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第25話 それぞれの戦い

「大丈夫?」


俺は《朧》を構える。


突然現れた狼獣人の少女。


ノエルは少しだけ驚いた表情を浮かべていた。


「でも……。」


「この魔物は……。」


視線の先にいるのは、一週間戦い続けた魔物。


防御力が高く、HPも高い。


何度も挑んだ。


何度も攻撃した。


それでも。


倒せなかった。


「私の攻撃では……。」


「分かってる。」


俺は短く答える。


「だから私が攻撃する。」


「あなたは守って。」


その言葉に。


ノエルは迷わなかった。


「はい!」


即答だった。


「それが私の役目です。」


大盾を構える。


それは、いつもの戦い方だった。


仲間が攻撃する。


自分が守る。


前に立って。


全てを受け止める。


それが《不動の盾》の戦い方だった。


「任せてください!」


ノエルは力強く言う。


「絶対に攻撃を受け止めます!」



巨大な魔物が咆哮する。


ギシャァァァッ!!


鋭い爪。


一週間、ノエルを苦しめ続けた相手。


しかし。


今は違う。


「来ます!」


ノエルが叫ぶ。


魔物が突進する。


ドォン!!


大盾を構える。


ガキィィィン!!


凄まじい衝撃。


足元が沈む。


それでも。


ノエルは動かない。


その隙に。


俺は動く。


《朧》が閃く。


しかし。


浅い。


外殻が硬い。


「……。」


俺は理解する。


正面からでは足りない。


必要なのは。


一瞬の隙。


「ねぇ!」


「はい!」


「もう一度だけ、攻撃を受けてもらっていい?」


ノエルは頷く。


「一瞬の隙を作ってほしい。」


「その間に、私が決める。」


ノエルは大盾を握り直した。


「分かりました!」


それは。


《不動の盾》で何度も繰り返してきた連携だった。


巨大な爪が振り下ろされる。


ドゴォォォン!!


大盾へ直撃。


しかし。


ノエルは倒れない。


「今!」


俺は走る。


《朧》が閃く。


狙うのは外殻の隙間。


「――そこ。」


一閃。


硬い外殻が裂ける。


緑色の体液が飛び散る。


「ギシャァァァッ!!」


魔物が怯む。


その隙に。


俺は《朧》を深々と突き刺した。


魔物は大きく揺れ。


そして。


ゆっくりと倒れた。



戦闘が終わる。


静寂。


ノエルは大盾を下ろした。


「……。」


「倒せた。」


小さく呟く。


俺は頷く。


「私はガウ。」


「王虎の牙というギルドに所属している。」


俺が名乗ると、ノエルも慌てて頭を下げた。


「私はノエルです。」


「ギルド《不動の盾》のギルドマスターをしています。」


「重装騎士です。」


「不動の盾……。」


シズクが呟く。


「聞いたことがあります。」


ノエルが少し驚く。


「知っているんですか?」


「防御に特化した有名なギルドだと。」


シズクは頷く。


「仲間を守る戦い方を貫いている、と。」


その言葉に。


ノエルは少しだけ俯いた。


「……はい。」


「それが、私たちの戦い方でした。」


たるとは優しく微笑む。


「素敵なギルドですね。」


その一言に。


ノエルの表情が少し揺れた。


「ノエルさん。」


たるとが近付く。


「少し、見せてもらってもいいですか?」


「え?」


たるとはノエルの傷を見る。


一週間。


限界まで戦い続けた身体。


傷だらけだった。


「ヒール」


淡い光がノエルを包む。


温かい。


痛みが消えていく。


そして。


たるとはノエルの手を握った。


「もう大丈夫です。」


その瞬間。


ノエルの表情が崩れた。


ずっと張り詰めていた。


仲間を失って。


一人で戦って。


それでも盾を構え続けた。


「……っ。」


涙が落ちる。


「う……。」


「うわぁぁぁぁん……!」


ノエルは泣いた。


初めて。


誰かの前で。


たるとは何も言わず、優しく抱き締める。


「大丈夫です。」


「もう一人じゃありませんから。」


不動の盾だった少女は。


初めて。


誰かに守られることを知った。



「……。」


暗い通路。


ゴウマは周囲を警戒しながら歩いていた。


隣には白銀戦線のメンバー二人。


槍使いの青年と、魔法職の青年だった。


「まさか、こんな形で分断されるとは……。」


槍使いが苦笑する。


「アイスさん達は無事でしょうか。」


「心配するな。」


ゴウマは落ち着いた声で答える。


「アイス達なら状況を判断して動いているはずだ。」


「俺達がやることは変わらん。」


一度、足を止める。


「生き残る。」


「そして合流する。」


その言葉に。


二人の表情が引き締まる。


「はい!」


その時だった。


ガサッ。


暗闇の奥から音が響く。


三人が同時に構える。


「来るぞ。」


次の瞬間。


巨大な魔物が姿を現した。


鋭い牙。


巨大な身体。


通路を塞ぐほどの大きさ。


「こいつは……。」


槍使いが息を呑む。


「下がってくれ。」


ゴウマが前へ出る。


「え?」


「俺がやる。」


メリケンサックを装備する。


白銀戦線の二人が驚く。


「一人で……?」


魔物が咆哮する。


ゴウマは拳を握る。


「問題ない。」


一歩。


踏み込む。


次の瞬間。


ドォン!!


拳が魔物の腹部へ叩き込まれた。


「……。」


「……。」


一瞬。


何が起きたのか分からない。


魔物の巨体が宙へ浮く。


そのまま。


壁へ叩き付けられる。


ドゴォォォン!!


魔物は動かなくなった。


沈黙。


「……え?」


槍使いが固まる。


魔法職の青年も目を丸くする。


「今の……。」


「一撃ですか……?」


ゴウマはメリケンサックを外す。


「大丈夫か?怪我はないな?」


二人は慌てて頷く。


「はい。」


「問題ありません。」


しかし。


理解が追いつかない。


王虎の牙。


まだ世界的には知られていない小さなギルド。


その中に。


これほどの実力者がいる。


白銀戦線の二人は、改めてその事実を思い知らされた。



一方。


別の通路。


アイスとハヤテ。


そして白銀戦線の仲間が進んでいた。


「静かだな。」


ハヤテが刀へ手を添える。


「油断するな。」


アイスが答える。


「こういう場所ほど危険だ。」


その時。


前方から魔物が現れる。


「来たか。」


ハヤテが笑う。


「俺が出る。」


「アイス、そいつを頼む。」


ハヤテの視線の先には、白銀戦線の斧使いの青年と弓使いの少女がいた。


「分かった。」


アイスが頷く。


「無理はするな。」


「分かってるって。」


ハヤテは刀を抜く。


《白夜》。


一瞬。


姿が消える。


「……。」


白銀戦線のメンバーが目を見開く。


次の瞬間。


魔物の背後。


一閃。


「ふぅ。」


魔物が崩れ落ちる。


「……。」


「……。」


沈黙。


アイスが小さく息を吐く。


「君も大概だな。」


「そうか?」


ハヤテは笑う。


「強い相手と戦えるなら楽しいだろ。」


アイスは呆れたように笑った。



その頃。


別の場所では。


銀色の光が洞窟内を照らしていた。


「数、多すぎないッスか!?」


サイオンの声が響く。


「……。」


バレットは静かに弓を構える。


「来るぞ。」


大量の魔物。


二人の前に。


次々と姿を現していた。

25話でした!


今回は分断されたみんなの戦いを描いてみました。


ノエルとの出会い、ゴウマやハヤテの戦闘シーンなど、それぞれ違った強さを見せる回になっています。


ゴウマ初の戦闘シーンです。


そして最後はバレット&サイオンのピンチで終了!


次回は二人の共闘がメインになります。


お楽しみに!

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