第12話 奪われた拠点
白銀戦線の拠点。
そこに。
新たな旗が掲げられていた。
岩山を利用した天然要塞。
仲間達が守り続けてきた場所。
しかし。
今は。
深淵の剣の支配下にあった。
◇
「勝利を祝おう。」
拠点内部。
ゼノスの声が響く。
その周囲には。
四天王。
そして。
構成員100名。
深淵の剣の仲間達が集まっていた。
「悪くない場所だ。」
ゼノスは玉座のように置かれた椅子に座り、周囲を見渡す。
「守りやすい地形。」
「十分な設備。」
「白銀戦線がここを選んだ理由も理解できる。」
そして。
口元を歪める。
「だが。」
「今日からここは、俺達の場所だ。」
◇
「予想以上だったな。」
大剣を持つヴァルガが笑う。
「もう少し抵抗すると思っていた。」
バルドが槍を肩に担ぐ。
「いや。」
「奴らは弱くなかった。」
「だが。」
「守るものが多すぎた。」
ミレイアが静かに呟く。
「仲間。」
「拠点。」
「命。」
「全部を守ろうとしていた。」
リリアが小さく笑う。
「だから負けた。」
「力ある者が勝つ。」
「それが現実なのに。」
四天王達はそれぞれの言葉で、白銀戦線を評価する。
しかし。
そこに敬意はない。
あるのは。
勝者としての余裕だけだった。
「結局。」
ヴァルガが笑う。
「逃げたな。」
「最後まで戦う覚悟があると思ったが。」
バルドも笑う。
「拠点を捨てて撤退。」
「賢い判断ではある。」
「だが。」
槍を軽く回す。
「俺達からすれば、敗北だ。」
深淵の剣の構成員達から笑い声が上がる。
「白銀戦線も大したことないな。」
「要塞まで奪われるとは。」
その声が。
奪われた拠点に響く。
◇
拠点の外。
建物の周囲には。
奴隷プレイヤー達が立っていた。
「……。」
彼らは無言で警戒している。
しかし。
意思がないわけではない。
「……。」
「本当は、こんなことしたくない。」
小さな声。
「分かってる。」
「でも……逆らえない。」
彼らには考える力がある。
言葉も話せる。
ただ。
ゼノスによって。
行動だけを縛られている。
◇
「ヨミ。」
ゼノスが呼ぶ。
その隣。
狐獣人の少女が立っていた。
大鎌を持った少女。
虚ろな瞳。
何も映さない表情。
ヨミ。
「……。」
返事はない。
ゼノスは満足そうに笑う。
「本当に素直だ。」
「お前は特別だよ。」
ヨミは何も反応しない。
◇
その時。
ゼノスの横。
小さな檻があった。
中には。
幼い狐獣人の少女。
身体を小さく丸めている。
少女はヨミを見る。
震える声で。
「……お姉ちゃん。」
しかし。
ヨミは振り返らない。
何も感じない。
何も言わない。
少女の声だけが。
静かな部屋に響いた。
◇
王虎の牙の集落。
傷ついた仲間達。
疲労した表情。
そして。
悔しさを抱えた顔。
たるとが駆け寄る。
倒れそうになった仲間を支える。
「すぐに治療します!」
たるとは回復魔法を使う。
淡い光が広がる。
負傷した身体が少しずつ癒えていく。
しかし。
たるとの表情は晴れなかった。
◇
「サイオンは?」
ハヤテがすぐに聞く。
その声には焦りが混じっていた。
アイスは静かに答える。
「治療を優先している。」
「深手だが、命に別状はない。」
その言葉に。
ハヤテは少しだけ安心する。
しかし。
拳は強く握られたままだった。
俺は周囲を見る。
白銀戦線。
誰もが悔しさを抱えている。
「アイス。」
ゴウマが聞く。
「何があった。」
アイスは少し黙る。
そして。
静かに答えた。
「白銀戦線の拠点は。」
「奪われた。」
その言葉に。
周囲が静まる。
「……。」
ハヤテが俯く。
ガンテツも表情を険しくする。
「相手は。」
ゴウマが続ける。
アイスは答える。
「深淵の剣。」
「世界でも危険視されているPK軍団だ。」
「所属人数も多い。」
「だが。」
「問題は数じゃない。」
アイスの表情が険しくなる。
「ギルドマスターのゼノス。」
「そして四天王。」
「奴らは全員、アークスキルを持っている。」
皆が息を呑む。
「四人とも……。」
ガンテツが呟く。
「ああ。」
「通常のプレイヤーとは別次元の強さだ。」
「それだけじゃない。」
アイスが続ける。
「奴らは敗れたプレイヤーを従わせている。」
「なんてことを…。」
たるとが呟く。
アイスは頷く。
「意思はある。」
「話すこともできる。」
「だが。」
「ゼノスによって行動を縛られている。」
たるとの表情が曇る。
「そんな……。」
全員が俯く。
「だから。」
アイスは続ける。
「今回の戦いは難しかった。」
「敵が強かっただけではない。」
「戦いたくない相手を、攻撃しなければならない状況だった。」
皆が黙る。
「相手は。」
「そこまで計算していた。」
ハヤテが拳を握ったまま言う。
「今すぐ取り返しに行くべきじゃないのか?」
悔しさが滲んでいた。
俺も拳を握る。
だが。
アイスは首を振る。
「今は無理だ。」
「白銀戦線には負傷者がいる。」
「サイオンも深手を負った。」
「この状態で向かえば。」
「同じ結果になる。」
誰も反論できなかった。
◇
アイスは集落を見る。
「今、優先することは。」
「仲間の傷を癒すこと。」
「そして王虎の牙に迷惑をかける結果になってしまいすまない。」
アイスが頭を下げる。
たるとが両手を振り回す。
「迷惑だなんて思っていません!」
「私達は白銀戦線を仲間だと思っています!」
ゴウマが頷く。
「そうだな。気を遣わないでくれ。」
「それよりだ。」
「敵が次にここを狙ってくる可能性もある。」
「警戒を強める必要があるな。」
「はい。」
アイスも頷く。
◇
たるとは集まった仲間達を見る。
傷ついた白銀戦線。
悔しさを抱える王虎の牙。
それでも。
ここにいる全員が。
同じ想いを持っていた。
仲間を失いたくない。
帰る場所を守りたい。
「大丈夫です。」
たるとが言う。
「今は休んでください。」
「また立ち上がるために。」
小さな集落。
しかし。
そこには。
新たな敵を知った仲間達がいた。
次の戦いへ向けて。
準備の時間が始まる。
第12話でした!
今回は。
白銀戦線が守ってきた拠点が奪われるという、大きな敗北を描きました。
深淵の剣。
そして。
彼らが使う奴隷プレイヤー達。
ただ強いだけではない、相手の恐ろしさが少しずつ見えてきました。
しかし。
戦いはまだ終わっていません。
傷ついた仲間達。
奪われた拠点。
それでも。
守りたい場所があるからこそ、立ち上がることができます。
次回から。
王虎の牙と白銀戦線は、新たな脅威へ向き合っていきます。
お楽しみに!




