第24話 不動の盾
ノエルのちょこっとした深掘りになります。
他のキャラ達の深掘りもタイミングが良い時にします!
――私には、攻撃する力がない。
昔から、そう言われてきた。
「ノエルは前に出るだけでいい」
「倒すのは俺たちがやる」
仲間たちは、いつもそう言って笑っていた。
でも。
私だって、強力な魔法を放ちたい。
一撃で魔物を倒すような剣技が欲しい。
誰よりも目立つような力が欲しいと思ったこともある。
だけど。
私には、私にしかできないことがある。
「ノエル」
「はい」
「頼めるか?」
仲間から渡された言葉。
それはいつも同じだった。
「俺たちを守ってくれ」
「……任せて!」
私は盾を構える。
そして決めた。
どんな攻撃が来ても。
どんな敵が相手でも。
この盾だけは、絶対に折らないと。
◇
私たちのギルド。
名前は――『不動の盾』。
名前の由来は私の鉄壁と言われる大盾からだ。
私がギルドマスターを務め、仲間は四人。
役割は単純だった。
私が守る。
そして、仲間が倒す。
それが、私たちの戦い方。
私は大盾を構え、前に立つ。
巨大な爪。
鋭い牙。
強力な魔法。
全てを受け止める。
その隙に、仲間たちが攻撃する。
「ノエル!」
「大丈夫!」
「まだいける!」
仲間の声を聞くたびに、力が湧いてくる。
私は、この場所が好きだった。
守ることが。
仲間と戦うことが。
大好きだった。
◇
そして。
私たちは沼地のダンジョンへ挑んだ。
最初は順調だった。
いつも通り。
私が前に立つ。
仲間が攻撃する。
問題なんてない。
そう思っていた。
だけど。
このダンジョンは、普通ではなかった。
罠。
それは――転移罠だった。
足元が光る。
次の瞬間。
景色が変わった。
「……え?」
周囲には誰もいない。
「みんな……!」
必死に探した。
声を出した。
戦った。
そして。
やっとの思いで仲間の元へ戻った時には……
無情にもキルログが世界に流れたのだった。
◇
現在。
沼地のダンジョン。
私がこの場所に閉じ込められてから――
一週間。
食料は減った。
体力も限界に近い。
それでも。
私は盾を手放さなかった。
この盾を捨てた瞬間。
私は、私ではなくなる気がしたから。
目の前には、一匹の魔物。
決して強大な相手ではない。
でも。
私にとっては、相性が最悪だった。
「……毒が効かない」
私の片手剣に塗られた毒。
それは本来、時間をかけて相手を弱らせるためのもの。
攻撃力の低い私が、敵を倒すために身につけた戦い方。
一撃で敵を倒す力がないなら。
少しずつ削ればいい。
盾で攻撃を防ぎながら。
確実に勝利へ近づけばいい。
それが、私の戦い方だった。
でも。
このダンジョンの魔物には――
毒が通じない。
「……」
片手剣を握り直す。
何度も斬る。
少しだけ減る。
また斬る。
少しだけ減る。
終わりが見えない。
それでも。
私は盾を構える。
逃げない。
諦めない。
それが。
私の戦い方だから。
◇
どれくらい戦っただろう。
腕が重い。
足が震える。
それでも立つ。
「……まだ」
私は呟く。
「まだ、倒れたら駄目」
その時だった。
魔物が腕を振り上げる。
避けられない。
大盾を構える。
次の攻撃を受ける。
そう思った瞬間――
「ガウ!」
誰かの声が響いた。
次の瞬間。
黒い影が走り抜ける。
キィン!!
魔物の攻撃が受け流された。
私の目の前に、狼獣人の少女が立っている。
その手には、美しい黒い刀身。
「……」
狼獣人の少女は静かに魔物を見る。
そして。
「大丈夫?」
短い言葉。
でも。
その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥が熱くなった。
ずっと一人で守り続けた。
不動の盾でも。
私はいつも前に立っていた。
仲間を守ることが、私の役目だった。
でも。
初めてだった。
誰かが、私を守ってくれたのは。
「ありがとうございます!」
私は盾を構え直す。
片手剣を握る。
まだ戦える。
今度は、一人じゃない。
第24話「不動の盾」を読んでいただき、ありがとうございます!
今回はノエル回でした。
守ることに特化した重装騎士のノエルですが、実は攻撃力の低さを補うために毒を使うなど、ちゃんと考えて戦っているキャラクターです。
ずっと仲間を守る側だったノエルが、初めて守られる側になる。
そんな小さな変化を楽しんでもらえたら嬉しいです。
次回はガウとノエルの共闘!
二人の戦い方がどう噛み合うのか、お楽しみに!




