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第9話 戦いたくない敵

白銀戦線の拠点。


そこへアイス達が戻った時。


すでに戦いは始まっていた。


「……っ!」


遠くから聞こえる戦闘音。


岩山に囲まれた天然の要塞。


本来ならば、簡単に突破されるような場所ではない。


しかし。


拠点の周囲には、複数のプレイヤー達が押し寄せていた。


白銀戦線の部下が叫ぶ。


「敵が攻めてきています!」


アイスの表情が変わる。


「くそっ!」


予想していた事態。


だが。


戻ってきた時には、すでに戦闘は始まっていた。



白銀戦線の防衛線。


そこでは。


サイオンが一人、敵の前に立っていた。


「ここは通さないッス。」


空を駆けながら、敵の攻撃をかわす。


その動きは圧倒的だった。


しかし。


相手もただのプレイヤーではない。


敵の中でも特に強いと思われる二人。


大剣を担いだ大柄なプレイヤー。


そして。


槍を構えたプレイヤー。


二人とも、明らかに周囲のプレイヤーとは違う力を持っていた。


「強い……。」


ハヤテが戦場を見る。


「普通のプレイヤーじゃないな。」


俺も頷く。


「幹部クラス……かもしれない。」


だが。


サイオンは、その二人を相手に戦い続けていた。


圧倒的な速度で攻撃をかわし。


空中から反撃を繰り出す。


それでも。


サイオンの目的は勝つことではない。


時間を稼ぐこと。


仲間達を守るために。


「さすがだな……。」


ハヤテが呟く。


「一人であいつらを止めてる。」


俺は戦場を見る。


「サイオンがいなければ、もっと被害は出ていた。」


実際。


拠点への侵入は防げている。


防衛設備も機能している。


白銀戦線の力なら。


普通に戦えば、互角に戦えるはずだった。


だが――


「……。」


アイスは戦場を見て、表情を曇らせる。


理由は分かっていた。



「助けて……!」


「お願い……!」


「戦いたくない……!」


戦場に響く声。


そこにいたのは。


無理やり戦わされているプレイヤー達だった。


彼らは武器を持ち。


敵として向かってくる。


しかし。


その表情は苦痛に歪んでいた。


「やめてくれ!」


「俺達だって戦いたくない!」


「助けてくれ!」


白銀戦線のプレイヤー達は攻撃をためらう。


当然だった。


目の前にいるのは敵。


しかし。


本当に戦いたいと思っている相手ではない。


「くそ……。」


剣を握る手が震える。


「どうすればいいんだ……。」


倒せばいい。


そう簡単に言える状況ではなかった。



「これが狙いか。」


アイスが呟く。


敵の目的。


単純な戦力差ではない。


相手が攻撃しにくい状況を作り出すこと。


無理やり戦わされているプレイヤー達を利用し。


白銀戦線の動きを封じる。


「卑劣な戦い方だ。」


ハヤテが険しい表情を浮かべる。


俺は戦場を見る。


助けを求める声。


苦しそうな表情。


それを見て。


拳を握る。


「助ける。」


俺は呟く。


「全員。」



白銀戦線の拠点。


防衛戦は続いていた。


しかし。


最大の敵は。


目の前の強者ではない。


戦いたくない相手と戦わなければならない。


その状況そのものだった。


戦場はさらに激しさを増していた。


「来るぞ!」


敵プレイヤー達が一斉に押し寄せる。


白銀戦線のプレイヤー達も迎え撃つ。


しかし。


誰もが迷っていた。


目の前にいるのは敵。


それでも。


助けを求める仲間達だった。


「……。」


俺は戦場を見る。


迷っている暇はない。


「私が行く。」


「ガウ。」


アイスが呼び止める。


「無茶はするな。」


俺は小さく笑う。


「分かってる。」


「でも。」


「助けを求めているなら、放っておけない。」


その時。


前線から大きな音が響く。


「サイオン!」


ハヤテが叫ぶ。


サイオンは二人の強敵を相手に戦っていた。


しかし。


明らかに負担が大きい。


「俺が行く!」


ハヤテは刀を抜く。


《白夜》


その瞬間。


一気に戦場を駆け抜ける。


「速い……!」


敵プレイヤー達が驚く。


ハヤテは止まらない。


サイオンの隣へ到達する。


「助太刀するぜ。」


サイオンが笑う。


「助かるッス!」


二人は背中を合わせる。


一人では止められない敵。


しかし。


二人なら。



一方。


アイスが前へ出る。


迫ってくる奴隷プレイヤー達。


彼らは武器を構える。


「……。」


アイスが呟く。


そして。


手をかざす。


「《氷結領域》」


瞬間。


地面が凍りつく。


足元から広がる氷。


プレイヤー達の足を止める。


「な、なんだ……!」


「動けない……!」


氷は足元だけを包み込み。


彼らの動きを封じているだけだった。


「安心しろ。」


アイスは静かに言う。


「あなた達を傷つけるつもりはない。」



俺も前へ出る。


迫るプレイヤー。


振り下ろされる武器。


俺は一歩踏み込む。


攻撃を受け止めない。


流す。


力の方向を変える。


相手の体勢が崩れる。


その瞬間。


手刀。


「……っ。」


プレイヤーはその場に倒れる。


気絶。


それだけ。


俺は次の相手を見る。


「悪い。」


「少し眠っていて。」


襲いかかる攻撃をかわす。


相手の力を利用して倒す。


武器を奪う。


動きを封じる。


殺さない。


それが俺達の選択だった。


「なぜだ……。」


倒れたプレイヤーが呟く。


俺は答える。


「助けを求めていたからだ。」


「それだけだ。」



戦場。


ハヤテとサイオンは強敵を相手に戦う。


アイスは氷で敵の動きを止める。


俺は一人ずつ確実に無力化していく。


白銀戦線は少しずつ立て直し始めていた。


しかし。


その時。


戦場の奥。


一人の男が歩いてくる。


周囲のプレイヤー達が道を開ける。


「おいおい。聞いてた話とは違えじゃねぇか!」


俺はその姿を見る。


明らかに違う。


今までの敵とは。


存在感が。


その男が俺の後ろをみる。


男は笑う。


「面白いな。」


「力があるのに、甘い。」


その男は。


この戦場の中心人物だった。

第9話「戦いたくない敵」を読んでいただき、ありがとうございます!


今回は、これまでとは少し違う戦いを描きました。


強い敵を倒すだけなら、答えは簡単です。


でも。


目の前にいる相手が、本当は戦いたくないと思っているなら?


そんな状況で、ガウ達が選んだのは「倒す」ではなく「助ける」ことでした。


王虎の牙は、強さを求めるギルドではありません。


誰かを守るために力を使うギルドです。


そして今回の戦いでは、そんな彼らの考え方とは正反対の存在も姿を見せました。


次回。


王虎の牙と謎の敵、その思想がぶつかります。


お楽しみに!

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