第23話 しばらくここで
ロウガが俺達を見る。
「何から話そうかのう」
「そうですね」
たると。
「じゃあ――」
それから。
俺達はロウガから村について話を聞いた。
内容はほとんどマルコから聞いたものと同じだった。
森にいる魔物が村の近くまで来るようになった。
畑を荒らされたり。
柵を壊されたり。
村人が襲われることもあった。
それだけじゃない。
プレイヤーの略奪。
村の食料。
素材。
アイテム。
使えそうな物を勝手に持っていく。
止めようとした村人を攻撃する。
そんなことが何度かあったらしい。
「酷いです」
たると。
やっぱり怒ってる。
「ほっほっほ」
ロウガが笑う。
「たると殿は優しいのう」
「普通です!」
「そうかの?」
「そうです!」
即答。
「…………」
ロウガは少し嬉しそう。
「そういえば」
俺はマルコを見る。
壁際に立ったまま、腕を組んでる。
「マルコはいつからこの村にいるの?」
「俺か?」
「うん」
「二週間くらい前だな!」
「二週間?」
ハヤテ。
「ああ!」
マルコ。
「この辺を探索してたら偶然見つけたんだ」
「偶然?」
「おう!」
マルコが笑う。
「最初はちょっと寄っただけだ」
村を見つけて。
入って。
村人と話して。
飯を食べて。
少し手伝って。
「そしたら気に入った!」
「それで二週間?」
リンファ。
「ずっとここにいるの?」
「ずっとってわけじゃないぞ!」
マルコ。
「街にも戻ることもあるがほとんどここにいるな」
「ほとんどじゃない」
リンファが笑う。
「…………」
確かに。
「でも」
たると。
「どうしてそこまでして村を守ってるんですか?」
「ん?」
「だって」
たると。
「マルコさんはプレイヤーですよね?」
「ああ!」
「この村を守るクエストがあるんですか?」
「ないぞ!」
「…………」
「じゃあ」
たると。
「どうしてですか?」
「気に入ったからだ!」
即答。
「なるほど!」
ハヤテ。
「…………」
納得した。
リンファ。
「まあ、分からなくはないけど……」
「そうじゃのう」
ロウガがマルコを見る。
「じゃが」
「それだけではなかろう?」
「…………」
マルコが黙る。
「ロウガ」
「なんじゃ?」
「言わなくてもいいだろ」
「わしは何も言っておらんよ」
「…………」
マルコが頭を掻く。
そして。
俺達を見る。
「…………」
少しだけ表情が変わった。
「ロウガが」
マルコ。
「死んだじいちゃんに似てるんだ」
「…………」
部屋が静かになる。
「おじいさん?」
たると。
「ああ」
マルコ。
「顔も少し似てる」
ロウガを見る。
「喋り方とか」
「笑い方とか」
「何か」
少し笑う。
「じいちゃんを思い出すんだよ」
「…………」
ロウガは何も言わない。
ただ穏やかに笑ってる。
「だから」
マルコ。
「最初にここへ来た時から気になってた」
「また来ようって思ってた」
「何回か来てたら魔物が襲ってきて」
「追い払って」
「今度はプレイヤーが来て」
「追い払って」
「…………」
それで二週間。
「俺だってここがゲームなのは分かってる」
「ロウガ達がNPCなのも分かってる」
「でも」
ロウガを見る。
「だからって」
「目の前で襲われてるのを放っておけないだろ」
「…………」
ゲームだから。
NPCだから。
それでも放っておけない。
なんだか憎めない人だと俺は思う。
「マルコさん」
たると。
「ん?」
「優しいんですね!」
「そうか?」
「はい!」
「そうか!」
笑う。
「ほっほっほ」
ロウガ。
「わしはよい孫を持ったようじゃのう」
「孫じゃないぞ!」
「分かっておるわい」
「そうか!」
「…………」
ロウガとマルコ。
二人を見る。
虎と狸。
顔も似ていない。
だが。
本当の家族のように思えた。
「よし!」
突然。
「…………」
ハヤテが立ち上がる。
「マルコ!」
「なんだ?」
「俺を鍛えてくれ!」
「…………」
何で?
「鍛える?」
「ああ!」
ハヤテ。
腰の二本の剣を見る。
「俺は二刀流を極めたい!」
「二刀流か……」
マルコ。
「格好いいな!」
「だろ!?」
「おう!」
「…………」
そこ?
「俺はもっと強くなりたい!」
ハヤテ。
「だから!」
マルコを見る。
「俺と特訓してくれ!」
「いいぞ!」
「マジか!」
「おう!」
「よっしゃあ!」
「はははは!」
「…………」
話が早い。
「ハヤテ」
俺。
「ん?」
「《階層守護者》は?」
「…………」
止まる。
忘れてた?
「忘れてないぞ!」
「本当に?」
「本当だ!」
怪しい。
ハヤテが腕を組む。
「でも!」
「マルコに勝てないようだと《階層守護者》にも勝てるわけないだろ」
「…………」
なるほど。
それっぽい。
実際。
マルコは強い。
身体強化。
杖。
近接戦闘。
俺も完全に組み伏せられた。
「まあ」
俺。
「そうかもね」
「だろ!」
「ガウもやるだろ!」
「俺?」
「おう!」
「…………」
マルコを見る。
こっちを見てる。
笑ってる。
「鍛えてやるぞ!」
「…………」
さっき。
懐に入ろうとして腕を掴まれた。
そのまま押さえ込まれた。
「…………」
確かに悪くないかもしれない。
「やる」
「よし!」
ハヤテ。
「決まりだな!」
「何でハヤテが喜ぶの?」
「一緒に強くなれるだろ!」
「…………」
まあ。
そうだけど。
「あの!」
たるとが手を上げる。
「それなら!」
全員がたるとを見る。
「しばらくこの村にいませんか?」
「ここに?」
俺。
「はい!」
たると。
「ハヤテさんとガウさんはマルコさんと特訓できます!」
「おう!」
ハヤテ。
「私は村を見て回りたいです!」
「私も周辺の素材は気になるわね」
リンファ。
「森も見たい~」
セリア。
「私も異論はありません」
シズク。
「《階層守護者》を探すにしても、この辺りを拠点に探索できます」
「…………」
なるほど。
全員に理由がある。
「マルコさん!」
たると。
「私達がここにいても大丈夫ですか?」
「俺に聞くな!」
マルコがロウガを指す。
「村長はロウガだ!」
「そうですね!」
たるとがロウガを見る。
「村長さん!」
「はい」
ロウガが笑ってる。
「私達」
「しばらくこの村にいてもいいですか?」
「…………」
ロウガが俺達を見る。
一人ずつゆっくりと。
「もちろんじゃ」
「いいんですか!?」
「構わんよ」
ロウガが笑う。
「むしろ」
「これだけ賑やかになるのは久しぶりじゃ」
「好きなだけおるとよい」
「ありがとうございます!」
たるとが頭を下げる。
「俺からも頼む!」
ハヤテ。
「特訓したい!」
「目的が違わない?」
「同じだ!」
違うと思う。
「それなら」
ロウガが部屋を見る。
「この家を使うとよい」
「ここ?」
俺。
「そうじゃ」
「誰も使っておらんからの」
「…………」
見る。
小さい。
テーブル。
椅子。
棚。
六人。
「…………」
狭くない?
「寝るだけなら大丈夫ですよ!」
たると。
「そうかな」
「大丈夫です!」
「そう?」
「はい!」
その自信。
どこから来るんだろう。
「俺は外でも寝られるぞ!」
ハヤテ。
「俺もだ!」
マルコ。
「マルコは自分の場所に戻って」
「そうか!」
「ほっほっほ!」
ロウガが笑う。
「必要な物があれば言ってくだされ」
「はい!」
たると。
嬉しそう。
「ありがとうございます!」
「よし!」
ハヤテが立ち上がる。
「マルコ!」
「おう!」
「早速やろうぜ!」
「いいぞ!」
「今から?」
俺。
「当然だ!」
「もう夕方だけど……」
「まだ明るい!」
「…………」
元気。
「ガウも行くぞ!」
「今日はいい」
「なんでだ!」
「疲れた」
「…………」
ハヤテが驚いた顔。
「ガウが!?」
「何で驚くの?」
「ガウも疲れるんだな!」
「疲れるよ」
俺を何だと思ってるんだ。
「行くぞ、ハヤテ!」
マルコ。
「おう!」
二人が外へ。
「本当に仲良くなったわね」
リンファ。
「ですね!」
たると。
「やっぱり戦ったから~?」
セリア。
「私は理解できません」
シズク。
同感。
「ほっほっほ」
「賑やかになりそうじゃのう」
「はい!」
たると。
「…………」
俺達は《階層守護者》を探して北へ来た。
岩山を越えて。
草原を越えて。
森へ入って。
マルコと戦って。
村を見つけた。
そして。
なぜか。
しばらくこの小さな村に滞在することになった。
「…………」
予定と全然違うな。
まあ。
悪くはないか。
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