第4話 街作りへの第一歩
白銀戦線の拠点。
その入口。
俺達は帰る準備をしていた。
今回。
王虎の牙へ向かうのはアイス。
目的は。
街作りへの協力。
そして。
王虎の牙がこれから作る場所を、自分の目で見るためだ。
「アイス。」
サイオンが声を掛ける。
「本当に俺が残るんスか?」
「あぁ。」
アイスは迷わず答える。
「この拠点の防衛を任せたい。」
「でも。」
サイオンは少し不満そうな顔をする。
「俺も王虎の牙の街作り、見てみたいッス。」
「気持ちは分かる。」
アイスは淡々と言う。
「だが、ここを手薄にするわけにはいかない。」
「それに。」
「先日の件もある。」
サイオンの表情が少し変わる。
「……あれッスか。」
「あぁ。」
アイスは頷く。
「君の力は、この拠点を守るために必要だ。」
その言葉に。
サイオンは少し笑う。
「そこまで言われたら仕方ないッスね。」
「任せてください。」
「何かあったら、すぐ連絡するッス。」
「あぁ。」
アイスは頷く。
こうして。
サイオンは白銀戦線の拠点に残ることになった。
◇
俺達は白銀戦線の拠点を出発した。
帰り道。
先頭を歩くのはアイス。
その隣にはたると。
後ろには俺達。
「それにしても。」
たるとが周囲を見る。
「本当にこの辺りは人が少ないですね。」
「元々、プレイヤーがあまり来ない場所だからな。」
アイスが答える。
「マップの端に近い。」
「さらに岩山に囲まれている。」
「わざわざここまで来る者は少ない。」
「だからこそ。」
「白銀戦線の拠点には向いている。」
たるとは納得したように頷く。
「なるほど……。」
その時。
アイスが岩山の方向を見る。
「ただ。」
「最近は少し気になることがある。」
ゴウマが反応する。
「気になること?」
「あぁ。」
アイスは静かに答える。
「この岩山の向こう側で。」
「PK軍団を見かけた。」
空気が少し変わる。
「PK……。」
たるとが小さく呟く。
俺は歩きながら説明する。
PK。
プレイヤーキラー。
同じプレイヤーを襲う者達。
この世界では。
モンスターだけが敵ではない。
ゲーム開始直後。
混乱した状況の中で。
他のプレイヤーを狙う者達が現れた。
理由は様々だ。
アイテムを奪う者。
強さを誇示する者。
ただ楽しむために他人を傷つける者。
中には。
集団を作り。
力で他のプレイヤーを支配しようとする者達もいる。
「危険な存在ね。」
シズクが呟く。
「そうね。」
俺は答える。
「普通のプレイヤーとは違う。」
「警戒は必要。」
「でも……。」
たるとは少し悲しそうな顔をする。
「同じプレイヤーなのに。」
「どうしてそんなことをするんでしょう。」
「……。」
俺は少し黙る。
理由なんて。
一つではない。
この世界で。
心が壊れる者もいる。
力を持ったことで変わる者もいる。
「たると。」
俺は見る。
「全員がそういう人間じゃない。」
「王虎の牙にいる皆が、その証拠。」
たるとは少し笑った。
「……そうですね。」
◇
「ただ。」
アイスが続ける。
「PK軍団の動向は気になる。」
「以前より活動範囲が広がっている可能性がある。」
ゴウマが頷く。
「街を作るなら。」
「防衛面もしっかりと考えた方がいいな。」
「そうだ。」
アイスは答える。
「だからこそ。」
「君達の街作りには協力する価値がある。」
たるとは拳を握る。
「はい。」
「みんなが安心して暮らせる場所にします。」
その言葉を聞きながら。
俺は岩山を見る。
まだ。
何かが起きているわけではない。
ただの目撃情報。
だが。
この世界で。
小さな違和感を見逃すのは危険だ。
王虎の牙は。
これから大きくなる。
守るものが増えるほど。
敵もまた。
増えていくのかもしれない。
◇
王虎の牙の集落。
俺達が戻ってきた頃には。
空は赤く染まり始めていた。
「もう夕方ですね。」
たるとが空を見る。
朝から白銀戦線を出発して。
色々な話をしながら戻ってきた。
思った以上に時間が経っていた。
「今日はここまでだな。」
ゴウマが周囲を見る。
「本格的な街作りは明日からにしよう。」
「そうですね!」
たるとは頷く。
「せっかくアイスさんも来てくれたんです。」
「今日はゆっくりしてもらいましょう!」
◇
集落へ入ると。
住民達が俺達に気付く。
「おかえりなさい!」
「アイスさんも一緒なんですね。」
「白銀戦線の方が来てくれたんですか?」
自然と人が集まる。
アイスは少し驚いたように周囲を見る。
「……。」
「何か?」
たるとが首を傾げる。
「いや。」
アイスは静かに答える。
「温かい場所だと思っただけだ。」
その言葉に。
たるとは嬉しそうに笑う。
「えへへ。」
◇
集会所。
全員が集まる。
王虎の牙の仲間達。
そして。
「皆さん!」
たるとが前へ出る。
「報告があります!」
全員が注目する。
「白銀戦線のアイスさんが。」
「街作りを手伝ってくれることになりました!」
「おお!」
歓声が上がる。
ゴウマも頷く。
「白銀戦線の経験は大きい。」
「街を作るなら、必要な知識だ。」
アイスは少し頭を下げる。
「こちらも。」
「君達が作る場所に興味がある。」
「協力させてもらう。」
その言葉に。
たるとは笑顔になる。
◇
その後。
夕食の時間になった。
いつもの食卓。
大きな机。
並べられる料理。
皆が集まる場所。
アイスは席につきながら。
周囲を見る。
「……。」
「どうしました?」
シズクが聞く。
「いや。」
アイスは少し考える。
「白銀戦線では。」
「食事は必要な時間だった。」
「体力を回復するため。」
「次の戦闘へ備えるため。」
「でも。」
周囲を見る。
笑っている皆。
料理を楽しむ皆。
「ここでは違うな。」
たるとが首を傾げる。
「違う?」
「あぁ。」
アイスは答える。
「楽しむために食べている。」
その言葉に。
たるとは笑う。
「はい!」
「ご飯は大事ですから!」
サイオンがいれば。
きっと。
「やっぱりたるとさんは食事好きッスね。」
と言っていただろう。
そんな光景が自然と想像できる。
◇
「アイスさん。」
たるとが声を掛ける。
「明日からよろしくお願いします!」
「あぁ。」
アイスは頷く。
「こちらこそ。」
「君達の街がどう変わっていくのか。」
「楽しみにしている。」
その夜。
王虎の牙には。
街作りに新しい協力者が加わった。
街作りに必要な知識。
防衛の経験。
そして。
新しい視点。
明日から。
いよいよ。
本格的な街作りが始まる。
今回は街作りへ向けた準備のお話でした。
しかし。
その一方で。
岩山の向こうには、不穏な影も見え始めています。
次回から、いよいよ本格的な街作りが始まります。
王虎の牙がどのように変化していくのか。
楽しみにしていただけたら嬉しいです。




