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第28話 再会

熊型モンスターが消滅した後。


広いボス部屋には、静かな空気が流れていた。


「……。」


ノエルはまだ信じられないという顔をしていた。


一瞬。


本当に一瞬だった。


黒い煙が広がったと思った次の瞬間。


巨大な魔物の首が落ちていた。


「ガウさん……。今ののは…?」


「気にしなくで。」


「ただの戦い方の一つ。」


ノエルは納得しきれない表情だったが、今はそれ以上聞かなかった。


その時だった。


カツ。


カツ。


遠くから足音が響く。


全員がそちらを見る。


「誰か来ます。」


シズクが杖を構える。


だが。


聞こえてきた声は。


「ガウ!」


「いるのか!?」


聞き慣れた声だった。


「ハヤテ!」


俺が呟く。


やがて。


通路の奥から数人の姿が現れる。


先頭にいるのはハヤテ。


その後ろにはアイス。


そして白銀戦線のメンバー。


「無事だったか!」


ハヤテが笑う。


「ああ。」


俺も頷く。


「そっちは?」


「こっちも問題なし。」


ハヤテは周囲を見る。


「全員揃ってるみたいだな。」


アイスも安堵したように息を吐く。


「よかった。」


「転移後、連絡が取れなかったから心配していた。」


「ノエルさんも無事だったんですね。」


白銀戦線のメンバーが声を掛ける。


「はい!」


再会を喜んだ後。


俺たちはダンジョンの奥へ進むことにした。


ボス部屋の奥。


そこには巨大な扉があった。


「ここが最後か?」


ハヤテが扉を見る。


アイスが頷く。


「おそらく攻略後の通路だ。」


「行こう。」


全員で扉を開く。


その先には――


広い空間。


そして。


「やっと合流できた。」


聞き慣れた声。


「ゴウマさん!」


たるとが駆け寄る。


そこには。


ゴウマ。


バレット。


サイオン。


そして白銀戦線の別部隊のメンバーがいた。


「全員無事か。」


ゴウマが安心したように笑う。


「ああ。」


俺は頷く。


長かったダンジョン探索。


分断された仲間たち。


それでも。


ようやく。


全員が再び揃った。


全員が合流した後。


少しだけ休憩を取ることになった。


長いダンジョン探索。


突然の転移。


そして。


何度も続いた戦闘。


誰もが疲れていた。


そんな中。


ゴウマがノエルへ近付いた。


「ノエル。」


「はい。」


呼ばれたノエルが振り返る。


ゴウマは少しだけ黙った後。


腰に下げていた袋を取り出した。


「これ。」


「受け取ってくれ。」


ノエルが首を傾げる。


「……これは?」


ゴウマは袋を開く。


中に入っていたものを見た瞬間。


ノエルの表情が変わった。


「……。」


そこにあったのは。


一本の剣。


一本の杖。


一本の弓。


そして。


小さな装飾が付いた短剣。


「どうして……。」


ノエルの声が震える。


ゴウマは静かに答える。


「道中で見つけた。」


ノエルは震える手で剣へ触れる。


見覚えがある。


忘れるはずがない。


「これは……。」


「私の仲間の……。」



この世界では。


プレイヤーが死ぬと、その身体は消える。


最初は残酷な仕様だと思った。


大切な仲間が消えてしまう。


何も残らない。


そう思っていた。


でも。


最後に持っていた武器だけは、その場に残る。


それは。


その人が最後まで戦った証。


残された仲間へ託された想い。


この世界では、それを遺品として扱っている。



ノエルは武器を握り締める。


冷たい金属の感触。


でも。


そこには確かに仲間の存在が残っていた。


「……。」


「ありがとうございます。」


ゴウマは小さく頷く。


「ああ。」


ノエルの目から涙が零れる。


「……みんな。」


「ごめんなさい……。」


「私……。」


言葉が続かない。


でも。


今まで胸の奥に溜め込んでいたものが、少しずつ溢れていく。


俺は視線を逸らした。


ゴウマも。


ハヤテも。


誰も声を掛けなかった。


今は。


泣く時間が必要だと分かっていたから。



しばらくして。


ノエルは涙を拭う。


そして。


大切そうに武器を抱えた。


「ありがとうございます。」


「拾ってくれて。」


「届けてくれて。」


ゴウマは首を横に振る。


「礼を言う必要はない。」


「ただ。」


少しだけ笑う。


「仲間の元へ戻っただけだ。」


その言葉に。


ノエルは小さく笑った。


「……はい。」


「大切にします。」


遠くでは。


たるとがその様子を静かに見守っていた。


「良かったですね。」


俺は頷く。


「ああ。」


ノエルはまだ一人だ。


でも。


もう。


一人で抱える必要はない。


ノエルが落ち着いた後。


俺たちは再び歩き始めた。


ダンジョンの出口へ向かうためだ。


長かった探索。


危険な戦闘。


仲間との再会。


色々なことがあった。


でも。


もう誰も一人ではなかった。



無事にダンジョンを抜ける。


外へ出ると、眩しい光が広がった。


久しぶりの青空。


自然と肩の力が抜ける。


「終わった……。」


白銀戦線のメンバーが呟く。


アイスも静かに頷いた。


「攻略完了だな。」


その言葉を聞いた瞬間。


たるとがぱっと顔を明るくする。


「あ!」


「そうです!」


全員がたるとを見る。


「皆さん!」


「よかったら……。」


少しだけ照れながら。


でも。


いつもの笑顔で言う。


「今から王虎の牙の集落に来ませんか?」


「え?」


全員が目を丸くする。


たるとは続ける。


「今回の攻略のお祝いです!」


「みんなでご飯を食べましょう!」


「ダンジョン攻略記念です!」


「お祝い……。」


ノエルが小さく呟く。


そんなもの。


自分にはもう縁がないと思っていた。


仲間を失って。


一人になって。


ただ生き残るために戦っていた。


でも。


目の前の少女は。


当たり前のように笑っていた。


「どうでしょう?」


たるとが首を傾げる。


「もちろん無理にとは言いません!」


「でも……。」


「一緒にご飯を食べたら、きっと楽しいです!」


アイスは少し考える。


「悪くないな。」


白銀戦線のメンバーも頷く。


「またうまいご飯だ!」


「ご褒美だ!」


アイスは小さく笑った。


「では。」


「お邪魔させてもらおう。」


「やった!」


たるとが嬉しそうに笑う。


その横で。


サイオンが手を挙げる。


「ちなみに。」


「ご飯って何が出るんスか?」


「……。」


一瞬の沈黙。


そして。


ハヤテが吹き出す。


「お前、そこかよ。」


「大事なことッス!」


サイオンは真顔だった。


たるとも笑う。


「いっぱい作りますね!」


その言葉に。


自然と笑顔が広がった。



帰り道。


ノエルは静かに歩いていた。


手には。


仲間達の遺品。


そして。


胸の中には。


小さな期待。


王虎の牙。


どんな場所なのだろう。


どんな人たちがいるのだろう。


まだ分からない。


でも。


少しだけ。


楽しみだった。


こうして。


新たな出会いは。


次の繋がりへ変わっていくのだった。

28話でした!


今回はノエルの過去と、仲間との再会が中心のお話でした。


失ったものは戻らないけど。


残された想いは、ちゃんと受け継がれていく。


そんな回にしたかったです。


そして最後は、王虎の牙らしくご飯のお誘いですw


次回は皆でワイワイご飯を食べます!


お楽しみに!

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