第44話 隠しダンジョン
今日は日曜日の午前11時。
村の広場。
「よし!」
ハヤテが勢いよく立ち上がった。
「そろそろ第二階層に行こうぜ!」
「急ですね」
シズクが言う。
「行けるようになって結構経つだろ?」
「そうね」
リンファが頷く。
「私たちまだ第一階層にいるものね」
第一階層の守護者が倒されて、第二階層へ行けるようになった。
なのに。
俺たちはまだ一度も行っていない。
村で遊んだり。
買い物したり。
建物を作ったり。
「今日は全員いるしな!」
ハヤテが俺たちを見る。
俺。
たると。
ハヤテ。
リンファ。
セリア。
シズク。
マルコ。
そして。
「…………」
ゴウマ。
いる。
普通にいる。
村を拠点にして、北側を攻略しているらしい。
「ゴウマも行くだろ?」
ハヤテが聞く。
「俺もか?」
「せっかくいるんだし!」
「…………」
ゴウマが少し考える。
「ああ」
行くらしい。
「では、準備して――」
「皆さん」
声。
振り向く。
ロウガが立っていた。
「少しよろしいですかな?」
「はい!」
たるとが返事をする。
「どうしました?」
「実は皆さんにお願いしたいことがありましてな」
「村の東に洞窟があるのですが」
東。
何度か行ったことはある。
でも洞窟なんてあったっけ?
「少々分かりにくい場所にありましてな」
ロウガが続ける。
「昔から村の者もあまり近づかぬ場所なのです」
「なんで?」
ハヤテが聞く。
「魔物が多くてですな」
なるほど。
「最近になって、その洞窟の奥から魔物が出てくることが増えたのじゃ」
「それは危ないですね」
シズクが表情を変える。
「村まで来る可能性もあるってこと?」
リンファ。
「今のところはありませんがのう」
ロウガが俺たちを見る。
「ですが」
少しだけ間を置く。
「皆さんにならお任せ出来ると思いましてな」
「…………」
「お願い出来ますかな?」
たるとが俺たちを見る。
「行きましょう!」
早い。
「おう!」
ハヤテも早い。
第二階層また行けなかった。
まあ。
いいか。
「ゴウマは?」
俺が聞く。
「俺も行っていいのか?」
「いいよ」
「そうか」
ゴウマも来る。
…………あ。
「ゴウマ」
「なんだ」
「フレンド登録してない」
「…………」
ゴウマが俺を見る。
そういえばまだフレンド登録はしていなかった。
「する?」
「ああ」
ゴウマがメニューを開く。
…………。
「まだ慣れてないのか?」
ハヤテが覗き込む。
「うるさいな」
ゴウマがなんとか操作して申請された。
もちろんすぐに承認する。
《ゴウマとフレンドになりました》
「…………」
これでよし。
…………。
そういえば。
「ゴウマ」
「なんだ」
「ギルド入ってないよね?」
「ああ」
「…………」
最近ずっと村にいる。
マルコと手合わせしてる。
家の増築を手伝った。
一緒に飯も食った。
「いつもいるけどギルド入る?」
「…………」
ゴウマが黙った。
「軽っ!」
マルコが言う。
「駄目?」
「いや! 別にいいけどよ!」
「ゴウマさん!」
たるとが前に出る。
「私は大歓迎です!」
「私も~」
「もちろんです」
セリアとシズク。
リンファも笑う。
「もう今更って感じよね」
「入れ入れ!」
ハヤテ。
「…………」
ゴウマが俺たちを見る。
それから。
「ああ」
頷いた。
「よろしく頼む」
「おお!」
ハヤテが笑う。
「よろしくな!」
「よろしくお願いします!」
たるとも笑う。
マルコがメニューを操作して……。
《ゴウマがギルド《王虎の牙》に加入しました》
《王虎の牙》。
八人目。
「よろしく」
俺が言う。
「ああ」
ゴウマが頷く。
◇
村を出て。
東へ。
森の中を進む。
ロウガさんに教えてもらった道を辿る。
しばらくすると。
「ここか?」
ハヤテが足を止めた。
岩壁。
木々に隠れるように。
小さな穴が開いている。
「分かりにくいですね」
シズクが言う。
知らなかったら通り過ぎる洞窟。
俺たちは洞窟の中へ入った。
暗い。
セリアが魔法で明かりを作る。
少し進む。
その時。
ピコン。
「ん?」
目の前に表示。
《Hidden Dungeon》
《古き獣の洞窟》
「隠しダンジョン!?」
ハヤテの声が響く。
「うるさい」
「だって隠しだぞ!?」
「声が響いています」
シズクが注意する。
「おお……」
ハヤテが小声になった。
「隠しだぞ……!」
変わってない。
でも。
隠しダンジョンか。
こんなのもあるんだな。
「面白そうですね!」
たるとも楽しそう。
◇
洞窟の攻略は思ったより時間が掛かった。
魔物。
罠。
分かれ道。
また魔物。
宝箱。
行き止まり。
戻る。
また魔物。
「こっちじゃね!?」
「さっき通りました」
「マジ?」
ハヤテが迷う。
俺が先を見る。
マルコが後ろを警戒する。
シズクが攻撃を防ぐ。
たるとが回復。
セリアが魔法を撃つ。
リンファが手甲で魔物を殴る。
ゴウマも拳で殴る。
普通に八人で戦っていた。
大きな出来事でいえばハヤテが罠を踏んだぐらい。
たるとが洞窟に生えていたキノコを見て。
「食べられますかね?」
と言った。
やめた方がいいと思う。
そして。
どれくらい進んだのか。
大きな扉。
その前に俺たちは立っていた。
「ボス部屋っぽいな!」
ハヤテが笑う。
「どう見てもそうね」
リンファ。
扉がでかい。
「行くぞ!」
ハヤテが扉に手を掛ける。
「ちょっと待ってください!」
「ん?」
「みなさん、準備は大丈夫ですか?」
たるとが全員を見る。
HP。
MP。
装備。
確認。
「大丈夫ですね!」
「じゃあ行こうぜ!」
ハヤテが押す。
ゴゴゴゴゴ……。
扉が開く。
その先。
広い空間。
中央に何かいる。
四本足。
巨大な身体。
岩みたいな皮膚。
頭には二本の角。
ゆっくり立ち上がる。
「…………でか」
俺が呟く。
赤い目が開いた。
《Lv.18 岩角獣グラン・ホーン》
「レベル18か!」
マルコが杖を構える。
「今までより強そうね」
リンファも構える。
ゴウマが拳を握る。
「やるか」
「やる!」
ハヤテが二本の刀を抜く。
《白夜》。
《黒曜》。
「行くぞ!」
走る。
速い。
「待っ――」
ドンッ!!
「ぐおっ!?」
ハヤテが飛んできた。
早い。
「だから待ってって言ったのに」
「つええ!」
地面を転がりながら笑っている。
元気そう。
グラン・ホーンが地面を蹴る。
来る。
「シールド!」
シズク。
半透明の壁。
直後。
ドガンッ!!
「くっ!」
壁が揺れる。
「重い……!」
「マルコさん!」
たると。
「あいよ!」
マルコが杖を掲げる。
光。
身体が軽くなる。
マルコの支援魔法だ。
「ハヤテ!」
俺は走る。
反対側にはハヤテ。
「おう!」
グラン・ホーンが角を振る。
俺は屈む。
頭の上を角が通過。
懐に入る。
《朧》。
斬る。
ガキンッ!
硬い。
「硬っ!」
ハヤテも斬る。
傷は入る。
だが、浅い。
「魔法いくよ~!」
セリア。
「《ファイア》~!」
火球。
グラン・ホーンの背中で爆発。
「グオオオオオッ!!」
効いた。
振り向く。
「セリア!」
シズクが前へ。
「シールド!」
突進。
ドンッ!!
止める。
「今です!」
リンファが踏み込む。
《華鋼》。
拳を腹へ。
ドンッ!
「…………硬いわね」
「俺がいく」
ゴウマが入れ替わる。
踏み込み。
拳。
ドンッ!!
グラン・ホーンの身体が少し揺れる。
「…………」
リンファが見る。
「パワーを上げようかしら」
「来るぞ!」
マルコ。
グラン・ホーンが前脚を上げる。
地面を叩く。
ドンッ!!
「うわっ!」
足元が揺れる。
体勢が崩れた。
グラン・ホーンが突っ込んでくる。
俺じゃない。
たると。
「っ!」
「たると!」
間にシズク。
「シールド!」
壁。
ドガンッ!!
ひび。
「くっ……!」
もう一発。
角。
「シズクさん!」
たるとの回復。
光。
でも壁が割れる。
「下がれ!」
マルコが前へ。
杖で角を受ける。
「ぐっ!」
押される。
「ゴウマ!」
「ああ」
横からゴウマが角を掴む。
「…………!」
止めた。
「今だ!」
ハヤテが斬る。
俺も反対から斬る。
グラン・ホーンが暴れる。
「グオオオオオッ!!」
怒った。
身体。
赤い光。
「強化か?」
マルコが杖を構える。
次の瞬間。
「っ!」
突進。
避ける。
方向転換。
また突進。
速くなってる。
「シールド!」
シズクが防ぐがすぐに割れる。
「もう一枚!」
また防ぐ。
「シズクさん!」
たるとが回復。
「大丈夫です!」
セリアが魔法を撃つ。
リンファが隙を狙う。
マルコが支援。
ゴウマが正面から引きつける。
ハヤテが左右を走る。
俺は魔物を見る。
動き。
突進。
方向転換。
また突進。
速い。
でも。
同じ動きだ。
曲がる時、一瞬止まる。
「ハヤテ!」
「ん!?」
「あいつ曲がる時止まる!」
「おっけ!」
通じた?
グラン・ホーンが突進。
ゴウマへ。
ゴウマが避ける。
通過。
方向転換。
一瞬止まる。
「今!」
ハヤテが踏み込む。
《白夜》。
首を斬る。
深い。
「グオオッ!」
暴れる。
「まだ!」
俺も踏み込む。
《朧》。
同じ場所を斬る。
さらに傷。
「セリア!」
「は~い!」
「《ファイア》~!」
火球が傷口で爆発。
「グオオオオオオオッ!!」
効いてる。
「リンファ!」
「任せて」
踏み込み。
傷口へ拳。
ドンッ!!
グラン・ホーンがよろける。
「ゴウマ!」
「ああ」
拳。
同じ場所。
ドンッ!!
倒れない。
でも。
大きく揺れた。
「マルコ!」
マルコが走る。
杖を振りかぶる。
「おらぁ!」
ドンッ!
「グオオオオッ!」
まだ。
「たると!」
「私もですか!?」
違う。
「パワーはないですが任せてください!」
「ハヤテの回復!」
「あっ! はい!」
ハヤテのHPが減ってる。
「ヒール!」
ハヤテの体が光に包まれる。
「よし!」
ハヤテが腰を落とした。
低く。
低く。
構える。
「これで!」
ハヤテが地面を蹴る。
二本同時に傷口を斬る。
ザンッ!!
「グオオオオオオオ――!!」
巨大な身体が止まる。
そして。
光。
粒子。
消えていく。
「…………」
静か。
「…………勝った?」
たると。
ピコン。
《Hidden Dungeon》
《古き獣の洞窟》
《CLEAR》
「っしゃああああ!!」
ハヤテが叫んだ。
「結構強かったな」
マルコが座り込む。
「疲れたわね」
リンファ。
「でも楽しかったです!」
たるとが笑う。
ゴウマも座り込む。
「疲れた」
その時。
ピコン。
「ん?」
表示。
《特殊条件を達成しました》
《Rare Skillを取得しました》
「…………」
レア?
《Rare Skill》
《煙幕操作》
「何これ」
「俺も出た!」
ハヤテ。
「私もです!」
たると。
「こっちも~」
セリア。
全員?
ハヤテ。
《電光石火》。
リンファ。
《操糸術》。
シズク。
《防壁強化》。
セリア。
《魔術操作》。
たると。
《癒しの波動》。
ゴウマ。
《震脚》。
そして。
マルコ。
《能力分配》。
「レアスキルって書いてあるぞ!」
ハヤテが興奮している。
「アップデートに書いてあった、一部スキルの追加ってこれでしょうか?」
シズク。
「たぶん」
「糸を動かせるみたい」
リンファが指先を見る。
「裁縫が楽になりそうね」
やっぱり最初にそこなんだ。
「私は回復みたいです!」
たるとは嬉しそう。
「一度にみんなを回復出来るかもしれません!」
「俺のは……」
ゴウマが表示を見る。
「踏むらしい」
「踏む?」
ハヤテ。
「ああ」
ゴウマが地面を見る。
「やってみるか」
「ここで!?」
ドンッ!!
「うおっ!?」
揺れた。
ハヤテがよろける。
「…………使えるな」
「なんで普通に使えてんだよ!」
マルコが言う。
「マルコは?」
ハヤテが聞く。
「俺?」
マルコが自分の表示を見る。
「能力分配……?」
首を傾げる。
「自分の能力を他の奴に分ける……みたいだな」
「へえ!」
たるとが覗き込む。
「マルコさんらしいですね!」
「そうか?」
「はい!」
マルコが頭を掻く。
その時。
ピコン。
「ん?」
マルコが止まった。
「どうした?」
「いや」
表示を見る。
「また出た」
「何が?」
俺たちも見る。
《特殊条件を達成しました》
《Rare Skillの進化条件を満たしました》
「…………」
進化?
《Rare Skill》
《能力分配》
文字が光る。
「お?」
光が強くなる。
そして。
表示が変わった。
《Arc Skill》
《等価交換》。
「…………」
全員が黙る。
「…………アークスキル?」
俺が読む。
聞いたことがない。
「レアじゃなくなったぞ?」
ハヤテ。
「みたいね」
リンファ。
「なんでマルコさんだけなんでしょう?」
シズク。
「知らねえよ!」
マルコが言う。
「俺が一番聞きてえよ!」
セリアが楽しそうに表示を見る。
「進化したんだね~」
「俺のも進化する!?」
ハヤテが自分の表示を見る。
「どうやって?」
俺が聞く。
「知らん!」
だろうな。
「《等価交換》……」
たるとが読む。
「なんだかすごそうです!」
「名前だけじゃ分かんねえけどな」
マルコが自分の手を見る。
《Rare Skill》。
《Arc Skill》。
なんか。
よく分からないものが増えた。
第二階層に行こうとして。
ロウガに頼まれて。
洞窟に来て。
ゴウマがギルドに入って。
隠しダンジョンを攻略したら変なスキルまで手に入れた。
「…………」
今日も全然予定通りじゃない。
まあ。
いつものことか。
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