第38話 王虎の牙
「ギルドを作りましょう!」
「…………」
「…………」
「…………」
「建築したいので!」
たるとが笑っている。
さっきまで次のアップデートについて話していただけだった。
それが。
どうしてこうなったんだろう。
「マルコさんも良いと思いますよね!」
たるとがマルコを見る。
「いや、待て」
マルコが口を開いた。
「はい?」
「なんで俺までその話に入ってんだ?」
「え?」
たるとが首を傾げる。
「マルコさんも入りますよね?」
「なんで確定なんだよ!」
「一緒に遊んでるじゃないですか!」
「まあ、そうだけどよ」
「それにマルコさんもこの村にいますし!」
「いるけどな!」
「じゃあ一緒に作りましょう!」
「話聞いてるか?」
押しが強い。
「嫌なの?」
俺が聞く。
「嫌とは言ってねえ!」
「じゃあいいじゃん」
「お前まで乗っかるな!」
でも。
嫌じゃないらしい。
「じゃあ決まりですね!」
「勝手に決めんな!」
たるとはもうメニューを開いていた。
ギルド作成。
前のアップデートで追加された機能。
俺たちは一度も触っていなかった。
「えっと……」
たるとが画面を操作する。
「まずメンバーを登録するみたいです!」
「じゃあ全員入れればいいだろ!」
ハヤテが言う。
「俺!」
「はい!」
「ガウ!」
「うん」
「リンファ!」
「もちろん」
「セリア!」
「入るよ~」
「シズク!」
「はい」
そして。
たるとがマルコを見る。
「マルコさん!」
「だから俺もかよ」
「はい!」
「…………」
諦めた顔。
「分かったよ」
「やった!」
たるとが嬉しそうに笑う。
そのまま。
マルコをメンバーに追加しようとして。
「…………あれ?」
「どうした?」
「マルコさんが出てきません」
「は?」
「候補にいないです」
マルコが眉を寄せる。
「お前ら」
「何?」
「俺とフレンド登録してねえだろ」
「…………」
「…………」
「…………」
「あっ」
たるとが声を出した。
「今気付いたのかよ!」
そういえばしてない。
何度も一緒に戦って。
何度も話して。
何度も特訓して。
最近はこの家にも普通にいる。
なのに。
まだフレンド登録はしていなかった。
「じゃあ今しましょう!」
「軽いな!」
たるとがフレンド申請を送る。
ピコンッ。
「俺も!」
ハヤテ。
「私も送るわ」
リンファ。
「私も~」
セリア。
「では、私も」
シズク。
そして。
「…………俺も」
送る。
ピコンッ。
ピコンッ。
ピコンッ。
ピコンッ。
ピコンッ。
「一気に送るな!」
マルコの前に通知が並んでいる。
「全部承認してください!」
「分かってるよ!」
順番に承認してくれた。
俺のフレンド欄。
そこに。
《マルコ》
名前が追加された。
「うん」
「いいね」
「もっとなんかねえのか?」
「何が?」
「いや……もういい」
諦めた。
「では!」
たるとがもう一度ギルド作成画面を開く。
今度はマルコの名前も候補に表示された。
「全員追加しました!」
「これで作れるのか?」
ハヤテが覗き込む。
「まだみたいです」
「次は何だ?」
「えっと……」
たるとが読む。
「ギルドマスターを設定してください」
「…………」
「…………」
「…………」
誰も喋らない。
「ギルドマスター?」
ハヤテが言う。
「誰がやるんだ?」
「言い出したたるとでいいんじゃない?」
「えっ!?」
たるとが俺を見る。
「私ですか!?」
「ギルド作りたいって言ったのたるとでしょ」
「そうですけど!」
「じゃあ決まりだな!」
ハヤテも乗っかる。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
たるとが慌てる。
「私、そういうの向いてないですよ!」
「そう?」
「はい!」
即答。
「じゃあ誰がやるんだよ」
ハヤテが周りを見る。
リンファ。
「私は遠慮しておくわ」
セリア。
「私もいいかな~」
シズク。
「私も向いているとは思えません」
俺。
「俺は嫌」
「即答かよ!」
面倒そう。
「じゃあ俺か?」
ハヤテが自分を指差す。
「もっと嫌」
「なんでだよ!」
「絶対適当だから」
「否定出来ねえ!」
出来ないんだ。
「…………」
全員。
自然と一人を見る。
マルコ。
「なんだよ」
「…………」
「なんだその目」
ハヤテが笑う。
「マルコでいいんじゃね?」
「は?」
「強いし!」
「理由それだけかよ!」
「あと面倒見いいし!」
「誰がだ!」
「いいじゃん」
俺も言う。
「よくねえ!」
「でも」
たるとがマルコを見る。
「私もマルコさんがいいと思います!」
「お前まで!」
「頼りになりますし!」
「それに強いです」
シズクも言う。
「ほら!」
「何がほらだ!」
「まとめ役には向いてそうね」
リンファ。
「マルコでいいと思う~」
セリア。
「満場一致だな!」
ハヤテが笑う。
「俺の意思どこ行った!?」
「反対一票」
俺が言う。
「賛成六票」
「多数決じゃねえだろ!」
「…………ったく」
マルコが頭を掻く。
「本当に俺でいいんだな?」
「はい!」
たると。
「おう!」
ハヤテ。
「問題ないわ」
リンファ。
「いいよ~」
セリア。
「お願いします」
シズク。
「よろしく」
「…………」
マルコがため息を吐いた。
「分かったよ」
決まった。
ギルドマスターはマルコ。
「やった!」
たるとが喜んでいる。
「お前が一番喜ぶな!」
「だって決まりましたから!」
「押し付けただけだろ!」
その通り。
「次は?」
ハヤテが聞く。
「副ギルドマスターを設定してください、です」
「副もいるのか」
マルコが画面を見る。
そして。
たるとを見る。
「たると」
「はい?」
「お前」
「はい」
「人にギルマス押し付けといて」
「…………」
「副ギルマスにならないとか言わないよな?」
「…………」
たるとが目を逸らした。
「たると?」
「…………はい」
「よし」
道連れになった。
俺に振られてないで良かった。
「私もですか!?」
「当たり前だろ!」
「でも!」
「建築したいんだろ?」
「したいです!」
「じゃあやれ!」
「…………はい!」
副ギルドマスターはたると。
決まった。
「次は?」
「ギルド名です!」
ここで全員が止まった。
「名前?」
「必要ですよね」
「そりゃそうだな」
ハヤテが腕を組む。
「何にする?」
「急に言われてもね」
リンファ。
「かわいい名前がいいですね!」
たると。
「例えば?」
「えっと……」
考える。
「…………」
出てこない。
「思いついてねえじゃん!」
「今考えてるんです!」
「魔法っぽい名前は~?」
セリアが言う。
「どんなの?」
「う~ん……」
こちらも止まる。
「思いついてない」
「これから~」
「シズクは?」
「私ですか?」
「なんかない?」
「そうですね……」
シズクも考える。
「…………」
難しいらしい。
「ガウは?」
ハヤテが聞いてくる。
「なんでもいい」
「一番困る答え!」
だって。
名前とか分からないし。
ハヤテがマルコを見る。
「マルコは?」
「俺に聞くな!」
「ギルマスだろ!」
「押し付けられたばっかだ!」
確かに。
「…………」
ハヤテが腕を組む。
俺たちを見る。
そして。
マルコ。
たると。
交互に見る。
「虎」
「何?」
「ギルマスと副ギルマス」
ハヤテが二人を指差す。
「二人とも虎獣人じゃん」
「そうですね」
たるとの頭。
虎耳。
マルコにも。
虎耳。
「それが?」
マルコが聞く。
「ギルマスは一番上だろ?」
「まあな」
「つまり王!」
「雑だな」
「そして虎!」
ハヤテが拳を握る。
「王の虎!」
「…………」
「《王虎》!」
「おうこ?」
たるとが繰り返す。
「いいじゃん!」
ハヤテは気に入ったらしい。
「で!」
今度は俺たちを見る。
「俺たちは牙だ!」
「なんで?」
「カッコいいから!」
「…………」
理由。
それだけ?
「だから!」
ハヤテが立ち上がる。
「《王虎の牙》!」
「…………」
静かになった。
「どうだ!」
得意げ。
「王虎の牙……」
たるとが呟く。
もう一度。
「王虎の牙」
そして。
笑った。
「いいですね!」
「だろ!」
「私は好きです!」
「私も結構好き~」
セリア。
「悪くないと思います」
シズク。
「勢いで決めた割にはいいんじゃない?」
リンファ。
「ガウ!」
ハヤテが俺を見る。
「どうだ!」
「別にいいんじゃない?」
「もっと褒めろ!」
「なんで?」
「俺が考えたんだぞ!」
「だから?」
「冷てえ!」
最後。
マルコ。
「俺は?」
「ギルマスなんだから決めてくれ!」
「急に責任押し付けんな!」
そう言いながらマルコが画面を見る。
《王虎の牙》
「…………まあ」
少しだけ口元が緩んだ。
「悪くねえな」
決まった。
ギルド名。
《王虎の牙》
「では!」
たるとが嬉しそうに画面を見る。
「作成します!」
「待て」
マルコが止める。
「はい?」
「ギルマス俺なんだろ?」
「はい」
「じゃあ最後に押すの俺じゃねえの?」
「…………」
「あっ」
「お前な!」
たるとが慌てて操作権を渡す。
マルコの前。
表示。
《この内容でギルドを作成しますか?》
ギルド名。
《王虎の牙》
ギルドマスター。
《マルコ》
副ギルドマスター。
《たると》
メンバー。
俺。
ハヤテ。
リンファ。
セリア。
シズク。
七人。
「…………」
マルコが俺たちを見る。
「後悔しても知らねえからな」
「しません!」
たるとが答える。
「早く押してくれ!」
ハヤテ。
「うるせえ!」
マルコが。
《YES》
押した。
ピコンッ。
音。
そして。
目の前に表示が現れる。
《ギルド《王虎の牙》が結成されました》
「…………」
出来た。
「やった!」
たるとが両手を上げる。
「出来ました!」
「おお!」
ハヤテも笑う。
「俺ら今日からギルドか!」
「そうだね~」
「よろしくお願いします」
「改めてよろしくね」
リンファが笑う。
マルコはため息。
「なんで俺がギルマスなんだよ……」
まだ言ってる。
「いいじゃないですか!」
たるとが笑う。
そして。
メニューを開く。
「これで!」
「ん?」
「来週!」
目を輝かせる。
「拠点建築出来ますね!」
「…………」
そうだった。
それが目的だった。
俺たちは建築したいからギルドを作った。
《王虎の牙》。
なんだか大層な名前だけど始まりなんてそんなものだろ。
遂に《王虎の牙》結成!
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