第14話 作戦開始
――翌朝。
王虎の牙の集落。
朝日が集落を優しく照らしていた。
いつもなら子どもたちの笑い声が響き、NPCたちが畑仕事を始める時間。
しかし、今日だけは違う。
集落の中央広場には《王虎の牙》と《白銀戦線》の仲間たちが静かに集まっていた。
悔しさを胸に、出撃する仲間たちはそれぞれの武器を握っている。
広場の中央へアイスが歩み出る。
静かに仲間たちを見渡した。
「……準備はいいか?」
力強く頷く仲間たち。
アイスも静かに頷き返す。
「今日は必ず取り戻す」
「僕たちの帰る場所を」
◇
その時だった。
「皆さん」
優しい声が響く。
たるとだった。
皆の前へ歩み出る。
少しだけ俯き、大きく息を吸った。
「お願いがあります」
広場が静まり返る。
たるとは一人一人の顔を見つめた。
「奴隷になってしまったプレイヤーの皆さんを必ず助けてください」
「苦しんでいる人を見捨てたくありません」
誰もが静かに頷く。
だが、たるとは続けた。
「でも……」
その声は少し震えていた。
「皆さんの命を狙ってくるなら」
「《深淵の剣》の人たちを止めてください」
拳をぎゅっと握る。
そして覚悟を決めたように顔を上げた。
「必要なら……命を奪うことを私は許可します」
その一言で広場が静まり返った。
優しいたるとだからこそその言葉は重かった。
俺は静かに頷く。
「分かった」
「必ず帰るよ」
ハヤテも頷く。
「安心しろ」
「全員で帰ってくる」
ゴウマも笑う。
「帰ってきたらまた皆で飯だ」
その言葉にたるとは少しだけ笑顔を見せた。
「はい!」
包帯を巻いたサイオンが壁にもたれながら立っていた。
「サイオン!」
バレットが声を掛ける。
サイオンは苦笑する。
「本当はおいらも行きたかったッス」
アイスが静かに近付く。
「今は休め」
サイオンは悔しそうに唇を噛む。
それでも、小さく笑った。
「必ず拠点を取り返してきてくださいッス」
ハヤテが笑う。
「任せろ」
「お前の帰る場所も取り戻してやる」
サイオンは力強く頷いた。
「……はいッス!」
◇
ゴウマが地図を広げる。
「作戦は昨日決めた通りだ」
「正面部隊が敵を引き付ける」
「その隙に潜入部隊が裏道から内部へ侵入する」
ガンテツが巨大な武器を担ぐ。
「派手に暴れてやるぜ!」
ノエルが盾を構えた。
「奴隷プレイヤーは私たちが守ります」
バレットは弓《流星》を握る。
「最初の一撃は俺が撃つ」
「それが作戦開始の合図だ」
全員が頷いた。
◇
森を抜ける。
草原を進む。
やがて視界の先に岩山が見えてきた。
その頂には黒い旗。
《深淵の剣》
俺は静かに《朧》を握る。
必ず取り戻す。
仲間の帰る場所を。
そして。
ヨミを助ける。
やがて俺たちは岩山の手前で足を止めた。
ゴウマが全員を見渡す。
「ここから二手に分かれる」
正面部隊はそのまま正門へ。
俺、ゴウマ、アイス、ハヤテ、リンファの潜入部隊は岩山を大きく迂回し、裏道へ向かう。
「予定通り、正面部隊が動き出したら俺たちも入る」
ゴウマの言葉に全員が頷いた。
俺たちは正面部隊と別れ、木々と岩陰に身を隠しながら拠点の裏側へ回り込む。
やがて昨日確認した小さな裂け目が見えてきた。
裏道の入口。
見張りの姿はない。
アイスが俺たちを見渡す。
「……行くぞ」
誰も言葉を返さない。
ただ静かに頷いた。
その時。
正面側の空へ一本の矢が放たれた。
ヒュン――。
青空を駆け抜けていく一本の矢。
バレットの矢だ。
それは――。
白銀戦線拠点奪還作戦、開始の合図だった。
次回
白銀戦線拠点奪還作戦開始




