第3話 お姉さんの仕事
広場の片隅に、誰かが腰を下ろしているのが見えた。
近づいてみる。
「リンファ」
「あら、おかえりなさい」
穏やかな笑みを浮かべた女性。
リンファだった。
彼女の手には針と糸があり、膝の上に服が置かれている。
「裁縫?」
「ええ。先ほど子供が転んで、破いてしまったの」
そう言いながら、リンファは慣れた手つきで針を進めていく。
近くでは、NPCの子供たちが元気いっぱいに走り回っていた。
「元気なのは良いことだけれど、服は大切にしてほしいわね」
そう口にしながらも、リンファの表情には嬉しそうな色が浮かんでいた。
「ガウも座る?」
「私も少し休もうかな」
俺はリンファの隣へ腰を下ろした。
しばらくの間、布を縫う針の小さな音だけが静かに響く。
「怪我は?」
「ないよ」
「本当?」
「本当」
「食事は?」
「食べた」
「朝だけでなく、お昼もしっかり食べるのよ?」
「私、子供じゃないんだけど」
「ふふっ」
リンファが優しく笑う。
「でも、心配になるのよ」
「どうして?」
「だってガウ、無茶をしそうなんだもの」
否定はできなかった。
「ハヤテもそう言われているの?」
「言われているわ」
「ゴウマは?」
「もっと言われているわね」
思わず笑ってしまう。
少しだけ安心した。
「そういえば、それは誰の服?」
「ハヤテのよ」
「子供じゃないじゃん」
「木に引っ掛けて破いたの」
「子供みたいだな……」
「ちなみに、これはゴウマの服」
リンファは隣に置いてあった服を持ち上げる。
「それも破いたの?」
「力加減を間違えたらしいわ」
「ゴリラだな……」
リンファはくすくすと笑った。
「みんな、放っておくと無茶ばかりするのよ」
「大変だね」
「そうね」
リンファは少しだけ空を見上げた。
「でも、嫌いじゃないわ」
風が心地よく吹き抜ける。
遠くからは、子供たちの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
「ここ、いい場所になったわね」
リンファがぽつりと呟く。
俺も周囲を見渡した。
小さな家。
小さな畑。
小さな集落。
まだ何もない場所。
「うん」
自然と頷いた。
「悪くないと思う」
リンファは満足そうに微笑む。
「でしょう?」
少なくとも、今の俺たちには十分だった。
こんな穏やかな時間が、いつまでも続けばいい。
俺は、心からそう思った。
ここまで読んでいただきありがとうございました!
次回からは少しずつ物語も動き始めます。
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