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第30話 新たな一歩

今回で第1章は完結となります。


最初は小さな集落だった王虎の牙。


ただ生き残るためではなく。


「楽しく暮らせる場所を作りたい」


たるとのその想いから始まった場所は、少しずつ仲間が増え、大切な居場所へ変わっていきました。


バレット。


ガンテツ達。


白銀戦線。


モルフォ。


ノエル。


様々な出会いを経て、王虎の牙は新たな一歩を踏み出します。


第1章最後の話。


楽しんでいただけたら嬉しいです。

王虎の牙の集落。


ノエルが来てから、三日が経った。


最初の頃は。


「何か手伝えることはありませんか?」


「私にできることなら言ってください。」


そんな風に、少し遠慮していたノエルだったが。


今では。


「ノエルお姉ちゃん!」


「今日も畑手伝ってくれる?」


「うん!」


子供達に囲まれながら笑っていた。


「ノエルさん、その箱お願いできる?」


「どうぞ!」


NPC達の手伝いも自然にするようになっている。


水路の整備。


畑仕事。


家の修理。


戦闘ではなく。


日常の中で誰かを支える。


それもまた。


ノエルにとって大切な時間だった。


「……。」


ノエルはふと手を止める。


周囲を見る。


笑っている人達。


楽しそうに働く人達。


ここには。


不動の盾の時とは違う空気があった。


でも。


ここでは。


誰もが誰かを支えている。


「不思議です……。」


小さく呟く。


「守るって。」


「戦うことだけじゃないんですね。」


その姿を少し離れた場所から見ていたリンファが微笑む。



一方。


集落の中心。


たるとは一人、建物の前に立っていた。


「……。」


視線の先には。


増えた家。


広がった畑。


整備された水路。


最初に作った時とは比べものにならない。


小さな集落。


そう呼ぶには。


少しずつ大きくなりすぎていた。


「……。」


たるとは周囲を見る。


近くにあるガンテツ達の拠点。


友好ギルドの白銀戦線。


バレットとノエル。


少しずつ仲間が増えている。


嬉しい。


本当に嬉しい。


でも。


同時に。


「……足りない。」


小さく呟く。


家が足りない。


畑が足りない。


守る場所も。


これから増えていく人達を受け入れる場所も。


今のままでは限界がある。


「たるとちゃん?」


声に振り返る。


そこにはセリアがいた。


眠そうな顔。


いつものゆったりした雰囲気。


「どうしたの~?」


「何か考え事?」


「……。」


たるとは少し迷う。


でも。


セリアには隠せないと思った。


「この集落のことです。」


「集落?」


「はい。」


たるとはもう一度、周囲を見る。


「もっと大きくしたいんです。」


セリアは少しだけ目を開く。


「……街を作る?」


その言葉に。


たるとは黙る。


そして。


ゆっくり頷いた。


「……はい。」


「でも。」


「まだ迷っています。」


「私に、そんな大きなことを決められるのかなって。」


セリアは少し考える。


そして。


いつもの眠そうな顔で笑った。


「たるとちゃんらしいねぇ。」


「困ってる人がいたら助けたい。」


「だから、もっと助けられる場所が欲しい。」


「違う?」


たるとは目を丸くする。


「……。」


そして。


小さく笑った。


「違いません。」


その答えを聞いた瞬間。


たるとの表情が変わる。


迷いが消える。


「決めました!」


セリアが首を傾げる。


「?」


「皆を集めてもらっていいですか?」


その声には。


いつもの明るさだけではない。


ギルドマスターとしての覚悟があった。


「ここから先へ進むための話をします。」



突然の呼び掛けに、住民達が顔を見合わせる。


「何かあったのか?」


「緊急事態?」


NPC達が少しざわめく。


集会所。


いつもなら皆で食事をする時に使われる場所。


しかし。


今日は少し違っていた。


王虎の牙のメンバー。


ガウ。


ハヤテ。


ゴウマ。


リンファ。


シズク。


セリア。


そして。


バレット。


モルフォ。


ノエル。


さらに。


近くの拠点からガンテツ達、鉄球戦団のメンバーも集まっている。


集落で暮らすNPC達も全員揃っていた。


普段なら別々に生活している人達。


でも。


今日は同じ場所に集まっている。


「何の話だろうな。」


ハヤテが呟く。


「たるとのことだから、悪い話ではないと思うけど。」


リンファが微笑む。


ガンテツは腕を組みながら笑った。


「はっはっはっ!」


「嬢ちゃんが呼ぶなら面白ぇ話に決まってる!」


その隣でバレットは静かにたるとを見る。


いつもの笑顔。


でも。


今日は少しだけ違う。


覚悟を決めた顔だった。



静かになる。


たるとは一度深呼吸をした。


そして。


前へ出る。


「みなさん。」


「今日は集まってくれてありがとうございます。」


小さな体。


でも。


その声はしっかり届いた。


「私は。」


「この集落が大好きです。」


NPC達が顔を上げる。


「ここには、たくさんの笑顔があります。」


「みんなで畑を作って。」


「家を建てて。」


「一緒にご飯を食べて。」


「毎日を楽しく過ごしています。」


たるとは周囲を見る。


仲間達。


住民達。


大切な人達。


「でも。」


少しだけ表情を引き締める。


「最近、思うようになりました。」


「この場所を。」


「もっと大きくしたい。」


静寂。


そして。


たるとは言った。


「ここに。」


「街を作ります!」


一瞬。


時間が止まったようだった。


誰も言葉を発さない。


たるとは続ける。


「今よりもっと。」


「たくさんの人が安心して暮らせる場所にしたいです。」


「困っている人が来た時。」


「助けられる場所にしたいです。」


「誰かが帰ってきたいと思える場所にしたいです。」


その言葉に。


俺は小さく目を細める。


ハヤテは笑う。


ゴウマは静かに頷く。


リンファは優しく微笑む。


ノエルはたるとを見つめていた。


街。


今まで自分が守ってきたものとは違う。


でも。


同じだった。


守りたいものを増やす。


その想いは。


不動の盾にいた頃の自分と同じだった。


そして。


最初に声を上げたのは――


「はっはっはっ!!」


ガンテツだった。


ガンテツの豪快な笑い声が集会所に響く。


「やっぱりそう来たか!」


たるとが目を丸くする。


「え?」


ガンテツは腕を組み、大きく頷いた。


「最初に会った時から思ってたんだ。」


「嬢ちゃん達は、ただ生き残るためにここを作ったんじゃねぇってな。」


「だから。」


ガンテツは笑う。


「街作りなんて、今さら驚く話じゃねぇよ!」


「嬢ちゃんなら、いつか言うと思ってた!」


その言葉に。


集会所の空気が少しずつ変わっていく。



「俺も賛成だ。」


ゴウマが口を開く。


「今の集落は、もう小さな集落では収まらない。」


「人が増えれば、必要になるものも増える。」


「住居。」


「食料。」


「防衛。」


「簡単な話ではない。」


たるとは頷く。


「分かっています。」


「でも。」


「やりたいです。」


その真っ直ぐな言葉に。


ゴウマは小さく笑った。


「分かった。なら、俺達が支える。」


その言葉に。


たるとは嬉しそうに頷いた。


「私も手伝います。」


ノエルが立ち上がる。


全員が見る。


「私。」


「今まで守ることしかしてきませんでした。」


「仲間を守る。」


「それだけが、自分の役割だと思っていました。」


少しだけ間を置く。


「でも。」


ノエルは集落を見る。


笑っているNPC達。


一緒に暮らす仲間達。


「ここは。」


「守るだけじゃなくて。」


「一緒に作っていく場所なんですよね。」


たるとは笑顔で頷く。


「はい!」


「一緒に作りましょう!」


その言葉に。


ノエルも笑った。


「私もやります。」


白衣を着たモルフォが手をあげていた。


「皆さんには迷惑をかけましたし、研究所を作って頂いた恩があります。」


「それに。」


「私を受け入れてくれたこの場所が好きなんです。」


「俺もやる。」


バレットが短く言う。


「もうここには世話になってるからな。」


少し視線を逸らす。


「悪くない。」


「こういうの。」


ハヤテが笑う。


「素直じゃねぇな。」


「うるせぇ。」


「でもまあ。」


ハヤテも頷く。


「俺も賛成。」


「面白そうだしな。」


セリアは眠そうに手を上げる。


「私も~。」


「建築とか、色々手伝えるよ~。」


シズクも頷く。


「もちろんです。」


「たるとさん一人に任せるつもりはありません。」


リンファは優しく微笑む。


「この場所は、もうみんなの家だもの。」



そして。


集落の住民達を見る。


NPC達。


畑を作ってきた人達。


家を建ててきた人達。


水路を整備してきた人達。


一人の老人NPCがゆっくり手を上げた。


「わしらも。」


「手伝わせてくだされ。」


たるとの目が少し潤む。


「みんな……。」


「ありがとうございます。」



その日。


王虎の牙は新たな目標を掲げた。


小さな集落を。


街へ。


ただ生き残るための場所ではなく。


誰もが帰ってきたいと思える場所へ。


「みんなで作りましょう!」


たるとの声が響く。


「王虎の牙の街を!」


集会所の中に。


大きな拍手と笑顔が広がった。

30話でした!


そして。


これにて第1章完結です。


振り返れば、第1章は「仲間を集める物語」でした。


王虎の牙という小さなギルドが。


一人ではなく。


仲間と共に歩いていく場所になっていく。


そんな過程を書いてきました。


ガウ。


たると。


ハヤテ。


ゴウマ。


リンファ。


シズク。


セリア。


そして。


バレット、ガンテツ、ノエル、モルフォ。


それぞれ違う過去や想いを持った人達が集まり、一つの場所を作っていく。


それが王虎の牙の魅力だと思っています。


そして次回から。


第2章「建国編」が始まります。


今まで守ってきた小さな集落を。


もっと多くの人が帰ってこられる場所へ。


王虎の牙の新たな挑戦が始まります。


街作り。


新たな出会い。


新たな困難。


これからさらに広がっていくファンタズマ・ゲイトの世界を楽しんでもらえたら嬉しいです。


ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。


第2章もよろしくお願いします!

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