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第19話 守護者

翌日。


午前十時。


《ファンタズマ・ゲイト》。


大型アップデートは朝の9時には終わっている。


俺はヘッドセットを装着する。


ベッドに横になる。


視界が光に包まれた。


◇◇◇


《始まりの街》。


「…………」


周囲を見る。


人がかなり多い。


いつもよりプレイヤーが多く感じる。


「第二階層行こうぜ!」


「階層守護者どこだよ!」


「ギルド作れるぞ!」


「誰かエリアボス見つけた!?」


色々な声が聞こえる。


大型アップデート。


《ギルド機能》。


《第二階層》。


そして。


《階層守護者》。


やっぱりみんな気になってるらしい。


俺もその一人だけど。


「…………」


時間は十時二分。


待ち合わせ場所へ向かう。



冒険者ギルド前。


「ガウさん!」


たるとがいた。


その隣にはリンファ。


セリア。


シズク。


そして。


「遅いぞ!」


ハヤテ。


「二分だけど」


「俺は十分前からいた!」


「早いね」


「楽しみだったからな!」


「でしょうね」


シズク。


「昨日からずっとこの調子です」


「ずっと?」


「ログインしてからです」


「まだ二分しか経ってないけど」


「十分前からいますから」


「…………」


なるほど。


「よし!」


ハヤテが立ち上がる。


腰には二本の剣。


「全員揃った!」


「エリアボス探しに行くぞ!」


「《階層守護者》です」


シズク。


「同じだろ!」


「名称は正確に」


「細かい!」


「大事です」


「…………」


朝から元気だな。


「昨日決めた通り」


たると。


「北側ですね!」


「おう!」


「本当に北でいいの?」


リンファ。


「何か情報が出てるかもしれないわよ?」


「…………」


確かに。


アップデートから少し時間は経っている。


もしかしたら。


もう誰かが見つけてるかもしれない。


「でも!」


ハヤテ。


「自分たちで探した方が面白いだろ!」


「…………」


「それは」


たるとが笑う。


「そうですね!」


「それもそうね」


リンファ。


「素材も見たいし」


「私もいいよ~」


セリア。


「昨日決めたことですから、私も異論はありません」


シズク。


「ガウは?」


「北でいいと思う」


「よし!」


ハヤテが腕を上げる。


「出発ー!」


「おー!」


たると。


「元気ね」


リンファ。


「元気~」


セリア。


「朝から元気すぎると思います」


シズク。


「…………」


俺も歩き出す。


目的は《階層守護者》。


場所は不明。


向かう先は北側。


探索を開始した。



街を出る。


北へ。


最初は見慣れた道。


草原。


森。


何度か戦ったことのある魔物。


ゴブリン。


ウルフ。


六人で倒しながら進む。


「ガウ!」


「ん?」


ハヤテ。


俺の手を見る。


「それ何だ!?」


「クナイ」


「クナイ!?」


「うん」


「いつ買った!?」


「最近」


「なんで言わなかったんだよ!」


「言う必要ある?」


「ある!」


「なんで?」


「格好いいだろ!」


「…………」


よく分からない。


前方にゴブリン一体。


クナイを構える。


投げる。


ヒュッ!


ザクッ!


肩に当たった。


「おお!」


ハヤテ。


ゴブリンがこっちを見る。


走ってくる。


短刀を抜く。


避ける。


斬る。


ザシュッ!


消滅。


「すげえ!」


「まだあんまり当たらないけど」


「俺も投げようかな!」


「剣を?」


「…………」


腰の剣を見る。


「やめとく!」


「そうして」


進む。


さらに北。


途中。


リンファが素材を見つけて寄り道。


たるとが景色を見て寄り道。


ハヤテが魔物を見つけて寄り道。


セリアが蝶を追いかけて寄り道。


シズクが全員を呼び戻す。


「…………」


進まない。


それでも少しずつ。


北へ。


北へ。


今まで来たことのない場所へ。



辺りはすっかり夕方になっていた。


岩山地帯。


「うおー!」


ハヤテの声。


「結構登るな!」


「走らないでください!」


シズク。


「大丈夫!」


「転びますよ!」


「大丈夫だって!」


直後。


ズルッ。


「うおっ!?」


「…………」


転びかける。


「大丈夫じゃないですね」


「転んでない!」


「転びかけました」


「セーフ!」


「何がですか?」


周囲を囲む大きな岩山。


マップを見る。


少しずつ未探索だった場所が埋まっていく。


「この辺は初めて来たわね」


リンファ。


「うん」


「何か素材ないかしら」


「さっきからそればっかりだね」


「探索なんだからいいでしょ?」


「まあ」


歩く。


登る。


下る。


魔物と戦う。


また歩く。


そして。


岩山地帯を抜ける。


「おお……!」


ハヤテ。


目の前には広い草原。


緑。


風が吹く。


草が揺れる。


ずっと続いている。


その向こう。


遠くには森がある。


「綺麗ですね!」


たると。


「すごい広いな」


「走る!」


ハヤテ。


「なぜですか?」


シズク。


「草原だから?」


「理由になっていません」


「行くぞー!」


走る。


「待ってください!」


「ほんとに子供なんだから」


リンファ。


「元気だね~」


セリア。


「…………」


俺たちも歩く。


たるとは走った。


「待ってください! ハヤテさん!」


「たるとも行くの?」


「楽しそうなので!」


「…………」


まあ。


楽しそうではある。



草原を進む。


そして。


森に到着した。


「ここから先」


リンファがマップを見る。


「ほとんど何も分からないわね」


「未探索だからね」


木々。


かなり多い。


奥は暗い。


「階層守護者いるかな?」


ハヤテ。


「まだそれしか考えてないの?」


「それ探しに来たんだろ!」


「そうだけど」


「行こうぜ!」


ハヤテが森へ入る。


「一人で先に行かないでください」


シズク。


「分かってる!」


「もう先に行っています」


「…………」


俺達も続く。



森を進む。


木。


草。


茂み。


さらに奥へ。


「結構来ましたね」


たると。


「街、かなり遠くなったわね」


リンファ。


「帰るの大変そう~」


セリア。


「帰りのことも考えてくださいね」


シズク。


「大丈夫!」


ハヤテ。


「何が?」


俺。


「…………」


答えない。


多分。


何も考えてない。


歩く。


さらに。


奥へ。


木々が密集している。


光が少ない。


風で草木が揺れる。


「…………」


狼耳が動く。


何か。


「ガウさん?」


たると。


「今」


音が上からーー


「何か――」


ガサッ!


「っ!」


見上げる。


影。


「上!」


俺が声を出す。


次の瞬間。


誰かが木の上から飛び降りてきた。


ドンッ!!


「うおっ!?」


ハヤテ。


土が舞う。


六人が止まる。


目の前には一人のプレイヤー。


ゆっくり立ち上がる。


大きい。


男性。


虎の耳。


虎の尻尾。


筋肉質な身体。


「…………」


強そう。


そして。


肩には一本の杖。


魔法の杖。


「…………」


杖?


ハヤテも同じところを見ている。


「杖?」


口に出した。


男が俺達を睨む。


「また懲りずに村を襲いに来たのか」


「…………」


村?


ハヤテが二本の剣に手を伸ばす。


リンファも短刀。


セリアとシズクは杖を構える。


男も肩に担いでいた杖を下ろす。


そして構える。


「待って!」


何か話をしないと。


でも。


男は俺たちを睨んだまま。


一歩前へ。


「俺の名はマルコ!」


声が大きい。


森に響く。


そして。


杖を俺たちへ向ける。


「この辺一帯の――」


構える。


「守護者だ!」

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