第42話 集会場
土曜日。
午前十時。
今日は第二回大型アップデートの日だ。
「おー!」
「増えてる増えてる!」
村の広場。
俺たちは全員でアップデート内容を確認していた。
俺。
たると。
ハヤテ。
リンファ。
セリア。
シズク。
そして。
マルコ。
《第二回大型アップデート》
第二階層への新規クエスト追加。
ギルド機能《拠点建築》追加。
裁縫。
鍛冶。
錬成。
その他、生活系コンテンツの拡張。
魔物の強さ。
出現率。
行動パターンの調整。
一部スキルの追加、調整。
その他。
細かい修正がいくつか。
「第二階層のクエスト受けようぜ!」
ハヤテが声を上げる。
「まだ内容確認してる途中だろ」
「後でも確認出来るじゃん!」
「そういう問題じゃない」
アップデート前から第二階層行きたがってたからな。
「裁縫も楽しみだわ」
リンファがメニューを見る。
「色々と作れる物も増えてるみたい」
「ほんとだ~」
セリアが覗き込む。
「錬成も面白そうだね~」
「セリアは変な物を作らないでくださいね」
「作らないよ~」
「…………」
シズク。
その顔は信用してないな。
俺もだけど。
「鍛冶も増えてんのか」
マルコが腕を組む。
「村の連中も喜びそうだな」
「ですね!」
たるとが大きく頷く。
そして。
メニューを閉じた。
「では!」
両手を握る。
「建築を開始しましょう!」
「なにを!?」
ハヤテ。
…………。
「たると」
「はい?」
「何を建てるか決めてなかったのか?」
「…………」
「…………」
全員が黙る。
決めてなかったらしい。
そもそも。
俺たちがギルドを作った理由は建築したかったから。
なのに何を建てるか誰も考えていなかった。
「とりあえず!」
ハヤテが手を上げる。
「訓練場!」
「却下」
「早くね!?」
「お前が暴れる場所になるだけだろ」
「いいじゃん!」
よくない。
「私は作業場があると嬉しいわね」
リンファ。
「裁縫も拡張されたみたいだし」
「私は~」
セリアが手を上げる。
「実験出来るお部屋~」
「却下です」
シズク。
「なんで~?」
「危険だからです」
「危なくないよ~」
「本当ですか?」
「たぶん~」
「却下です」
うん。
セリアのストッパーはシズクに任せよう。
「ガウは?」
「倉庫かな」
「現実的だな!」
荷物が増えてきたし。
普通に欲しいと思う。
「シズクは?」
「そうですね……」
少し考える。
「皆さんで話し合える場所があると便利ではないでしょうか?」
「話し合える場所?」
「はい」
シズクが広場を見る。
「私たちの家も狭いですし、大人数で集まれる場所がほしいですね」
確かに。
村には家がある。
畑がある。
でも。
大勢で集まれる建物はない。
「それなら!」
たるとが手を合わせる。
「集会場はどうでしょう!」
「集会場?」
「はい!」
村のみんなで集まれる。
話し合い。
食事。
雨の日。
何かあった時。
色々使えるかも。
「私たちだけで使う建物じゃなくて」
たるとが笑う。
「村の皆さんも使える建物にしましょう!」
「おー!」
ハヤテが頷く。
「そこで飯も食える?」
「もちろんです! 台所も作りましょう!」
「じゃあ賛成!」
飯で決めたな。
「私もいいと思うわ」
「私も~」
「私も賛成です」
「俺も」
マルコも頷く。
「ガウは?」
「いいんじゃない?」
倉庫はまた今度でいいや。
「決まりですね!」
たるとが嬉しそうに笑う。
「では早速!」
「待て」
マルコ。
「はい?」
「ここは俺たちの土地じゃねえぞ」
「…………」
「…………」
「…………あ」
たるとが気付いた。
「勝手に建てたら駄目だろ」
「そうですね!」
アップデート初日。
他人の村に勝手に建物を建てるところだった。
「ロウガさんに聞きに行きましょう!」
「おう!」
俺たちはロウガのところへ向かった。
◇
「集会場かのう?」
「はい!」
ロウガの家。
俺たちは集会場を建てたいことを説明した。
村のみんなが使える場所。
大勢で集まれる場所。
食事も出来る。
何かあれば話し合いにも使える。
一通り聞いたロウガは。
「ほっほっほ」
笑った。
「それはありがたいのう」
「いいんですか!?」
「もちろんじゃ」
「やった!」
たるとが喜ぶ。
「場所はどうしましょう?」
「そうじゃのう」
ロウガが少し考える。
「広場の端に空いておる場所があるじゃろう」
「あそこですか?」
「うむ」
広場の端。
少し開けた場所。
建物を建てるには十分な広さがある。
「好きに使ってくだされ」
「ありがとうございます!」
たるとが頭を下げる。
「それと」
ロウガ。
「はい?」
「村の者にも声をかけておこう」
「え?」
「せっかく皆で使う建物じゃ」
ロウガが笑う。
「皆で作った方が楽しかろう?」
「…………」
たるとが笑う。
「はい!」
◇
建築開始。
まず設計。
「えーっと……」
たるとが建築メニューを開く。
「ここをこうして……」
俺たちも覗き込む。
「入口ここ?」
「はい!」
「壁あるぞ」
「…………」
「…………」
「やり直します!」
大丈夫かな?
それから何度かやり直しをした。
「これならどうですか!」
「いいんじゃね?」
「広さも十分ね」
「問題ないと思います」
「いいと思う~」
俺も頷く。
「うん」
「じゃあこれでいきましょう!」
設計完了。
次は素材。
木材。
石材。
その他。
必要な物が表示される。
「結構いるな」
「村にも余ってる資材があるぞ」
マルコが言う。
「足りない分は取りに行けばいい」
「では!」
たるとが腕を上げる。
「皆さん!」
「おう!」
「頑張りましょう!」
建築が始まった。
木材を運ぶ。
「うおおおお!」
ハヤテ。
「走るな!」
「早い方がいいだろ!」
「落とすぞ!」
「大丈夫大丈夫!」
ガンッ!
「あ」
「…………」
「…………」
「大丈夫じゃなかった!」
ハヤテは大人なのに子供のようだ。
それからは、木を切る。
石を運ぶ。
柱を立てる。
壁を作る。
床を張る。
「ガウー!」
「何?」
「こっちお願い!」
「うん」
釘。
板。
金槌。
コン。
コン。
コン。
「…………」
意外と楽しい。
「ガウ上手ね」
リンファが隣から覗く。
「そう?」
「綺麗よ」
「技量上げてるからかな」
こんなところでも役に立つのか。
「じゃあこっちもお願い」
「増やさないで」
「得意な人に任せるのが一番でしょ?」
「…………」
俺の仕事が増えた。
ちくしょう。
「せーの!」
マルコが太い柱を持ち上げる。
「おお!」
ハヤテが反対側。
「こっちか!?」
「もう少し右だ!」
「こっち!?」
「そっちは左だ!」
「どっちだよ!」
「右だって言ってんだろ!」
「マルコから見て!?」
「俺から見てだ!」
「最初に言えよ!」
「普通分かるだろ!」
うるさいな。
「セリア」
「なに~?」
「何してるの?」
セリアが木材の前で杖を構えている。
「魔法で加工出来ないかな~って」
「やめてください」
シズクが即答。
「まだ何もしてないよ~」
「嫌な予感がします」
「大丈夫だよ~」
「燃やさないでくださいね」
「燃やさないよ~」
「…………」
「…………」
「なんで二人ともそんな目で見るの~?」
俺とシズク。
同じこと考えてたらしい。
その間にも村の獣人たちが集まってくる。
「木材はこっちでいいか?」
「はい! お願いします!」
「石持ってきたぞー!」
「ありがとうございます!」
大人たち。
子供たち。
みんな手伝ってくれる。
「ガウお姉ちゃん!」
「ん?」
「これ!」
小さな獣人の男の子。
両手で釘を持っている。
「持ってきた!」
「ありがと」
受け取る。
「もっといる?」
「うん。お願いするね」
「わかった!」
走っていった。
「走ると危ないよ!」
「はーい!」
…………。
まあ。
俺も言える立場じゃないか。
あっちではリンファが村の女性たちと話している。
内装。
窓。
布。
簡単な飾り。
「ここに付けたらどうかしら?」
「いいですね!」
「じゃあお願いするわ」
「はい!」
シズクは。
「そこ、少し傾いています」
「マジ?」
「はい」
「こっちは?」
「そちらもです」
「…………」
ハヤテ。
「俺、建築向いてないかも」
たるとは設計図を持って。
あっち。
こっち。
走り回っている。
「その木材はこちらです!」
「はい!」
「あっ! そこはまだです!」
「おっと」
「マルコさん! こちらお願いします!」
「おう」
「ハヤテさん!」
「はい!」
「それ触らないでください!」
「なんで俺だけ!?」
「壊すからです!」
「まだ一回しか壊してねえだろ!」
一回壊したのかよ。
昼に少し休憩。
そして。
再開。
木を組む。
壁を作る。
屋根を作る。
家具を運ぶ。
机。
椅子。
みんなで作り続ける。
そして。
夕方。
「…………」
俺たちは並んでいた。
目の前には木造の建物。
大きな入口。
窓。
中には長い机。
椅子。
大勢が入れる空間が完成した。
「…………」
「…………」
「…………」
ハヤテが口を開いた。
「いや」
「…………」
「出来るの早くね!?」
それな。
「朝から始めたんだぞ!?」
「ゲームですから!」
たるとが胸を張る。
「いやゲームでも早くね!?」
「建築システムってすごいわね」
リンファ。
「補助がかなり入っていましたね」
シズク。
「現実でやったら何日かかるんだろうな」
マルコ。
考えたくない。
「でも~」
セリアが建物を見る。
「ちゃんと出来たね~」
「うん」
俺も見る。
朝には何もなかったただの空き地。
そこに建物がある。
俺たちだけじゃない。
村のみんなで作った集会場。
「完成です!」
たるとが両手を上げる。
「やったー!」
「おおおお!」
村の子供たち。
大人たち。
歓声。
「よっしゃ!」
ハヤテが叫ぶ。
「宴会だ!」
「なんでそうなるんだよ」
「完成祝いだろ!」
「それなら……まあ」
「やりましょう!」
たるとが乗った。
◇
完成したばかりの集会場。
「かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
長い机の上には料理。
肉。
魚。
野菜。
スープ。
パン。
果物。
色々。
村の住民。
子供たち。
そして。
俺たち全員が同じ場所。
「うめえ!」
ハヤテが肉にかぶりつく。
「ハヤテさん、食べるの早すぎです!」
「労働の後の飯はうまいな!」
「みんなの分も残してくださいよ!」
「じゃあ早い者勝ちだ!」
「違いますよ!?」
元気だな。
「ガウ」
「ん?」
リンファ。
「これ食べる?」
「食べる」
「はい」
「ありがと」
「ガウ~」
今度はセリア。
「これも美味しいよ~」
「ちょ、待って」
「食べきれないんだけど」
「大丈夫だよ~」
何が?
「ガウお姉ちゃん!」
「今度は何?」
子供。
「こっち来て!」
「飯食べてから!」
「早くー!」
「はいはい」
落ち着かない。
あっち。
こっち。
笑い声。
話し声。
料理の匂い。
完成したばかりの集会場。
みんなが楽しそうにしている。
「ガウ!」
たるとが手を振る。
「何してるんですか!」
「今行く!」
立ち上がる。
その時。
ガチャ。
「ん?」
入口。
扉が開いた。
「…………」
一人。
大きな男が立っていた。
「…………」
全員が止まる。
そして。
全員が入口を見る。
「…………」
男が俺たちを見る。
「…………ゴウマ?」
「ゴウマ!?」
ハヤテが叫んだ。
勢いよく立ち上がる。
「なんでここにいんだよ!?」
「…………」
ゴウマが少しだけ首を傾げる。
「遊びに来た」
「本当に来たのかよ!?」
「来いと言っただろ」
「言ったけど!」
正論。
先週。
始まりの街で別れる時にハヤテが言っていた。
――北側に来ることあったら村に遊びに来てくれ!
…………。
本当に来た。
「ゴウマさん!」
たるとが立ち上がる。
「ちょうどいいところに来ました!」
「なんだ?」
「今日!」
集会場を指す。
「ここが完成したんです!」
「そうか」
「それで今、完成祝いをしていたところなんです!」
「そうか」
反応薄いな。
ハヤテが手招きする。
「ゴウマも食ってけ!」
「…………」
ゴウマが机を見る。
料理。
住民たち。
俺たち。
そして。
「いいのか?」
「もちろんです!」
たるとが笑う。
「どうぞ!」
「…………分かった」
ゴウマが中へ入る。
「お邪魔します」
「おお!」
ハヤテが隣の椅子を引く。
「ここ座れ!」
「ああ」
「肉食うか!?」
「食う」
「魚は!?」
「食う」
「お前なんでも食うな!」
「お前が聞いたんだろ」
「確かに!」
…………。
うるさい。
「ガウ!」
「何?」
「お前も早く来い!」
「うん」
俺も戻る。
完成したばかりの集会場。
村のみんな。
《王虎の牙》。
そして。
遊びに来たゴウマ。
「よーし!」
ハヤテが飲み物を持ち上げる。
「ゴウマも来たし、もう一回やるぞ!」
「またですか?」
「いいじゃん!」
「何をするんだ?」
ゴウマが聞く。
ハヤテが笑う。
「乾杯!」
「…………」
「ほら! ゴウマも!」
「…………分かった」
皆が飲み物を持つ。
俺も。
「じゃあ!」
ハヤテが大きく息を吸う。
「かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
新しく出来た集会場。
その中では笑い声が響き渡るのだった。
集会場が完成しました。
第一章から登場していた場所です!
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