第6話 建設開始
会議後。
王虎の牙の集落。
昨日までと変わらない景色。
畑。
家。
広場。
仲間達の笑い声。
しかし。
一つだけ違うものがあった。
集落の一角。
そこには、大量の資材が集められていた。
木材。
石材。
建築に必要な道具。
今日から。
ここは街を作る場所になる。
「よし!」
たるとが両手を握る。
「それじゃあ、始めましょう!」
王虎の牙の街作り。
最初の日が始まった。
◇
「まずは、作業場所を分ける。」
ゴウマが設計図を広げる。
「建築場所。」
「資材置き場。」
「作業する人達の動線。」
「無理をすれば事故につながる。」
「安全に進めることが一番大事だ。」
元警察官だったゴウマらしい。
勢いだけではなく。
全員が安心して作業できる環境を作る。
それが彼の役割だった。
「さすがゴウマね。」
リンファが微笑む。
「こういう時、本当に頼りになるわ。」
ゴウマは少し照れながら頭をかく。
「俺は戦うより、こういう方が向いているのかもしれんな。」
◇
最初に始まったのは。
城壁作りに必要な資材の運搬だった。
大量に積まれた石材。
普通なら何人もの人手が必要になる量。
しかし。
「任せろ!」
ガンテツが前へ出る。
「こういう仕事は俺の出番だ!」
ガンテツは拳を握る。
アークスキル。
《剛力解放》
発動。
瞬間。
熊獣人の巨体に、凄まじい力が宿る。
巨大な石材を軽々と持ち上げる。
「おお……。」
周囲から驚きの声が上がる。
ハヤテが笑う。
「相変わらず、とんでもない力だな。」
ガンテツは豪快に笑う。
「力ってのはな。」
「壊すためだけにあるんじゃねぇ!」
「こうやって、何かを作るためにも使えるんだ!」
その言葉に。
たるとは嬉しそうに笑った。
◇
「私も何か手伝えることを考えるね~。」
セリアが周囲を見る。
「でも……。」
「今ある魔法だけだと、少し不便かも~。」
アイスが首を傾げる。
「不便?」
セリアは頷く。
「うん。」
「じゃあ、作る~。」
セリアのアークスキル。
《幻想創造》
それは。
存在しない魔法を、新しく生み出す力。
セリアは目を閉じる。
必要な魔法。
効果。
使いやすさ。
それらを頭の中で組み立てる。
「できた~。」
「《建築補助》」
新たに生まれた魔法。
資材の固定。
細かな加工。
作業の補助。
街作りを助けるための魔法。
「……。」
アイスが驚く。
「本当に魔法そのものを作った?」
セリアは眠そうに頷く。
「うん。」
「欲しいものがなかったから~。」
ハヤテが苦笑する。
「それを普通にできるのがすごいんだけどな。」
◇
シズクは建設予定地を見る。
「ここには結界の準備をしておきます。」
たるとが尋ねる。
「街を守るためですか?」
シズクは頷く。
「はい。」
「でも、一番大切なのは。」
「皆さんが安心して暮らせることです。」
「帰ってきた時に、ここなら大丈夫と思える場所。」
「それを作りたいです。」
◇
俺は少し離れた場所から皆を見ていた。
作業をする仲間達。
笑いながら資材を運ぶNPC達。
昨日まで何もなかった場所が。
少しずつ変わっていく。
昔の俺なら。
こんな光景を見ることもなかった。
ただ強くなること。
生き残ること。
それだけを考えていた。
あの日。
たるとと出会うまではーー。
「ガウ!」
たるとの声。
振り返る。
「ガウも手伝ってくださいね!」
「分かってる。」
俺は小さく笑う。
「最初から、そのつもりだ。」
◇
夕方。
初日の作業が終わる。
完成したものは。
まだ少しだけ。
でも。
確かな一歩だった。
集落の一角には。
新しい形が生まれていた。
ここから。
もっと多くの人が暮らせる場所になる。
もっと多くの笑顔が集まる場所になる。
小さな集落は。
少しずつ。
街へ変わり始めていた。
第6話でした!
ついに王虎の牙の街作りが始まりました!
今までは仲間を集める物語でしたが、ここからは集まった仲間達と一緒に「帰る場所」を作っていく物語になります。
戦うだけじゃなくて。
作ること。
支えること。
一緒に暮らすこと。
それぞれのキャラクターが、自分にできることを見つけていくのも建国編の楽しみの一つです。
次回も、少しずつ変わっていく王虎の牙を楽しみにしていてください!




