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第12話 奪われた拠点

白銀戦線の拠点。


そこに。


新たな旗が掲げられていた。


岩山を利用した天然要塞。


仲間達が守り続けてきた場所。


しかし。


今は。


深淵の剣の支配下にあった。



「勝利を祝おう。」


拠点内部。


ゼノスの声が響く。


その周囲には。


四天王。


そして。


構成員100名。


深淵の剣の仲間達が集まっていた。


「悪くない場所だ。」


ゼノスは玉座のように置かれた椅子に座り、周囲を見渡す。


「守りやすい地形。」


「十分な設備。」


「白銀戦線がここを選んだ理由も理解できる。」


そして。


口元を歪める。


「だが。」


「今日からここは、俺達の場所だ。」



「予想以上だったな。」


大剣を持つヴァルガが笑う。


「もう少し抵抗すると思っていた。」


バルドが槍を肩に担ぐ。


「いや。」


「奴らは弱くなかった。」


「だが。」


「守るものが多すぎた。」


ミレイアが静かに呟く。


「仲間。」


「拠点。」


「命。」


「全部を守ろうとしていた。」


リリアが小さく笑う。


「だから負けた。」


「力ある者が勝つ。」


「それが現実なのに。」


四天王達はそれぞれの言葉で、白銀戦線を評価する。


しかし。


そこに敬意はない。


あるのは。


勝者としての余裕だけだった。


「結局。」


ヴァルガが笑う。


「逃げたな。」


「最後まで戦う覚悟があると思ったが。」


バルドも笑う。


「拠点を捨てて撤退。」


「賢い判断ではある。」


「だが。」


槍を軽く回す。


「俺達からすれば、敗北だ。」


深淵の剣の構成員達から笑い声が上がる。


「白銀戦線も大したことないな。」


「要塞まで奪われるとは。」


その声が。


奪われた拠点に響く。



拠点の外。


建物の周囲には。


奴隷プレイヤー達が立っていた。


「……。」


彼らは無言で警戒している。


しかし。


意思がないわけではない。


「……。」


「本当は、こんなことしたくない。」


小さな声。


「分かってる。」


「でも……逆らえない。」


彼らには考える力がある。


言葉も話せる。


ただ。


ゼノスによって。


行動だけを縛られている。



「ヨミ。」


ゼノスが呼ぶ。


その隣。


狐獣人の少女が立っていた。


大鎌を持った少女。


虚ろな瞳。


何も映さない表情。


ヨミ。


「……。」


返事はない。


ゼノスは満足そうに笑う。


「本当に素直だ。」


「お前は特別だよ。」


ヨミは何も反応しない。



その時。


ゼノスの横。


小さな檻があった。


中には。


幼い狐獣人の少女。


身体を小さく丸めている。


少女はヨミを見る。


震える声で。


「……お姉ちゃん。」


しかし。


ヨミは振り返らない。


何も感じない。


何も言わない。


少女の声だけが。


静かな部屋に響いた。



王虎の牙の集落。


傷ついた仲間達。


疲労した表情。


そして。


悔しさを抱えた顔。


たるとが駆け寄る。


倒れそうになった仲間を支える。


「すぐに治療します!」


たるとは回復魔法を使う。


淡い光が広がる。


負傷した身体が少しずつ癒えていく。


しかし。


たるとの表情は晴れなかった。



「サイオンは?」


ハヤテがすぐに聞く。


その声には焦りが混じっていた。


アイスは静かに答える。


「治療を優先している。」


「深手だが、命に別状はない。」


その言葉に。


ハヤテは少しだけ安心する。


しかし。


拳は強く握られたままだった。


俺は周囲を見る。


白銀戦線。


誰もが悔しさを抱えている。


「アイス。」


ゴウマが聞く。


「何があった。」


アイスは少し黙る。


そして。


静かに答えた。


「白銀戦線の拠点は。」


「奪われた。」


その言葉に。


周囲が静まる。


「……。」


ハヤテが俯く。


ガンテツも表情を険しくする。


「相手は。」


ゴウマが続ける。


アイスは答える。


「深淵の剣。」


「世界でも危険視されているPK軍団だ。」


「所属人数も多い。」


「だが。」


「問題は数じゃない。」


アイスの表情が険しくなる。


「ギルドマスターのゼノス。」


「そして四天王。」


「奴らは全員、アークスキルを持っている。」


皆が息を呑む。


「四人とも……。」


ガンテツが呟く。


「ああ。」


「通常のプレイヤーとは別次元の強さだ。」


「それだけじゃない。」


アイスが続ける。


「奴らは敗れたプレイヤーを従わせている。」


「なんてことを…。」


たるとが呟く。


アイスは頷く。


「意思はある。」


「話すこともできる。」


「だが。」


「ゼノスによって行動を縛られている。」


たるとの表情が曇る。


「そんな……。」


全員が俯く。


「だから。」


アイスは続ける。


「今回の戦いは難しかった。」


「敵が強かっただけではない。」


「戦いたくない相手を、攻撃しなければならない状況だった。」


皆が黙る。


「相手は。」


「そこまで計算していた。」


ハヤテが拳を握ったまま言う。


「今すぐ取り返しに行くべきじゃないのか?」


悔しさが滲んでいた。


俺も拳を握る。


だが。


アイスは首を振る。


「今は無理だ。」


「白銀戦線には負傷者がいる。」


「サイオンも深手を負った。」


「この状態で向かえば。」


「同じ結果になる。」


誰も反論できなかった。



アイスは集落を見る。


「今、優先することは。」


「仲間の傷を癒すこと。」


「そして王虎の牙に迷惑をかける結果になってしまいすまない。」


アイスが頭を下げる。


たるとが両手を振り回す。


「迷惑だなんて思っていません!」


「私達は白銀戦線を仲間だと思っています!」


ゴウマが頷く。


「そうだな。気を遣わないでくれ。」


「それよりだ。」


「敵が次にここを狙ってくる可能性もある。」


「警戒を強める必要があるな。」


「はい。」


アイスも頷く。



たるとは集まった仲間達を見る。


傷ついた白銀戦線。


悔しさを抱える王虎の牙。


それでも。


ここにいる全員が。


同じ想いを持っていた。


仲間を失いたくない。


帰る場所を守りたい。


「大丈夫です。」


たるとが言う。


「今は休んでください。」


「また立ち上がるために。」


小さな集落。


しかし。


そこには。


新たな敵を知った仲間達がいた。


次の戦いへ向けて。


準備の時間が始まる。

第12話でした!


今回は。


白銀戦線が守ってきた拠点が奪われるという、大きな敗北を描きました。


深淵の剣。


そして。


彼らが使う奴隷プレイヤー達。


ただ強いだけではない、相手の恐ろしさが少しずつ見えてきました。


しかし。


戦いはまだ終わっていません。


傷ついた仲間達。


奪われた拠点。


それでも。


守りたい場所があるからこそ、立ち上がることができます。


次回から。


王虎の牙と白銀戦線は、新たな脅威へ向き合っていきます。


お楽しみに!

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