範囲。


その全てが。


槍の間合いとなる。


「この領域では。」


「全てが俺の槍の届く。」


ハヤテは周囲を見る。


「なるほど。」


しかし。


笑う。


次の瞬間。


ハヤテが踏み込む。


二本の刀が閃く。


バルドは槍で受ける。


一撃。


二撃。


三撃。


白夜と黒曜。


左右から繰り出される斬撃。


バルドは防ぐ。


受け流す。


距離を管理する。


しかし。


「……。」


バルドの表情が少し変わる。


押されている。


二刀流。


それは単純に攻撃が二倍になるわけではない。


左右から異なる軌道で迫る攻撃。


判断する瞬間が増える。


バルドは槍を引く。


そして。


反撃。


「《穿突》」


一直線。


鋭い槍撃。


ハヤテは二本の刀を交差させる。


受け止める。


衝撃で床が砕ける。


「っと!」


ハヤテは後退する。


だがバルドは止まらない。


槍を大きく振る。


「《裂空》」


広範囲への薙ぎ払い。


ハヤテは身体を沈める。


紙一重で避ける。


そのまま懐へ。


バルドは槍を変化させた。


「《封陣》」


槍がしなる。


まるで巨大な鞭。


「!」


ハヤテの腕へ絡みつく。


「捕らえた!」


バルドが槍を引く。


ハヤテの身体が浮く。


そのまま投げ飛ばされる。


「ぐっ!」


壁へ叩きつけられる。


しかし。


ハヤテはすぐに立ち上がった。


「……。」


そして笑う。


「槍が鞭になるとはね。」


「初見殺しだな。」


バルドは槍を戻す。


「今の状態なら変幻自在だ。」


ハヤテは二本の刀を握り直す。


「なるほど。」


バルドは静かに槍を構える。


二人の間に。


再び殺気がぶつかる。


二刀流。


槍域。


さらに激突する。


「《穿突》」


鋭い突き。


「《裂空》」


広範囲の薙ぎ払い。


「《封陣》」


変幻自在の槍による拘束。


次々と繰り出される技。


ハヤテは避ける。


受け流す。


二本の刀で防ぐ。


「……。」


速さ。


技量。


二刀流。


全てを使っている。


それでもバルドの領域を突破できない。


「どうした。」


バルドが静かに言う。


「先ほどまでの勢いは!」


ハヤテは笑う。


「いや、十分楽しんでるよ。」


バルドの槍は。


近づく前に襲ってくる。


《槍域支配》。


その名の通り。


槍の領域。


なら超えるしかない。


ハヤテは。


ゆっくり刀を下げた。


「……。」


バルドが警戒する。


「何をする。」


ハヤテは深く息を吸う。


そして。


身体を沈める。


低い姿勢。


力を一点に集める。


「アークスキル解放。」


「《疾風迅雷アクセル・テンペスト》」


バルドは槍を構える。


防御の姿勢。


どの方向から来ても対応できる構え。


「《極・瞬影》」


その瞬間。


ハヤテの姿が消えた。


「……!」


バルドの目が見開かれる。


目の前から消えた。


次の瞬間。


ハヤテはバルドの横を通り過ぎていた。


「……?」


何も起きない。


静かな時間。


しかし次の瞬間。


バルドの槍に亀裂が入る。


「……なっ!?」


音を立てて槍が崩れる。


柄。


穂先。


全てが。


細かく斬り裂かれていた。


「なっ……!?」


バルドが初めて声を漏らす。


「俺の槍が……!」


ハヤテは少し離れた場所で。


刀を収める。


「これが俺の本当の速度だ。」


バルドは理解する。


《槍域支配》。


その領域ごと。


突破された。


「……。」


バルドは膝をつき、ハヤテは静かに近づく。


「投降したら命までは取らない。」


その言葉にバルドの目が鋭くなる。


「なめるな……!」


腰へ手を伸ばす。


小さなナイフ。


最後の抵抗。


「俺は!」


「深淵の剣!」


「バルドだ!」


ハヤテは目を伏せる。


「……残念だ。」


そして。


一閃。


バルドの首が宙を舞った。



白銀戦線の拠点入口。


ゴウマは巨大な大剣を担いだ男と対峙していた。


ヴァルガ。


深淵の剣。


四天王の一人。


「弱い奴らが何人集まったところで何も変わらねぇ。」


ゴウマは拳を構える。


「仲間をそんな言い方をするな。」


ヴァルガは笑う。


「仲間?」


「弱いやつは仲間じゃねぇよ。」


その言葉に。


ゴウマの表情が変わる。


「……。」


ヴァルガは大剣を構える。


「強い奴だけが残る。」


「それが正義だ!」


ゴウマは拳を握り直す。


「違うな。」


「力があるから仲間なんじゃない。」


「仲間だから力を使うんだ。」


二人の間。


空気が震える。

第19話「疾風迅雷」を読んでいただき、ありがとうございます!


今回はハヤテの本当の力が描かれる回でした。


普段は明るく。


仲間達と笑い合うハヤテ。


しかし戦いになれば、《王虎の牙》でもトップクラスの剣士。


今回ついにアークスキル《疾風迅雷アクセル・テンペスト》を解放しました。


相手は深淵の剣の四天王バルド。


槍域支配ランス・ドメイン》によって戦場そのものを自分の間合いに変える強敵でした。


ですがハヤテが選んだ答えはさらに速くなること。


支配された領域を圧倒的な速度で突破することでした。


剣で届かないなら。


速度で超える。


それがハヤテの戦い方です。


そして深淵の剣との戦いはまだ終わりません。


入口ではゴウマと四天王ヴァルガが激突します。


力を支配のために使う者。


力を仲間のために使う者。


二人の信念がぶつかる戦いが始まります。


次回。


ゴウマVSヴァルガ。


それぞれが信じる「力」の意味が試されます。


お楽しみに!

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