第3話 白銀戦線との再会
出発してから、数時間。
俺達は白銀戦線の拠点へ向かっていた。
今回の目的は、街作りのための視察。
そして。
以前、アイス達と交わした約束を果たすためだった。
攻略組として活動する彼らが、どんな場所を作り、どんな考えで拠点を運営しているのか。
それを知ることは、これから街を作る俺達にとって大きな意味がある。
「楽しみですね!」
たるとは歩きながら笑う。
「白銀戦線の拠点って、どんな場所なんでしょう。」
「攻略組の拠点だからな。」
ゴウマが答える。
「防衛面はかなり参考になるはずだ。」
「だな!」
ガンテツが豪快に笑う。
「俺も気になってたんだ!」
「攻略組の拠点がどんなもんかってな!」
バレットは周囲を警戒しながら歩いている。
相変わらず口数は少ない。
だが。
以前とは違う。
こうして誰かと一緒に歩いている。
それだけで変化していると思う。
「ガウ。」
たるとが俺を見る。
「どうしました?」
「……いや。」
俺は少しだけ周囲を見る。
「白銀戦線の拠点。」
「少し興味があるだけ。」
たるとは嬉しそうに笑った。
「ガウも楽しみなんですね。」
「……そうね。」
「楽しみ。」
口にすると。
少し恥ずかしい気もする。
◇
しばらく進むと。
景色が変わった。
森を抜ける。
その先に広がる草原。
そして。
さらに奥。
巨大な岩山が姿を現した。
「……。」
俺は足を止める。
岩山。
高くそびえる自然の壁。
その中央に。
一つの道が続いている。
「あれが白銀戦線の拠点です。」
ガンテツが目を細める。
「なるほどな。」
「こいつは……。」
「天然の要塞ってやつか。」
ゴウマも周囲を見る。
「敵が攻める場所を限定できる。」
「見張りもしやすい。」
「防衛にはかなり向いているな。」
俺も頷く。
この地形。
戦う側から見れば理想的だ。
敵が来る方向を予測できる。
少ない人数でも守りやすい。
「すごい……。」
たるとは目を輝かせる。
「でも。」
少しだけ首を傾げた。
「王虎の牙とは全然違いますね。」
その言葉に。
俺も同じことを思う。
王虎の牙は。
畑があって。
家があって。
食卓があって。
人が暮らす場所。
でも。
ここは。
戦う者達が生き残るための場所。
目的が違う。
「来たようだな。」
声が聞こえる。
岩山の入口。
そこに立っていたのは。
アイスだった。
たるとの顔が明るくなる。
「アイスさん!」
「お久しぶりです!」
「ようこそ。」
アイスは静かに頷く。
その隣。
いつもの明るい声が響く。
「本当に来てくれたッスね!」
サイオンだった。
「待ってたッスよ!」
「サイオンさんもお元気そうですね。」
たるとが笑う。
「もちろんッス!」
「案内するッス!」
相変わらず元気だ。
だが。
その表情には。
俺達を歓迎している気持ちが出ていた。
「では。」
アイスが入口を見る。
「白銀戦線へ。」
「案内しよう。」
俺達は。
岩山に囲まれた拠点へ足を踏み入れた。
◇
白銀戦線の拠点。
俺達はアイスの案内で、内部を見て回っていた。
最初に案内されたのは。
入口付近にある防衛設備だった。
「ここは?」
ゴウマが周囲を見る。
「見張り台だ。」
アイスが答える。
「敵の接近を早期に発見するための場所。」
「さらに。」
アイスが奥を指差す。
「侵入経路を限定している。」
岩山に囲まれた地形。
その上で。
少ない人数でも守れるように作られた配置。
無駄がない。
「なるほど。」
ゴウマが頷く。
「地形を最大限利用しているのか。」
「そうだ。」
アイスは答える。
「大規模な城壁を作るより。」
「自然の防壁を利用した方が効率がいい。」
ガンテツが笑う。
「こいつは面白ぇな。」
「王虎の牙とは全然違うな。」
アイスが静かに頷く。
「当然だ。」
「目的が違うからな。」
その言葉に。
俺は周囲を見る。
王虎の牙。
白銀戦線。
どちらも拠点。
でも。
目指しているものは違う。
◇
次に案内されたのは訓練場だった。
広い空間。
そこでは白銀戦線のメンバー達が訓練をしていた。
「すごい……。」
たるとが呟く。
「みんな真剣ですね。」
「攻略組だからな。」
アイスが答える。
「常に強くなければ生き残れない。」
その言葉に。
俺は少し考える。
白銀戦線。
ここは戦う者達の場所。
強さを求める場所。
でも。
王虎の牙とは違う。
優劣ではない。
目的が違うだけだ。
「ガウ。」
アイスが声を掛ける。
「何か思うところがあるようだな。」
「……。」
俺は少し考える。
「白銀戦線は。」
「強い。」
「でも。」
「王虎の牙とは違うと思った。」
アイスは頷く。
「そうだろうな。」
「君達は、強くなるために集まったのではない。」
「帰る場所を作るために集まった。」
その言葉に。
たるとが振り返る。
アイスは続ける。
「だから。」
「君達には君達にしか作れないものがある。」
たるとは少し驚いた顔をする。
そして。
嬉しそうに笑った。
◇
その後。
俺達は食堂へ案内された。
白銀戦線のメンバー達と一緒に食事をする。
「やっぱり大人数で食べるご飯はいいですね!」
たるとが嬉しそうに言う。
サイオンが笑う。
「たるとさんは本当に食事好きッスね。」
「はい!」
即答だった。
「みんなで食べるご飯は楽しいですから!」
その言葉に。
白銀戦線のメンバー達も笑う。
戦うためだけの場所。
そう思っていたが。
ここにも。
ここなりの日常がある。
◇
食事が終わった後。
たるとはアイスを見る。
「アイスさん。」
「お願いがあります。」
アイスは静かに見る。
「何だ?」
たるとは少し緊張しながら話す。
「私達。」
「街を作ろうとしています。」
「でも。」
「まだ分からないことがたくさんあります。」
たるとは拳を握る。
「防衛のこと。」
「街の仕組み。」
「もっと多くの人が安心して暮らせる場所を作るために。」
そして。
頭を下げた。
「白銀戦線の皆さん。」
「力を貸してもらえませんか?」
静かな時間が流れる。
サイオンが目を丸くする。
「街作りを手伝ってほしいってことッスか?」
「はい。」
たるとは頷く。
「お願いします。」
アイスは黙っている。
その表情からは考えが読めない。
やがて。
「……。」
「理由を聞こう。」
たるとは顔を上げる。
「理由?」
「なぜ我々なのか。」
アイスは続ける。
「君達には優秀な仲間達がいる。」
「なぜ我々に頼む?」
たるとは迷わなかった。
「アイスさん達だからです。」
「え?」
「強いからじゃありません。」
「前に一緒に戦って。」
「話をして。」
「この人達なら、私達が作りたい場所を分かってくれると思いました。」
「もちろん。」
「協力してもらう以上、それに見合う対価はお支払いします。」
その答えに。
アイスは少し目を細めた。
「……。」
サイオンが笑う。
「アイス。」
「これは断れないやつじゃないッスか?」
「サイオン。」
「はいッス。」
アイスは小さくため息を吐く。
しかし。
少しだけ笑っていた。
「分かった。」
「協力しよう。」
たるとの表情が明るくなる。
「本当ですか!?」
「あぁ。」
「ただし。」
アイスが続ける。
「我々にも条件がある。」
「条件?」
「君達が作る街に。」
「我々の本部を建てさせてほしい。」
たるとは目を丸くする。
「本部……ですか?」
「そうだ。」
アイスは頷く。
「ここの拠点は残す。」
「だが。」
「君達の街にも活動拠点を置きたい。」
「攻略組としての活動を続けながら。」
「君達の作る場所が、どんなものになるのか見てみたい。」
たるとは。
少しだけ驚いた後。
笑顔になった。
「はい!」
「ぜひお願いします!」
「一緒に作りましょう!」
その言葉を聞き。
俺は思う。
小さな集落だった場所が。
少しずつ。
大きな未来へ向かって進んでいる。
今回のお話では、白銀戦線の拠点を訪問しました。
王虎の牙とは違う。
攻略組として生き残るために作られた拠点。
それを見たことで、たると達は街作りに必要な新しい視点を得ることができました。
そして。
白銀戦線にも、王虎の牙の街作りへ協力してもらえることになりました。
それぞれ違う目的を持ったギルドが。
同じ未来へ向かって歩き始めます。
ここからさらに世界が広がっていきます。
次回も楽しんでいただけたら嬉しいです。




