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202/207

第52話 明日の予定

翌日の日曜日。


午前十時過ぎ。


俺は電車の中にいた。


「…………」


窓の外を見る。


建物。


道路。


少しずつ変わっていく景色。


今日は《ファンタズマ・ゲイト》にはログインしない。


というか出来ない。


久しぶりに実家へ帰ることになった。


別に何かあったわけじゃない。


たまには帰ってこい。


そう言われただけ。


「…………」


スマホを見る。


まだ時間はある。


何となく《王虎の牙》のグループチャットを開く。


新しいメッセージ。


ハヤテ。


『今日こそ第二階層行こうぜ!!!』


「…………」


朝から元気だな。


たると。


『いいですね!』


セリア。


『行く~?』


シズク。


『私は大丈夫です』


リンファ。


『私も大丈夫よ』


マルコ。


『行ける』


ゴウマ。


『問題ない』


「…………」


全員行けるらしい。


俺以外。


文字を打つ。


『今日実家だから無理』


送信。


既読がすぐにつく。


ハヤテ。


『マジか!!!』


早い。


たると。


『今日はログイン出来ないんですか?』


『多分無理』


『そうですか……』


少しして。


ハヤテ。


『じゃあ第二階層どうする!?』


「…………」


どうするって。


俺がいなくても行けると思うけど。


『俺抜きでいってきて』


送る。


少し間が空いた。


ハヤテ。


『全員で行った方が面白いだろ!』


たると。


『そうですね!』


リンファ。


『じゃあ今度にしましょうか』


セリア。


『さんせ~い』


シズク。


『私もそれで大丈夫です』


ゴウマ。


『ああ』


マルコ。


『そうするか』


そして。


ハヤテ。


『また延期かああああああ!!!』


「…………」


うるさい。


文字なのに。


『ごめん』


『ガウのせいじゃねえよ!!』


すぐ返ってきた。


『来週行こうぜ!!!』


来週。


「…………」


まあ。


土曜日なら大丈夫だと思う。


『分かった』


送る。


『決まりだな!!!』


ハヤテ嬉しそう。


文字だけだけどなんとなく分かる。


「…………」


俺は少し笑う。



「ただいま」


「おかえり」


実家の玄関で靴を脱ぐ。


久しぶり。


といっても何年も帰ってなかったわけじゃない。


「ちゃんと食べてる?」


「食べてるよ」


「本当に?」


「多分」


「多分って何?」


「…………」


帰って早々。


これ。


「仕事は?」


「普通」


「忙しくない?」


「普通」


「ちゃんと寝てる?」


「普通」


「普通しか言わないじゃない」


「普通だから」


「…………」


見られる。


「何?」


「別に」


なんだろう。


まあいいか。


その日は昼飯を食べて。


話をして。


少し買い物にも付き合って。


夕飯も食べた。


普通に時間が過ぎていくのだった。



五日後の金曜日。


午後九時。


《ファンタズマ・ゲイト》にログインする。


「…………」


一週間も経ってないけど久しぶりな気がする。


日曜日は実家。


月曜日からは仕事。


今週は少し忙しくて帰るのも遅かった。


ログインしようと思った日もあったけど疲れて寝た。


結局。


あれから一度もログインしていない。


「…………」


村を見る。


変わってない。


当たり前だけど。


集会場に向かうと声が聞こえてくる。


「だから多めに持っていけばいいだろ!」


ハヤテ。


「多すぎます!」


たると。


「足りなくなるよりいいだろ!」


「持てません!」


「俺が持つ!」


「絶対途中で邪魔になるでしょう!」


「ならない!」


「なります!」


何してるんだろう。


扉を開ける。


「何してるの?」


全員が俺を見る。


「ガウ!!」


ハヤテ。


「久しぶりだな!!」


「五日くらいだけど」


「六日だ!!」


「数えてたの?」


「数えてねえ!」


「じゃあなんで分かるの?」


「…………」


「数えてた?」


「数えてねえ!!」


数えてたのか。


「ガウ!」


たるとが近付いてくる。


「お久しぶりです!」


「久しぶり」


「お仕事大丈夫でしたか?」


「うん。やっと落ち着いた」


「良かったです!」


「実家はどうだったの?」


リンファ。


「普通だったよ」


「何その感想」


「普通だったから」


「ガウらしいわね」


どういう意味?


「おかえり~」


セリア。


「おかえりなさい」


シズク。


「おう」


マルコ。


「ああ」


ゴウマ。


「…………」


おかえり。


「うん。ただいま」


なんとなく落ち着く。


いつもの集会場。


いつもの声。


いつものみんな。


「よし!!」


ハヤテが立ち上がる。


「ガウも来た!!」


「うん」


「これで全員だ!!」


「そうだね」


「明日行くぞ!!」


「どこに?」


「第二階層だよ!!」


「…………」


そうだった。


「忘れてたのか!?」


「忘れてないよ」


「今の間は絶対忘れてただろ!!」


「覚えてた」


「嘘つけ!!」


うるさい。


「ということで」


シズクがテーブルを見る。


色々置かれている。


回復薬。


状態異常を治す薬。


予備の道具。


地図。


ロープ。


明かりに使う道具。


他にも見たことのない消耗品がいくつか並んでいた。


「明日の準備をしていたところです」


「遠征するの?」


「そうです!」


たると。


「せっかく第二階層へ行くんですから、土曜日だけじゃなくて日曜日も遊びませんか?」


「なるほど」


向こうに二日間いるというより。


土曜日に第二階層へ行って。


夜になったら普通にログアウト。


日曜日にまた向こうへログインして続きを遊ぶ。


そんな感じらしい。


「第二階層だぞ!」


ハヤテ。


「分かってる」


「新しい街!」


「うん」


「新しい魔物!」


「うん」


「新しいクエスト!」


「うん」


ハヤテ楽しそう。


「ガウも手伝ってください」


たると。


「何を?」


「必要な物の確認です!」


見る。


テーブルの上。


かなり多い。


「これ全部?」


「ハヤテが持っていくって」


「何があるか分からないだろ!」


「多くない?」


「ガウまで!?」


多いと思う。


「回復薬が多すぎる」


マルコ。


「八人いるんだぞ!」


「だからといって全部持っていく必要はない」


「状態異常用の薬も種類が多すぎます」


シズク。


「毒!」


ハヤテ。


「はい」


「麻痺!」


「はい」


「睡眠!」


「はい」


「暗闇!」


「はい」


「呪い!」


「第二階層で呪いを使う魔物が確認されたという情報はありません」


「でも出るかもしれない!」


「その理屈で全部持っていく気ですか?」


「おう!」


「駄目です」


即答。


「ゲームなんだからアイテム持てるだけ持てばいいだろ!」


「所持枠を圧迫します」


「…………」


ハヤテが止まる。


「それは困るな」


急に納得した。


「現地で素材を拾えなくなりますからね」


「それはもっと困る!」


「だから減らすんです」


「なるほど!」


さっきまでの勢いはどこいった。


俺は空いている椅子に座る。


テーブルの端に紙が置かれている。


「これ何?」


「それは第二階層について調べたものです」


シズク。


「調べたの?」


「はい。 公式に公開されている情報と掲示板で共有されている情報を簡単にまとめました」


「すごい」


紙を見る。


第二階層。


第一階層とは違う地形。


出現する魔物。


いくつかの街や集落。


確認されているクエスト。


プレイヤーがよく通る場所。


注意した方がいい場所。


色々書いてある。


「シズクが全部?」


「たるとさんにも手伝ってもらいました」


「私は街を調べました!」


たると。


「街?」


「はい!」


別の紙を見せてくる。


街。


店。


広場。


宿。


武器屋。


防具屋。


道具屋。


それから。


料理。


「…………」


「第二階層には第一階層では売ってない料理もあるみたいですよ!」


「へえ」


食べても腹が膨れるわけじゃない。


ステータス上。


食事が必要なわけでもない。


ただ、味はちゃんとする。


だから食べ歩きを楽しんでいるプレイヤーも多い。


「これ美味しそうじゃないですか?」


「どれ?」


見る。


知らない料理。


説明だけじゃ味は分からない。


「食べてみたいかも」


「ですよね!」


嬉しそう。


遠征。


というより旅行の予定みたいだ。


「俺はこっちだな!」


ハヤテが別の紙を持ってくる。


魔物。


推奨レベル。


生息場所。


「この辺強そうじゃねえか?」


「行かないよ」


「なんで!?」


「最初から危ないところ行かなくていいでしょ」


「せっかく第二階層行くのに!」


「最初は普通に見て回ればいいじゃん」


「戦いにも行くんだよ!」


「聞いてない」


「今言った!」


「却下です」


シズク。


「早い!?」


「初めての階層です。 まず安全な場所から確認します」


「ゲームなんだからいいじゃん! 死んでもリスポーンするだけだろ!」


「装備の耐久値も減りますし、デスペナルティもあります」


「…………」


「それでも行きますか?」


「ちょっと考える」


ちゃんと考えるんだ。


「たると!」


「私は街を見たいです!」


「セリア!」


「わたしも街~」


「リンファ!」


「素材屋を見たいわね」


「マルコ!」


「まず周辺を見てからだ」


「ゴウマ!」


「危険な場所にわざわざ行く理由がない」


ハヤテが止まる。


最後に俺を見る。


「ガウ!」


「街見たい」


「全滅じゃねえか!!」


残念。


「でも」


たると。


「移動中に魔物が出てきたら戦いますよ?」


「おっ!」


「それでもいい!」


復活した。


早い。


「第二階層でしか手に入らない素材もあるでしょうし」


リンファ。


「私も少し戦いたいわね」


「だろ!?」


「素材が欲しいだけよ」


「理由はなんでもいい!」


楽しそうだな。


「魔法に使える素材もあるかな~」


セリア。


「ありそうですね」


シズク。


「楽しみ~」


「危険な実験はしないでくださいね」


「まだ何も言ってないよ~?」


「先に言っています」


「信用ない~」


「日頃の行いです」


「ひどい~」


「ガウは?」


たるとが聞いてくる。


「何したいですか?」


「俺?」


第二階層で何をしたいか考える。


「…………」


特にこれがしたいというものはない。


「適当に見て回りたいかな」


「適当ですか?」


「うん」


俺は紙を見る。


「街行って、歩いて、何かあったらやって」


「なるほど!」


たるとが笑う。


「いつも通りですね!」


「そうだね」


予定を立てて、その通りになったことあんまりない気がする。


「なら決まりですね!」


たると。


「まず第二階層に着いたら近くの街に向かいましょう!」


「おう!」


「そこで情報を集めて!」


「はい!」


「色々なお店を見て!」


「そうね」


「料理も食べて!」


「それも!」


「魔物と戦って!」


ハヤテ。


「それは状況次第です」


シズク。


「なんでだよ!」


「そして」


たると。


「面白そうなものがあったら寄り道しましょう!」


「結局それ?」


俺が言う。


「はい!」


即答。


まあ。


俺たちらしい。


「そういえば」


マルコ。


「村を空けることはロウガには伝えてある」


「もう?」


「ああ」


「明日の朝にも話すがな」


「村の人たちは大丈夫なの?」


たると。


「二日くらいなら問題ないと言っていた」


「良かったです」


「最近はプレイヤーも村に来ないしな」


「そっか」


俺たちが第二階層へ行っても村が大丈夫なら心配ない。


「じゃあ安心して行けますね!」


たると。


「ああ」


「よし!」


ハヤテ。


「準備続けようぜ!」


「さっきまで薬ばっかり準備してた人が言う?」


リンファ。


「大事だろ!」


「多すぎるのよ」


「念には念をだ!」


「所持枠」


シズク。


「減らします」


早い。


俺たちは準備を続ける。


回復薬。


状態異常用の薬。


予備の装備。


消耗品。


現地で使いそうな道具。


持っていく物。


置いていく物。


全員で確認する。


リンファは布や糸も持っていくらしい。


「向こうで何か必要になるかもしれないでしょう?」


「裁縫するの?」


「するかもしれないわね」


「第二階層でも?」


「糸と布くらいなら場所を取らないもの」


そう言いながらかなり持ってる。


「それ全部?」


「そうよ」


「多くない?」


「多くないわよ」


ハヤテと同じこと言ってる。


「何?」


「何でもない」


触れないでおこう。


セリア。


何かを鞄にこっそりと入れている。


「セリア」


シズク。


「なに~?」


「今、何を入れました?」


「何も~」


「見えていました」


「…………」


「出してください」


「実験道具~」


「置いていってください」


「なんで~!?」


「第二階層の探索に必要ありません」


「向こうで使うかもしれないよ~?」


「何にですか?」


「分かんない~」


「置いていってください」


「は~い」


何か取り出した。


金属。


瓶。


よく分からない道具。


「それ何?」


俺が聞く。


「試作品~」


「何の?」


「まだ決めてない~」


「…………」


決めてないのに試作品なの?


「知らない方がいいですよ」


シズク。


「そうだね」


セリアが残念そうにしてる。


ゴウマを見てみると荷物が少なく見えた。


「それだけ?」


「ああ」


「少なくない?」


「必要な物はある」


「回復薬は?」


「ある」


「状態異常用は?」


「最低限」


「それだけ?」


「ああ」


本当に最低限。


マルコも似たような感じ。


「二人とも少ないね」


「必要以上に持つ意味がない」


ゴウマ。


「足りなければ向こうで買えばいいだろ」


マルコ。


「それもそうか」


第二階層にも街がある。


店もある。


全部ここから持っていく必要はない。


そして。


ハヤテ。


多い。


まだ多い。


「何入ってるの?」


「色々!」


「色々って?」


「必要な物!」


「例えば?」


「…………」


「開けていい?」


「待て!」


遅い。


開ける。


回復薬。


解毒薬。


麻痺治療薬。


予備の剣用砥石。


投擲用の小物。


ロープ。


松明。


よく分からない道具。


「多い」


「必要だろ!」


「ロープ三本もいる?」


「一本切れたらどうする!」


「二本目使えば?」


「二本目も切れたら!?」


「三本目?」


「ほら必要だろ!!」


「…………」


なんか納得させられた気がする。


「あ」


たるとが覗く。


「ハヤテさん!」


「なんだ!」


「この回復薬、さっき置いていったはずですよ!」


「…………」


「戻しましたね?」


「戻してない」


「戻しましたね?」


「戻してない!」


「ハヤテさん」


「…………」


「出してください」


「嫌だ!」


「出してください!」


「嫌だ!!」


「出してください!!」


「…………はい」


たると強い。


しぶしぶ回復薬を取り出すハヤテ。


「心配性なんだよ!」


「ハヤテがですか?」


「悪いか!」


「悪くはありませんけど!」


意外。


もっと何も考えず突っ込むタイプだと思ってた。


「これだけあれば絶対大丈夫だろ!」


「その自信のために持っていってるんですね」


「おう!」


なるほど。


ハヤテなりの準備らしい。


俺も自分の持ち物を見る。


《朧》。


クナイ。


まきびし。


回復薬。


状態異常用の薬を少し。


リンファが作ってくれた服。


あとは、火薬玉。


「…………」


《煙幕操作》。


最近は少しずつ扱えるようになってきた。


火薬玉で煙を作って。


動かす。


集める。


薄くする。


前よりは思った通りに動く。


第二階層の魔物相手にも使えるかもしれない。


「こんなもんかな」


「少なくない?」


ハヤテ。


「ハヤテが多いんだよ」


「そんなことねえ!」


「回復薬減らされたからって怒らないで」


「怒ってねえ!」


怒ってる。


「ガウ」


リンファ。


「これも持っておきなさい」


渡される。


小さな布袋。


「何?」


「予備のクナイ入れ」


「作ったの?」


「余った布でね」


腰に付けられるらしい。


「ありがと」


「どういたしまして」


付けてみる。


邪魔にならない。


使いやすそう。


「いい感じ」


「でしょう?」


リンファ。


満足そう。


「俺のは!?」


ハヤテ。


「ないわよ」


「なんで!?」


「必要ないでしょう?」


「なんか欲しい!」


「子供?」


「違う!」


いつものやり取り。


セリアが笑って。


たるとも笑う。


シズクは荷物を確認して。


マルコは椅子に座っている。


ゴウマは地図を見ている。


「…………」


六日ぶりなだけなのに、ここに来ると落ち着く。



気付けば午後十一時を過ぎていた。


テーブルの上に広がっていた物もほとんど片付いた。


それぞれの持ち物も決まった。


「最終確認します!」


たると。


紙を見る。


「回復薬!」


「あります」


シズク。


「状態異常用の薬!」


「必要な分だけあります」


「地図!」


「ああ」


ゴウマ。


「予備の道具!」


「問題ない」


マルコ。


「糸と布!」


「あるわよ」


リンファ。


「それは必須なんですか?」


「私には必須よ」


「そうですか……」


「実験道具~」


セリア。


「置いていきます」


シズク。


「は~い……」


「武器!」


ハヤテが《白夜》と《黒曜》に手を置く。


「ある!!」


「それは見れば分かります!」


「よし!」


何がよしなんだろう。


「これで準備完了ですね!」


たると。


「おう!!」


ハヤテが勢いよく立ち上がる。


「明日は第二階層だ!!」


「やっとですね~」


セリア。


「長かったわね」


リンファ。


「本当に長かったです」


シズク。


「色々あったからね」


俺は椅子にもたれる。


色々。


というか寄り道ばっかりだった気もする。


最初はたるととハヤテに会った。


それから。


リンファと会って。


セリアとシズクと会って。


ゴウマが木を殴ってて。


北側を探索していたらマルコに襲われて。


マルコの案内で村まで来て。


村を拠点にして遊ぶようになって。


武器をダグラスに作ってもらって。


ギルド《王虎の牙》を作って。


買い物した帰りにゴウマと再開して。


集会場を作って。


ゴウマも村に来るようになって。


《王虎の牙》が八人になって。


隠しダンジョンを攻略したらスキルを手に入れて。


家を広げて。


リンファに服まで作ってもらって。


気付けばかなり時間が経っていた。


第二階層はずっと前に解放されていたのに。


俺たちはずっと第一階層にいた。


「…………」


本当に色々やったな。


「何笑ってんだ?」


ハヤテ。


「笑ってないよ」


「笑ってたぞ!」


「笑ってない」


「笑ってた!」


「見間違い」


「絶対笑ってた!」


うるさい。


「集合は何時にします?」


たると。


「朝七時!」


ハヤテ。


「早い」


俺。


「八時!」


「早い」


「九時!」


「それくらいなら」


マルコ。


「じゃあ九時だな」


ゴウマ。


「私も大丈夫です」


シズク。


「わたしも~」


セリア。


「私もいいわよ」


リンファ。


「俺も問題ない」


マルコ。


「じゃあ」


たるとがみんなを見る。


「明日の午前九時!」


「この村に集合です!」


「おう!!」


決まった。


明日。


土曜日。


午前九時。


全員でここを出る。


第一階層の中央まで向かって。


階層転送陣を使って第二階層へ行く。


今まで何度も行こうとして何か別のことをしていた。


でも。


今度は準備までした。


持っていく物も決めた。


集合時間も決めた。


最初に向かう場所も決めた。


今度こそ本当に行く。


「絶対寝坊すんなよ!」


ハヤテが言う。


「ハヤテが一番怪しいけど」


「俺は今日から起きてる!!」


「寝て」


「なんで!?」


「いや、きついでしょ」


「ハヤテさん」


たると。


「ちゃんと寝てください!」


「はい……」


素直。


「明日楽しみですね!」


たると。


「うん」


「第二階層ですよ!」


「うん」


「ガウは楽しみじゃないんですか?」


「楽しみだよ」


「本当ですか?」


「本当」


「全然そう見えません!」


「そう?」


「そうです!」


ハヤテも入ってくる。


「もっとテンション上げろよ!」


「第二階層だぞ!!」


「分かってるよ」


「新しい場所だぞ!!」


「分かってる」


「冒険だぞ!!」


「分かったから」


「ならもっと喜べ!」


「ハヤテが二人分喜んでるからいいよ」


「なんでだよ!!」


十分だと思う。


でも。


楽しみなのは本当。


第一階層だけでも色々あった。


なら。


第二階層では何があるんだろう。


誰と会うんだろう。


何をするんだろう。


「では」


たるとが立ち上がる。


「今日はもう遅いですしそろそろ終わりにしましょう!」


「おう!」


「明日早いものね」


リンファ。


「寝坊しないようにしないと~」


セリア。


「セリアもですよ」


シズク。


「大丈夫~」


「本当ですか?」


「多分~」


「…………」


シズクが見る。


「大丈夫~!」


言い直した。


マルコも立ち上がる。


「じゃあ、また明日だな」


「ああ」


ゴウマ。


「また明日ね」


リンファ。


「おやすみ~」


「おやすみなさい」


「じゃあな!」


ハヤテ。


最後にたると。


「また明日です!」


笑う。


「うん」


また明日。


第二階層楽しみだ。


寄り道もして。


くだらないことで騒いで。


気付いたら夜になってる。


そんな気がする。


俺はメニューを開く。


時間を見る。


午後十一時二十五分。


明日は九時集合。


少し早めにログインしよう。


《ログアウト》


押す。


視界が白くなる。


──────────


《ファンタズマ・ゲイト》から。


ログアウトが出来なくなるまで。


あと16時間35分。

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