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第26話 鉄拳の援軍

ダンジョン内。


無数の足音が響いていた。


カサカサ。


カサカサカサ。


壁。


天井。


地面。


あらゆる場所から虫型モンスターが押し寄せてくる。


「多すぎないッスか!?」


サイオンが叫ぶ。


銀色の液体金属が周囲を飛び回る。


槍。


刃。


盾。


次々と形を変えながら、迫る魔物を撃ち落としていく。


「《流銀刃》!」


ヒュンッ!!


銀色の刃が飛ぶ。


数体の虫を貫く。


しかし。


倒した数以上に。


次から次へと湧いてくる。


「きりがないな。」


バレットは冷静に弓を引く。


ヒュンッ!


ヒュンッ!


正確な射撃。


一匹。


二匹。


確実に仕留める。


だが。


「……。」


矢筒を見る。


残りは少ない。


長期戦になれば不利。


「バレット。」


サイオンが横目で見る。


「まだいけるッスか?」


「問題ない。」


即答。


だが。


サイオンには分かっていた。


強がりだ。


「なら。」


サイオンは液体金属を広げる。


「僕ももう少し派手に行くッス。」


銀色の壁が展開される。


迫る虫を押し返す。


しかし。


その瞬間。


巨大な個体が現れた。


小型とは比べ物にならない大きさ。


鋭い爪。


硬い外殻。


「……。」


バレットが目を細める。


「厄介なのが来たな。」


サイオンも苦笑する。


「これはちょっと大変ッスね。」


巨大な虫が突進する。


ドォン!!


二人が迎撃する。


しかし。


数の差は大きい。


少しずつ。


押され始めていた。


「っ!」


サイオンの盾が砕ける。


「まずいッス。」


バレットが矢を放つ。


しかし。


別方向から虫が迫る。


「……!」


避けきれない。


その瞬間だった。


ドゴォォォン!!


洞窟の壁が爆発した。


土煙。


岩の破片。


全員が動きを止める。


「……。」


煙の向こうから。


一人の男が歩いてくる。


大きな身体。


落ち着いた表情。


拳にはメリケンサック。


「随分、派手にやってるな。」


低い声。


サイオンが目を丸くする。


「え?」


バレットも目を細める。


「ゴウマ。」


ゴウマは軽く首を鳴らした。


「戦闘している音が聞こえたからな。助けに来たぞ。」


その瞬間。


巨大な虫がゴウマへ襲い掛かる。


「危ない!」


白銀戦線のメンバーが叫ぶ。


しかし。


ゴウマは動かない。


ただ。


拳を構える。


「……。」


次の瞬間。


ドォン!!


一撃。


拳が巨大虫へ叩き込まれる。


凄まじい衝撃。


虫の巨体が吹き飛ぶ。


壁へ激突。


動かない。


静寂。


「……。」


「……。」


サイオンが固まる。


「今の……。」


バレットは小さく笑った。


「相変わらずだな。」


ゴウマはメリケンサックを整える。


「怪我はないか?」


「大丈夫ッス。」


サイオンが苦笑する。


「いや……。」


「今の方が驚きッスよ。」


白銀戦線のメンバーは言葉を失っていた。


壁を破壊して現れて。


巨大な魔物を一撃で倒す。


「王虎の牙……。」


誰かが呟く。


まだ無名の小さなギルド。


そう思っていた。


だが。


違う。


このギルドには。


一人ひとりが。


最前線で戦えるだけの力を持っている。


そんな事実を。


改めて思い知らされた。



しばらくして。


ノエルはようやく泣き止んだ。


赤くなった目。


少し乱れた呼吸。


それでも。


表情は先ほどより柔らかくなっていた。


「……すみません。」


ノエルが小さく頭を下げる。


「恥ずかしいところをお見せしてしまいました。」


たるとは首を横に振る。


「そんなことありません。」


「頑張ってきた証拠ですから。」


その言葉に。


ノエルは少しだけ目を伏せる。


「……ありがとうございます。」


俺はその様子を見ながら思った。


この人は。


ずっと一人で耐えてきたんだ。


ダンジョンに閉じ込められ、弱音を吐く暇がなかったんだと。


「少し休もう。」


俺が言う。


「この先も何があるか分からない。」


「はい。」


ノエルは頷いた。



小さな広間。


簡単に休憩を取る。


たるとがお茶を入れ、シズクが周囲を警戒する。


ノエルはその様子を静かに見ていた。


「……すごいですね。」


「何が?」


俺が聞く。


「皆さんの連携です。」


ノエルは少し笑う。


「私たちも、守る人と攻撃する人で役割分担をしていました。」


「でも。」


少しだけ寂しそうな表情になる。


「最後は私一人になってしまいました。」


その言葉に。


たるとがノエルの手を握る。


「でも。」


「ノエルさんは最後まで戦っていました。」


「それは、とてもすごいことです。」


ノエルは驚いた顔をする。


「……。」


「ありがとうございます。」


小さな声。


でも。


そこには少しだけ前向きな色があった。


休憩を終える。


「行きましょう。」


ノエルが立ち上がる。


大盾を背負う。


その姿には、もう迷いはなかった。


「この先に何がいるか分かりません。」


「でも。」


「今度は一人じゃありませんから。」


俺は少しだけ笑う。


「うん。」


シズクも頷く。


「油断は禁物です。」


「ですが。」


「一緒に進みましょう。」


「はい!」


ノエルが返事をする。


四人で洞窟の奥へ進んでいく。



しばらく歩く。


巨大な扉。


その先から感じる圧。


「……。」


俺は足を止める。


「どうしました?」


ノエルが聞く。


「いる。」


扉の向こう。


強大な気配。


シズクが杖を握る。


たるとも表情を引き締める。


そして。


ノエルは大盾を構えた。


「行きましょう。」


その声には。


もう迷いはなかった。


俺は扉へ手を伸ばす。


その先に待っているものは。


このダンジョンの主。

今回はゴウマの戦闘シーンと、ノエルとの交流がメインでした。


普段は頼れるまとめ役のゴウマですが、戦うと圧倒的な強さを見せてくれます。


そしてノエルも、少しずつ一人で抱えていたものを手放せるようになってきました。


次回はいよいよダンジョンボス戦!


バトルをお楽しみに!

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