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第34話 特殊クエスト

「喧嘩売ってんのか?」


ハヤテの眉が動く。


男はハヤテの腰にある二本の剣を見る。


「喧嘩じゃねえ。事実だ」


「なんだと?」


「その剣。始まりの街で売ってる安物だろ」


「…………」


ハヤテが黙る。


図星らしい。


いや。


知ってるけど。


「しかも二本とも同じやつか」


「二刀流だからな!」


「だからなんだ」


「…………」


ハヤテが負けた。


男の視線が今度は俺へ向く。


腰にある短刀。


「そっちの嬢ちゃんも同じだ」


「俺?」


「その短刀も始まりの街で売ってる安物だろ」


「まあ」


ゲームを始めてすぐに始まりの街で買ったものだ。


特にこだわりがあったわけでもない。


使いやすそうだったから買った。


それだけ。


「クナイは?」


俺が聞く。


「普通だな」


「そっか」


「なんで少し残念そうなんだよ」


ハヤテが言う。


別に残念ではないけど。


男は続いてリンファの腕を見る。


そこにはマルコからもらった手甲が装備されている。


「そいつは……」


男が少し目を細める。


「拾い物か?」


「分かるの?」


リンファが驚く。


「ああ。作りは悪くねえが、使い手に合わせて作られたもんじゃねえ」


「そうなのね」


「手入れも足りねえ」


「それはごめんなさい」


素直だ。


今度はシズクの小さな杖とセリアの杖を見る。


「魔法職の二人も拾い物だな」


「はい」


シズクが自分の杖を見る。


「最初の頃に魔物から手に入れたものです」


「私も~」


セリアも杖を持ち上げる。


「使えればいいかな~って」


「まあ、最初はそれでもいい」


男が二本の杖を順番に見る。


「だが、今のお前らには合ってねえな」


「合っていないんですか?」


シズクが聞く。


「ああ」


男はシズクの杖を指差す。


「嬢ちゃんは防ぐ魔法をよく使うだろ」


「…………分かるんですか?」


「杖の傷を見りゃな」


「傷?」


シズクが杖を見る。


俺も見てみる。


…………。


分からない。


「こいつは攻撃魔法を使うことを前提に作られてる。防御に使えねえわけじゃねえが、向いてはいない」


「そうなんですね……」


シズクが少し考える。


「じゃあ私は、防御魔法に向いている杖の方がいいということでしょうか?」


「お前がそれをやりたいならな」


「…………はい」


シズクが小さく頷く。


「で」


今度はセリア。


「そっちの嬢ちゃんは――」


男がセリアの杖を見る。


「随分と無茶な使い方してんな」


「そう~?」


「何したら杖の魔力の流れがこんなバラバラになるんだ」


「魔法の形変えようとしてる~」


「…………は?」


「丸くしたり~。小さくしたり~。二つ出したり~」


「…………」


男が黙った。


セリアが首を傾げる。


「変~?」


「変っつうか……」


男が頭を掻く。


「普通はそんな使い方しねえ」


「やっぱり~?」


「なんで嬉しそうなんだよ」


「普通じゃないなら出来るかもしれないから~」


「意味分かんねえな」


男はもう一度。


セリアの杖を見る。


「まあ、そんなことやってんならこいつじゃ物足りなくなるだろうな」


「ほんと~?」


セリアの目が少し輝く。


「じゃあ新しい杖なら魔法作れるかな~?」


「知らん」


「え~」


「武器に全部頼るな」


正論。


セリアが頬を膨らませる。


シズクは自分の杖を見つめ、セリアは楽しそうに杖を回している。


同じ魔法職でも欲しいものは全然違うらしい。


男が俺たちを見る。


そして。


深いため息。


「ったく。よくそんな装備でここまで来たな」


「勝ててるからいいだろ!」


ハヤテが言う。


「今はな」


「…………」


「武器ってのは使えりゃ何でもいいってもんじゃねえ」


男はそう言うと、受け取った木箱を近くの机に置いた。


「自分に合った武器を使え」


「自分に合った武器?」


俺が聞く。


「ああ」


男が俺を見る。


「いいか? 速さを活かしたい奴が重い大剣持ったところで邪魔になるだけだろ?」


確かに。


「そっちの二刀も同じだ」


男がハヤテを見る。


「二本持ちたいからって同じ剣二本持ってりゃいいって話じゃねえ」


「…………」


「二本あるなら二本の役割を考えろ」


「!」


ハヤテの顔が変わった。


マルコにも似たようなことを言われていた。


二本あるから出来ること。


男はハヤテの反応を見ると。


「なんだ。心当たりあるのか?」


「まあな」


「なら考えろ」


ハヤテが腰の二本を見る。


少しだけ真剣な顔をしていた。


「…………」


その横で俺は壁に並ぶ武器を見る。


剣。


槍。


斧。


短剣。


どれも。


始まりの街で見たものより良さそうに見える。


「じゃあ」


ハヤテも同じことを考えたらしい。


壁を指差した。


「ここで買えばいいんだな?」


「売らねえぞ」


「は?」


即答。


「なんでだよ!」


「俺は武器屋じゃねえ」


「鍛冶屋だろ!?」


「鍛冶屋だ」


「武器いっぱいあるじゃねえか!」


「俺が打ったもんだ」


「じゃあ売れよ!」


「嫌だ」


「なんで!?」


何してるんだろ。


この二人。


「俺は誰にでも武器を打つわけじゃねえ」


男はそう言うと。


木箱を開けた。


中に入っている食べ物。


そして。


一通の手紙。


男がそれを手に取る。


「ロウガの爺さん……何書いてやがる」


手紙を開く。


読む。


「…………」


男の表情が少し変わる。


「…………ったく」


「?」


たるとが首を傾げる。


男はしばらく手紙を読んでいた。


そして。


俺たちを見る。


「お前ら」


「何?」


「あの村で色々やってるらしいな」


「色々?」


「畑手伝ったり。子供の相手したり。村の周り見たり」


「まあ」


やってる。


俺は子供の相手くらいだけど。


「爺さんがお前らのこと随分気に入ってるみたいだぞ」


「本当ですか!」


たるとが嬉しそうに笑う。


「嬉しいです!」


「…………そうか」


男が少しだけ目を逸らした。


そして。


「なら」


俺たちを見る。


「一つ頼まれてくれるか?」


「頼み?」


その瞬間。


ピロン。


「ん?」


目の前にウィンドウが表示された。


《特殊クエストが発生しました》


「クエスト?」


ハヤテも同じものを見ている。


《鍛冶職人ダグラスの依頼》


ダグラス。


どうやら。


この男の名前らしい。


《依頼内容》


《蒼鋼鉱》×10


《火精晶》×5


《月白樹の樹脂》×3


指定された素材を採取し、鍛冶職人ダグラスへ納品してください。


《報酬》


???


「…………」


報酬。


分からないんだけど。


「何ぼさっとしてやがる」


ダグラスが言う。


「《蒼鋼鉱》を十個。《火精晶》を五個。それと《月白樹の樹脂》を三つ」


「それを集めて持ってこい」


「何に使うんだ?」


ハヤテが聞く。


「持ってくりゃ分かる」


「教えろよ!」


「嫌だ」


「このおっさん!」


「誰がおっさんだ!」


仲良くなれそうだな。


多分。


「分かりました!」


たるとが手を上げる。


「私たちが集めてきます!」


「おう」


「場所はどこですか?」


「それくらいは教えてやる」


ダグラスからそれぞれの素材が採れる場所を聞いた。


そして。


俺たちは素材を集めることになった。



まず。


《月白樹の樹脂》。


これは簡単だった。


隣村から少し離れた森。


そこに生えている白い幹の木。


《月白樹》。


その樹脂を採取すればいい。


ただ。


「ガウ! これですか!」


「普通の木」


「じゃあこっちです!」


「それも普通」


「これですね!」


「たると」


「はい!」


「全部の木を指差すのやめて」


「…………はい」


少しだけ時間が掛かった。


それでも。


リンファが月白樹を見つけてくれたおかげで。


《月白樹の樹脂》×3。


入手。


次。


《蒼鋼鉱》。


こっちは。


岩場。


青みがかった鉱石を探して採掘する。


簡単。


そう思っていた。


「…………どれ?」


「これじゃねえの?」


「ただの石ね」


「じゃあこれ~?」


「それも違うと思います」


「全部同じに見える」


全然分からない。


最終的に。


岩の隙間から僅かに青い光を反射している鉱石を見つけた。


それからは。


掘る。


掘る。


掘る。


「…………」


カンッ!


「…………」


カンッ!


「…………ゲームで何してるんだろ俺」


「採掘だろ!」


「それは知ってる」


そんなこんなで。


《蒼鋼鉱》×10。


入手。


そして。


残る素材は一つ。


《火精晶》。



「ここか」


目の前には岩壁に開いた大きな穴。


洞窟。


ダグラスによると《火精晶》はこの洞窟の奥で採れるらしい。


ただ。


気になることを言っていた。


――火精晶だけは気をつけろ。


――なんで?


――奥にデカいのがいる。


「デカいのか!」


ハヤテは嬉しそうだった。


「なんで嬉しそうなの?」


「強そうじゃん!」


「素材集めに来たんだけど」


「ついでだ!」


何のついでなんだ。


「行きましょう!」


たるとを先頭に。


俺たちは洞窟へ入った。


「暗いですね」


シズクが周囲を見る。


岩壁。


天井。


地面。


所々。


赤い結晶が生えている。


淡い光。


そのおかげで完全な暗闇ではない。


「これが《火精晶》~?」


セリアが壁の結晶を見る。


「違うみたい」


触れてみる。


表示される名前は《赤石》。


ただの鉱石らしい。


「もっと奥にあるのかな~」


進む。


途中。


何匹か魔物が現れた。


だが。


それほど強くない。


ハヤテ。


リンファ。


俺。


前衛三人で倒していく。


さらに奥へ。


「…………ん?」


広い場所に出た。


洞窟の奥。


天井も高い。


そして。


「あっ!」


たるとが指差す。


奥の岩壁。


そこに赤く輝く結晶があった。


今まで見てきたものとは違う。


光が強い。


俺が近づく。


表示。


《火精晶》


「あった」


「本当ですか!」


「うん」


「やりました!」


たるとが嬉しそうに駆け寄る。


「これを五つですね!」


「これならすぐ終わりそうだな」


ハヤテも近づく。


その時。


ズズズズズ……。


「ん?」


地面が揺れた。


「地震?」


リンファが周囲を見る。


違う。


ズズズズズ……!


正面。


火精晶の近くの岩壁。


そこが動いた。


「…………え?」


岩だと思っていたものが。


ゆっくりと立ち上がる。


ゴゴゴゴゴ……!


「でかっ!」


ハヤテが叫ぶ。


三メートル。


いや。


もっとある。


黒い岩で出来た巨大な身体。


太い腕。


巨大な拳。


身体の所々から。


赤い結晶が突き出している。


胸の中心。


そこには一際大きな赤い結晶。


目の前に名前が表示された。


《紅晶岩巨兵》


「…………」


ダグラスの言ってたことはこれか。


「来ます!」


シズクが叫ぶ。


紅晶岩巨兵が腕を振り上げる。


「散れ!」


ハヤテの指示で俺たちは左右へ飛ぶ。


直後。


ドゴォォォン!!


巨大な拳が地面へ叩きつけられた。


岩が砕ける。


「うわっ!」


衝撃。


身体が押される。


「すげえな!」


ハヤテは楽しそうだ。


「笑ってる場合?」


「行くぞ!」


二本の剣を構える。


走る。


紅晶岩巨兵がハヤテへ拳を振るう。


「《シールド》!」


シズクの前に半透明の壁が現れる。


ガァン!!


拳がぶつかる。


「くっ……!」


シズクの身体が僅かに後ろへ滑る。


それでも止めた。


「ありがとな!」


ハヤテが懐へ入る。


右。


左。


二本の剣。


だが。


同時には振らない。


片方で紅晶岩巨兵の腕を逸らす。


そして。


もう片方。


「おらっ!」


ガキンッ!


剣が岩の身体へ当たる。


「硬っ!」


弾かれた。


「…………」


今の動きは……。


「ハヤテ!」


「なんだ!?」


「ちょっと良かった」


「だろ!?」


「でも効いてない」


「言うな!」


紅晶岩巨兵が腕を振るう。


ハヤテが避ける。


その横。


リンファが入る。


「ここね」


手甲。


拳。


ドンッ!


岩の身体。


「…………硬いわね」


「岩だからね」


「そうね」


リンファが一度離れる。


紅晶岩巨兵が追う。


拳。


リンファが身体を沈める。


避ける。


そのまま足元。


膝の関節を狙う。


「ここならどう?」


ドンッ!


掌底。


「ゴ……!」


紅晶岩巨兵の身体が僅かに揺れた。


「効いた!」


「関節部分なら少し柔らかいみたいね」


「なるほど」


俺も走る。


速さと技量。


俺がずっと上げ続けているもの。


紅晶岩巨兵の横を抜ける。


短刀で関節を斬る。


ガッ!


「…………硬い」


リンファよりはダメージが少ない。


攻撃力。


もう少し上げようかな。


いや。


今はいい。


避ければいい。


紅晶岩巨兵が俺を見る。


拳。


遅い。


横へ避ける。


そのままクナイを投げる。


ヒュッ!


カンッ!


赤い結晶に当たる。


「…………」


弾かれた。


でも。


胸の結晶。


今。


少しだけ揺れた?


「セリア!」


「なに~?」


「胸の赤いやつ狙える?」


「やってみる~」


セリアが杖を向ける。


「《ファイア》~!」


ボッ!


炎。


紅晶岩巨兵の胸へ飛ぶ。


だが。


ガァン!


巨大な腕で防がれた。


「守った」


「弱点かもしれませんね」


シズクが言う。


「もう一回~」


セリアが杖を構える。


「《ファイア》~!」


炎。


飛ぶ。


また腕が動く。


「やっぱり守る」


「じゃああそこ狙えばいいんだな!」


ハヤテが走る。


「俺が腕をどかす!」


「一人で?」


「やってみる!」


紅晶岩巨兵の拳。


ハヤテ。


右の剣で受ける。


いや。


横へ流す。


ガキンッ!


「ぐっ!」


身体が揺れる。


それでも。


もう一本。


左。


関節へ。


ガキンッ!


紅晶岩巨兵の腕が少し上がる。


「今だ!」


「早いよ~」


「え!?」


セリアがまだ準備してなかった。


「お前な!」


「急に言われても~」


ドゴッ!


「ぐあっ!」


ハヤテが拳に吹き飛ばされた。


地面を転がる。


「ハヤテさん!」


たるとがすぐに駆ける。


「大丈夫ですか!?」


「いってぇ……」


「動かないでください!」


「《ヒール》!」


たるとの手が淡い光に包まれる。


ハヤテの傷が少しずつ消えていく。


「おお。ありがとな!」


「無茶しすぎです!」


「でも今の惜しかっただろ?」


「惜しくても怪我したら駄目です!」


「はい」


怒られた。


「もう一回やるぞ!」


「聞いてました!?」


元気だな。


紅晶岩巨兵がこちらへ向かう。


「来ます!」


シズク。


《シールド》。


拳を防ぐ。


リンファが足元へ。


関節に掌底。


体勢が崩れる。


ハヤテ。


二本。


一本で腕を逸らし。


もう一本で反対側の腕を斬る。


胸が開いた。


「今!」


「今度は大丈夫~」


セリアが杖を向ける。


「《サンダー》~!」


バチッ!


雷。


胸の結晶。


直撃。


「ゴオオオオオッ!!」


初めて紅晶岩巨兵が大きな声を上げた。


「効いた!」


「もう一回!」


俺は走る。


紅晶岩巨兵の視線がセリアへ向く。


「セリア!」


「ん~?」


拳。


「《シールド》!」


シズク。


だが。


間に合わない。


俺はセリアの前へ。


受ける必要はない。


腕の軌道を見る。


クナイを投げる。


関節。


カンッ!


ほんの少しだけ腕の軌道がずれる。


「セリア、右!」


「お~」


セリアが動く。


ドゴォォン!


拳が地面へ。


「ありがと~」


「後ろ見て」


「は~い」


本当に分かってる?


でも。


なんだろう。


前より動きやすい。


誰かが何をするのか。


なんとなく分かる。


ハヤテが前に出る。


リンファが横へ回る。


シズクが後ろを守る。


セリアが魔法を撃つ。


たるとは全員を見る。


誰かが傷つけばすぐに回復する。


そして。


俺は敵を見る。


「もう一回いける!」


俺が言う。


「おう!」


ハヤテ。


「分かったわ」


リンファ。


「はい!」


シズク。


「いくよ~」


セリア。


「皆さん、気をつけてください!」


たると。


紅晶岩巨兵が両腕を上げる。


俺が走る。


正面から拳。


右へ避ける。


「ハヤテ!」


「おう!」


片方の剣で腕を流す。


もう一本。


関節に叩き込む。


ガキンッ!


「リンファ!」


「分かったわ」


反対側に掌底。


ドンッ!


紅晶岩巨兵の身体が傾く。


胸が開く。


「シズク!」


「《シールド》!」


もう一方の拳を止める。


「セリア!」


「《サンダー》~!」


雷が胸を直撃。


バチィィィン!!


「ゴオオオオオオオッ!!」


赤い結晶。


亀裂。


まだ壊れない。


「ガウ!」


ハヤテが叫ぶ。


分かってる。


走る。


一気に距離を詰める。


胸に亀裂。


短刀を突き出す。


ガキンッ!


「っ!」


硬い。


でも。


亀裂が入ってるなら……!


もう一回、短刀を引く。


そして。


「これで終わり!」


突く。


パキンッ!


胸の結晶が砕けた。


「ゴ…………」


紅晶岩巨兵の動きが止まる。


身体が崩れる。


ゴゴゴゴゴ……!


大量の岩が地面へ落ちる。


そして。


消えていった。


「…………」


「倒しましたか?」


たるとが聞く。


「みたい」


俺が答える。


「よっしゃあ!」


ハヤテが拳を上げる。


「結構強かったな!」


「楽しそうだね」


「楽しかっただろ?」


「まあ」


少し。


リンファが手甲を見る。


「やっぱりこっちの方が動きやすいわね」


「合ってるんじゃない?」


「そうかもね」


シズクも自分の杖を見る。


「もう少し強い攻撃でも防げるようになりたいですね」


「十分助かったけど」


「まだです」


真面目だな。


「ガウ~」


「何?」


セリアが近づいてくる。


「さっきの《サンダー》~」


「うん」


「ちょっと細くなってなかった~?」


「…………」


どうだろう。


「同じじゃない?」


「む~」


「でも」


「ん~?」


「最初より少し真っ直ぐ飛んでた気はする」


「ほんと~!?」


顔が近い。


「多分」


「じゃあもう一回やってみよ~!」


「今?」


「今~」


元気だな。


「あっ!」


たるとの声。


「皆さん!」


指を差す。


紅晶岩巨兵がいた場所。


その奥に赤く輝く結晶。


《火精晶》。


「ありました!」


「…………」


そうだった。


俺たちは素材集めに来たんだった。


「五個採れば終わりね」


リンファ。


「採掘しましょう」


シズク。


「お~」


セリア。


ハヤテ。


「よし!」


「…………」


俺は採掘道具を見る。


さっきまで巨大なゴーレムと戦っていた。


そして。


今から石を掘る。


…………。


「ゲームって自由だな」


「ガウ、急にどうした?」


「なんでもない」


俺たちは《火精晶》を採掘した。



それから隣村へ戻った。


鍛冶場。


カァン!


カァン!


相変わらず金属音が響いている。


「ダグラスさん!」


たるとが呼ぶ。


カァン!


「ダグラスさーん!」


カァン!


「…………」


「また聞こえてないね」


「入りましょう」


中へ。


「おう」


今度は気付いた。


ダグラスがこちらを見る。


「戻ったか」


「はい!」


たるとが素材を取り出す。


《蒼鋼鉱》×10。


《火精晶》×5。


《月白樹の樹脂》×3。


「全部集めました!」


「見りゃ分かる」


ダグラスが一つずつ確認する。


蒼鋼鉱。


火精晶。


月白樹の樹脂。


「…………」


しばらく黙っていた。


そして。


「悪くねえ」


その瞬間。


ピロン。


《特殊クエストを達成しました》


「終わった」


「よっしゃ!」


ハヤテが喜ぶ。


そして。


すぐに。


「で?」


「なんだ」


「報酬!」


早い。


ダグラスが呆れた顔をする。


「せっかちな奴だな」


ダグラスが集めた素材を見る。


そして持ち上げた。


「明日」


「?」


「もう一回来い」


「なんで?」


ダグラスが俺たちの武器を見る。


俺の短刀。


ハヤテの二本の剣。


リンファの手甲。


そして。


たると。


セリア。


シズク。


全員を順番に見る。


「決まってんだろ」


ダグラスがニッと笑った。


「お前らに合う武器を打ってやる」


「…………え?」


ハヤテが固まる。


俺たちもダグラスを見る。


「この素材で?」


「ああ」


「六人分?」


「必要な奴の分はな」


ダグラスはそう言うと。


素材を抱え。


炉へ向かった。


「明日までに考えとけ」


「何を?」


「どんな武器が欲しいかだ」


カァン!


再び。


金属を叩く音。


俺は腰にある短刀を見る。


ゲームを始めてからずっと使ってきた安い短刀。


特に不満はなかった。


でも自分に合った武器。


「…………」


どんなのがいいんだろう。


まだ分からない。


ただ少しだけ明日が楽しみだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


第二階層が解放されたというのに、向かった先は隣村。


こういう寄り道ばかりしているのがガウたちらしい気がします。


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