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第50話 世界は先へ

数日後。


水曜日。


午後九時過ぎ。


《ファンタズマ・ゲイト》。


第一階層。


北側の村。


集会場。


「…………」


静かだ。


いつもより。


「ガウ、どうしました?」


「いや」


たるとがこっちを見る。


「静かだなって」


「そうですね」


今日は平日。


しかも水曜日。


ログインしているのは。


俺。


たると。


リンファ。


マルコ。


四人だけ。


ハヤテは仕事。


他のみんなも今日はまだログインしていない。


「平日だしね」


リンファはテーブルの上に糸を広げている。


指先が動く。


それに合わせて。


何本もの糸が浮かび上がる。


《操糸術》。


リンファはこのスキルを使って裁縫するのにハマっている。


「何作ってるの?」


「まだ秘密」


「また?」


「完成してからのお楽しみよ」


「ふーん」


気になる。


でも。


聞いても教えてくれないだろう。


「たるとは?」


「私はこれです!」


テーブルの上に紙が置いてある。


その紙には何か描いてある。


「何これ?」


「設計図です!」


「何の?」


「まだ決めてません!」


「設計図じゃないじゃん」


「これから決めるんです!」


順番が逆じゃない?


「土曜日のアップデートで新しい建築パーツが追加されますから!」


「ああ」


第三回大型アップデート。


あと三日。


新しい階層。


NPC。


クエスト。


ギルド。


生活。


建築。


フィールド。


色々。


たるとはその中でもやっぱり建築が一番気になるらしい。


「新しい屋根がですね!」


「この前聞いた」


「窓も!」


「聞いた」


「扉も!」


「それも聞いた」


「ちゃんと覚えてるじゃないですか!」


「聞かされたからね」


何回も。


「マルコさんは何してるんですか?」


たるとが聞く。


「ん?」


マルコは椅子に座っている。


「パトロールも終わったからな」


「今は何もしてねえ」


「暇なの?」


「暇だな」


「じゃあ一緒だ」


「お前も何もしてねえのか?」


「うん」


今日は特にやることを決めてない。


ログインして。


集会場に来て。


みんながいたからここにいる。


「そうか」


「うん」


「二人とも暇なら手伝ってください!」


たるとが紙を出してくる。


「何を?」


「一緒に考えましょう!」


「何を?」


「何を作るかです!」


「そこから?」


本当に何も決まってなかった。


「だったら――」


マルコが何か言おうとした。


その時。


――ピロン。


「ん?」


音。


目の前にウィンドウが表示される。


《WORLD ANNOUNCEMENT》


「何でしょう?」


たるともウィンドウを見ている。


リンファの手が止まる。


マルコも画面を見る。


そして。


文字が表示された。


《第二階層・階層守護者が討伐されました》


「倒されたみたいですね!」


たるとが声を上げる。


「第二階層の守護者?」


「そうみたい」


「早いわね」


リンファ。


「第二階層が解放されてから、まだそんなに経ってないわよね?」


「そうだね」


どれくらいだっけ。


分からない。


「攻略してる連中はすげえな」


マルコが言う。


「もう二階層終わったのか」


「終わったっていうのかな」


階層自体は残るし。


まだクエストとかもあるだろう。


でも。


先に進めるようにはなった。


ウィンドウに新しい文字。


《第三階層への進行条件が達成されました》


「第三階層!」


たるとが反応する。


さらに。


《第三階層は第三回大型アップデート実施後に解放されます》


「今週の土曜日ですね!」


「そうみたいだね」


あと三日。


大型アップデートと同時に第三階層が解放される。


「土曜日からすぐ第三階層に行けるのね」


リンファ。


「忙しそう」


俺が言う。


「楽しんでんだろ」


マルコが言う。


「攻略するのが好きな連中もいるだろうしな」


「そうだね」


攻略。


最速。


効率。


そういう遊び方。


俺も嫌いじゃない。


というか。


前まではそっちばかりだった。


でも今は。


「…………」


テーブルを見る。


たるとの何を作るかも決まってない設計図。


リンファの何を作ってるか教えてくれない裁縫。


暇だと言って座ってるマルコ。


そして。


何もしてない俺。


「どうしました?」


たると。


「何でもないよ」


「?」


「ハヤテがいたらうるさそうね」


リンファが言う。


「あ」


確かに。


「第二階層突破だぞ!!」


マルコが急に大きな声を出した。


「…………」


「…………」


「…………」


三人で見る。


「似てるだろ?」


ちょっと似てる。


「もっと大きな声じゃないですか?」


たると。


「そうか?」


マルコが息を吸う。


「第二階層突破だぞおおおお!!」


「うるさい」


「うるさいです!」


「うるさいわよ」


「お前らがやれって言ったんだろ!」


誰も言ってない。


「今頃仕事してるんですよね?」


たるとが言う。


「そうだね」


「知ったら喜びそうですね!」


「ログインした瞬間騒ぐだろうな」


「想像出来るわ」


出来る。


すごく。


――ピロン。


「あ」


今度はメッセージ。


誰?


メニューを開く。


ハヤテ。


『第二階層の守護者倒されたらしいぞ!!!!』


「…………」


「どうしたの?」


リンファ。


「ハヤテから」


見せる。


『第二階層の守護者倒されたらしいぞ!!!!』


「仕事中じゃねえのか?」


マルコ。


『土曜日から第三階層だってよ!!!!』


「仕事してください!」


たると。


『すげえな!!!!』


「仕事して」


俺が送る。


すぐ既読。


『休憩中だ!!』


「本当かな」


『本当だ!!』


「返事早いわね」


リンファ。


『土曜日楽しみだな!!!!』


「ビックリマーク多すぎ」


『楽しみだからな!!!!』


元気だな。


この場にいないのにうるさい。


「土曜日か」


マルコが呟く。


第三回大型アップデート。


新しい世界。


新しい機能。


色々なものが増える。


そして。


第三階層。


世界はまた少し広がる。


「楽しみですね!」


たるとが笑う。


「うん」


俺も少し楽しみ。


「じゃあ!」


たるとが紙を広げる。


「土曜日に何を作るか決めましょう!」


「まだ決めてなかったの?」


「今から決めます!」


「俺、帰っていいか?」


マルコが立ち上がる。


「ダメです!」


「何でだよ」


リンファが笑う。


俺も少し笑う。


第二階層の階層守護者が倒された。


第三階層への道が開く。


世界はどんどん先へ進んでいる。


俺たちは第一階層の村でのんびりと過ごしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


今回の第5章第50話でなんと通算200話になりました!


200話……。


自分でもびっくりしています。


最初はここまで長く続くとは全然思っていませんでした。


ガウたちが第一階層の小さな村でワイワイしていたところから始まって、気付けば建国したり、色々な人たちと出会ったり。


そして今は、少し時間を遡って《王虎の牙》が出来るまでのお話を書いています。


ここまで続けられたのは読んでくださっている皆さんのおかげです。


本当にありがとうございます!


まだまだガウたちの物語は続きます。


これからもガウたちが笑ったり、遊んだり、寄り道したりする姿を一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです!


今後とも『ファンタズマ・ゲイト』をよろしくお願いします!

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