第8話 迫る影
第7話の最後で現れた不穏な影。
今回は、その正体が少しずつ明らかになります。
王虎の牙が「仲間と暮らす場所」を作っている一方で。
その反対側では、別の考えを持つ者達が動き始めます。
新たな敵の登場です!
――朝。
王虎の牙の集落。
街作りが始まってから数日。
昨日までと変わらないようで。
少しずつ景色は変わっていた。
積み上げられた資材。
整えられた土地。
未来の住宅街になる場所。
まだ完成には程遠い。
それでも。
ここには確かな未来があった。
「今日も頑張りましょう!」
たるとの声が響く。
NPC達も。
仲間達も。
自然と笑顔になる。
そんな時だった。
「たるとさん!」
集落の入口から声が響く。
全員が振り返る。
そこにいたのは。
白銀戦線のプレイヤーだった。
「アイスさんはいますか!?」
その表情は険しい。
ただ事ではない。
「僕ならここにいる。」
アイスが前へ出る。
「何があった?」
白銀戦線のプレイヤーは息を整える。
「サイオンさんからの伝言です。」
「拠点周辺で、不審なプレイヤーを確認しました。」
その場の空気が変わる。
俺は静かに目を細める。
「不審なプレイヤー?」
「はい。」
「複数人いました。」
「こちらの拠点を調べるような動きをしていて……。」
アイスは黙って話を聞く。
「戦闘を仕掛けてきたわけではありません。」
「ですが。」
「明らかに普通の移動ではありませんでした。」
俺は考える。
(偵察……。)
ただ通り過ぎただけなら。
そんな報告はしない。
誰かが。
何か目的を持って動いているかもしれない。
「状況は分かった。」
アイスが口を開く。
「申し訳ないが。」
「一旦、拠点へ帰らせてもらう。」
たるとはすぐに頷いた。
「分かりました!」
「白銀戦線の皆さんが困っているなら、手伝います!」
「何かあれば言ってください!」
アイスは少し驚く。
王虎の牙は。
自分達の街作りで忙しいはずだ。
それでも。
迷わず助けると言う。
「……ありがとう。」
アイスは小さく笑う。
「本当に君達らしい。」
しかし。
たるとの表情は少し曇っていた。
「でも……。」
「アイスさん達だけで大丈夫かな。」
その言葉に。
俺はたるとを見る。
たるとは心配そうに白銀戦線の方向を見る。
「ガウ。」
「ハヤテ。」
「お願いしてもいいですか?」
意味はすぐに分かった。
俺は頷く。
「分かった。」
ハヤテも笑う。
「困ってる仲間を助ける。」
「それが王虎の牙だろ?」
たるとは嬉しそうに笑った。
「はい!」
こうして。
アイス達と一緒に白銀戦線の拠点へ戻ることになった。
◇
――深い森の奥。
人の気配がほとんどない場所。
そこには。
巨大な仮設拠点が存在していた。
テント。
武器置き場。
集められた大量の資材。
そして。
多くのプレイヤー達。
そこは。
《深淵の剣》のベースキャンプだった。
「おい!」
「次はどっちが勝つと思う?」
「俺は右だな!」
「いや、左だろ!」
広場の中心。
そこでは。
二人のプレイヤーが戦わされていた。
片方は剣。
片方は槍。
しかし。
二人の表情には余裕がない。
これは戦いではない。
見世物だった。
「もっとやれ!」
「まだ終わるなよ!」
周囲のプレイヤー達は笑いながら見ている。
勝敗に賭けながら。
弱者が苦しむ姿を楽しんでいた。
◇
その様子を。
少し離れた場所から見ている者達がいた。
五人。
《深淵の剣》の頂点に立つ者達。
その中心。
椅子に座る男。
ゼノス。
そして。
その隣には四人の幹部がいた。
「相変わらず趣味が悪いですこと。」
そう言ったのは。
第四席。
リリア。
彼女は笑顔のまま戦いを眺める。
第一席。
ヴァルガが豪快に笑う。
「細かいことはどうでもいい。」
「強い奴が上に立つ。」
「それだけだろ?」
第二席。
ミレイアは興味なさそうに呟く。
「騒がしいだけ。」
「でも。」
「弱い相手を支配する方が効率はいい。」
第三席。
バルドは黙ったまま。
広場の戦いを見ていた。
そして。
一言だけ。
「……無駄が多い。」
四人の言葉を聞きながら。
ゼノスは静かに笑う。
「価値観は違っても。」
「目的は同じだ。」
「強者が支配する世界を作る。」
その時。
「ゼノス様。」
一人のプレイヤーが駆け込んでくる。
偵察に向かっていた《深淵の剣》の構成員だった。
「報告があります。」
ゼノスは視線を向ける。
「話せ。」
プレイヤーは頭を下げる。
「白銀戦線の拠点を確認しました。」
「場所はマップ端。」
「周囲のプレイヤーの出入りも少なく。」
「岩山に囲まれた地形になっています。」
「天然の要塞になっており、防衛には非常に適した場所かと。」
ゼノスは少し考える。
「なるほど。」
「守るには良い場所ということか。」
そして。
口元を歪める。
「ならば。」
「奪う価値がある。」
ヴァルガが笑う。
「久しぶりに暴れられるってことか。」
ミレイアは静かに呟く。
「白銀戦線……。」
「どれくらい楽しませてくれるかしら。」
バルドは槍を手に取る。
「命令なら従う。」
リリアは楽しそうに笑った。
「新しい玩具が増えるかもしれませんね。」
ゼノスは立ち上がる。
「野郎共。」
「準備しろ!」
空気が変わる。
「白銀戦線の拠点を奪いに行くぞ。」
構成員達が声を上げる。
「おお!」
「やっと戦えるか!」
「楽しみだな!」
ゼノスは歩き出す。
「この世界は。」
「強者が支配するものだ。」
「弱者を守る場所など。」
「存在する価値はない。」
その言葉と共に。
《深淵の剣》は動き始めた。
第8話でした!
今回は《深淵の剣》が本格的に登場しました。
ゼノスや四天王など、今後関わってくる重要なキャラクター達です。
王虎の牙とは全く違う考えを持つ彼らが、これからどう動くのか。
そして、白銀戦線はどうなるのか。
次回もお楽しみに!




