↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
201/203

第51話 あと一週間

三日後。


土曜日。


《ファンタズマ・ゲイト》。


第三回大型アップデートが実施された。


第三階層から第十階層。


新しいクエスト。


新しいギルド機能。


新しい生活。


生産。


建築。


フィールド。


色々なものが一気に追加された。


そして。


第三階層が解放された。


第二階層の階層守護者を倒したプレイヤーたちはすぐに第三階層へ向かったらしい。


海外でも《ファンタズマ・ゲイト》が発売された。


プレイヤーはさらに増えた。


ギルドランキングも始まった。


《ファンタズマ・ゲイト》の世界は。


どんどん広がっていった。


そして。


時間は過ぎていった。



数週間後。


土曜日。


午前十一時過ぎ。


第一階層。


北側の村。


集会場。


「出来たわよ」


リンファが言った。


「何が?」


「これ」


ドサッ。


テーブルの上に置かれる。


布。


いや。


服?


一着じゃない。


いっぱいある。


「服?」


「そう」


リンファが笑う。


「みんなの分」


「みんな?」


「全員分よ」


「…………」


見る。


一。


二。


三。


四。


五。


六。


七。


八。


本当に八人分。


「ええっ!?」


たるとが立ち上がった。


「これ全部リンファが作ったんですか!?」


「そうよ」


「すごいです!」


「いつ作ったの~?」


セリアが服を覗き込む。


「少しずつよ」


「少しずつって……」


シズクも驚いている。


「八人分ですよね?」


「そうね」


「大変だったんじゃないですか?」


「楽しかったからいいのよ」


リンファ嬉しそう。


そういえば。


この前何作ってるのか聞いた時に秘密って言ってた。


「これだったんだ」


「そういうこと」


「全然教えてくれなかった」


「完成してからのお楽しみって言ったでしょう?」


言ってた。


「おお!」


ハヤテが服を持ち上げる。


「なんかカッコいいぞ!」


「雑に持たないで」


「はい」


怒られた。


「全員、少しずつ違うんですね」


たるとが服を見比べる。


「同じにしてもつまらないでしょう?」


リンファが一着ずつ広げていく。


全部。


和風。


でも同じじゃない。


「これはたるとね」


「私ですか!」


たるとの服。


柔らかそうな生地。


袖は少し広め。


動きやすそうだけど。


どこか巫女みたい。


虎耳と尻尾が邪魔にならないようにもなっている。


「可愛いです!」


「気に入った?」


「はい!」


尻尾が動いてる。


分かりやすい。


「これはセリア」


「わたし~?」


セリアの服。


長めの袖。


少し華やかで魔法使いっぽい。


「かわいい~!」


「袖は邪魔にならないようにしてあるから」


「魔法使う時も大丈夫~?」


「多分ね」


「多分なんですか?」


シズク。


「実際に使ってみないと分からないでしょう?」


「それはそうですが」


「じゃあファイアを~」


「集会場ではやめてください」


早い。


「シズクはこれ」


シズクの服。


落ち着いた形。


装飾も少ない。


でも。


《白晶》と合いそう。


「動きやすそうですね」


「シズクはそういう方が好きかなと思って」


「ありがとうございます」


「次」


リンファが大きめの服を持ち上げる。


「マルコ」


「俺か」


「体格が大きいから大変だったわ」


「悪かったな」


「褒めてないわよ」


「知ってる」


マルコの服は袖が邪魔にならない。


かなり実用的。


武人。


そんな感じ。


「いいじゃねえか」


「でしょう?」


「ありがとな」


「どういたしまして」


次。


もっと大きい。


「ゴウマ」


「俺もあるのか」


「だから全員分よ」


「そうか」


ゴウマの服。


マルコよりさらに動きやすさを重視している。


腕。


脚。


どちらも動かしやすそう。


「拳も蹴りも使うでしょう?」


「ああ」


「邪魔にならないようにしてあるわ」


ゴウマが服を見る。


少し触る。


「いいな」


「それだけ?」


「ありがとう」


「よろしい」


リンファ。


満足そう。


「俺のは!?」


ハヤテ。


「あるわよ」


「どれ!?」


「これ」


ハヤテの服。


羽織。


袴みたいな形。


腰には二本の刀を差せる。


《白夜》。


《黒曜》。


「おおおおお!!」


目が輝いた。


「侍じゃん!!」


「好きそうだと思って」


「好き!!」


即答。


「これで二刀流とか絶対カッコいいだろ!!」


「良かったわね」


「着替えてくる!!」


「まだ待ちなさい」


「なんで!?」


「全員分見せてから」


「早くしろ!!」


子供か。


「次」


リンファ。


自分の服。


「私」


「自分のも作ったんだ」


「もちろん」


リンファの服はみんなと同じ和風だけど少しだけ違う。


リンファが使う《華鋼》にも合っている。


袖も短め。


手甲を邪魔しない。


「似合いそうですね!」


たると。


「ありがとう」


そして。


残ったのは。


一着。


「…………」


リンファがこっちを見る。


笑う。


「最後」


「…………」


「ガウ」


やっぱり。


服を広げる。


黒を基調にした軽装。


袖も。


脚も。


動きやすそう。


腰回りには。


《朧》。


クナイ。


火薬玉。


色々なものを装備出来るようになっている。


狼耳。


尻尾。


そこもちゃんと邪魔にならない。


そして。


「…………」


「どう?」


「…………忍者じゃん」


「そうね」


「忍者じゃん」


「そうね」


二回言った。


「だってガウ、どんどん忍者みたいになってるじゃない」


「なってないよ」


「忍者刀」


「…………」


《朧》。


「クナイ」


「…………」


持ってる。


「まきびし」


「…………」


持ってる。


「火薬玉」


「…………」


持ってる。


「煙幕」


「…………」


使う。


「忍者ね」


「…………」


否定出来ない。


「似合うと思います!」


たると。


「絶対似合う~」


セリア。


「ガウは小柄なのでこういう軽装は合うと思います」


シズク。


「忍者!」


ハヤテ。


「うるさい」


「褒めてんだぞ!?」


「どこが?」


「全部!」


分からない。


「着てみましょう!」


たると。


「今?」


「今です!」


「全員で?」


「もちろんです!」


「俺もか?」


マルコ。


「全員です!」


「俺も?」


ゴウマ。


「全員です!」



少しして。


「おお……!」


ハヤテが自分の姿を見る。


「カッコいい!!」


「良かったわね」


リンファ。


「《白夜》と《黒曜》にも合う!」


二本の刀。


確かに似合ってる。


「たるとも似合ってるね」


「本当ですか!?」


「うん」


「えへへ」


嬉しそう。


セリアも。


シズクも。


リンファも。


マルコも。


ゴウマも。


それぞれちゃんと似合ってる。


そして。


俺。


「…………」


自分を見る。


黒い軽装。


腰に《朧》。


クナイ。


火薬玉。


「忍者だな!」


ハヤテ。


「言わないで」


「忍者ね」


リンファ。


「作った本人が言わないで」


「忍者ですね」


シズク。


「シズクまで?」


「忍者~」


「セリアも?」


「忍者です!」


「たると?」


最後。


マルコ。


ゴウマ。


二人を見る。


「忍者だな」


マルコ。


「忍者だ」


ゴウマ。


「…………」


「似合ってるんだからいいじゃない」


リンファが笑う。


「まあ」


嫌じゃない。


動きやすいし。


《朧》も抜きやすい。


クナイも取りやすい。


火薬玉も。


「…………」


使いやすい。


「気に入った?」


「まあまあ」


「良かった」


リンファが笑う。


「せっかく同じギルドなんだし」


「少しくらい統一感があってもいいでしょう?」


同じギルド。


見る。


八人。


同じ和風。


でも全員違う。


たると。


ハヤテ。


リンファ。


セリア。


シズク。


マルコ。


ゴウマ。


俺。


《王虎の牙》。


「なんかギルドっぽいな!」


ハヤテが言う。


「今までは違ったの?」


「今までもギルドだ!」


「じゃあ何が違うの?」


「雰囲気だ!」


「分からない」


「分かれよ!」


「でも」


たるとが笑う。


「本当にお揃いみたいで嬉しいです!」


「お揃いではないけどね」


リンファ。


「でも同じ感じです!」


「まあ、それくらいがいいでしょう?」


「はい!」


たるとが自分の袖を見る。


尻尾が揺れてる。


気に入ったらしい。


「よし!」


ハヤテ。


「せっかくだし、この格好で狩り行こうぜ!」


「今から?」


「今から!」


「昼飯は?」


マルコ。


「帰ってから!」


「腹減った」


「ゴウマまで!?」


「昼だからな」


「まだ十一時過ぎだぞ!」


「もう昼前だ」


「狩り!」


「飯」


「狩り!」


「飯」


「…………」


「…………」


二人が見合う。


「先に食べませんか?」


たると。


「賛成」


俺。


「私も~」


「私もです」


「私もお腹空いたわ」


「おい!!」


七対一。


「なんでだよ!!」


「お腹空いたから」


「新しい服だぞ!?」


「服は逃げないよ」


「そういう問題じゃねえ!!」


「では、午後一時に村に集合しましょう!」


昼食を食べに次々とログアウトしていく。


一人を除いて。


「みんな落ちるの早いだろ!!」



その日の夜。


午後十一時過ぎ。


「そろそろ落ちるか」


マルコ。


「俺もだ」


ゴウマ。


「明日は何します?」


たると。


「狩り!!」


ハヤテ。


「まだ言ってる」


「今日行けなかっただろ!」


結局。


あの後は狩りに行かなかった。


「ご飯食べて、その後別のこと始めたからね」


「誰だよ建築始めたの!」


「私です!」


たるとが手を上げる。


「知ってる!!」


リンファが笑う。


セリアも笑う。


シズクも。


マルコも。


ゴウマも。


俺も。


今日もいつも通り。


ログインして。


ここに来て。


みんなと遊んで。


くだらないことをして。


気付けば。


夜。


「じゃあ、また明日です!」


「おう!」


「また明日ね」


「おやすみなさい」


「おやすみ~」


「またな」


「ああ」


「うん」


メニューを開く。


《ログアウト》


押す。


視界が白くなる。


──────────


《ファンタズマ・ゲイト》から。


ログアウトが出来なくなるまで。


あと一週間。

よろしければ感想や評価、ブックマークで応援していただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。