第18話 明日の予定
午後八時。
《始まりの街》。
「おー! 来た来た!」
ログインするとハヤテの声。
「こんばんは、ガウさん!」
「こんばんは」
「こんばんは~」
「ガウ、遅かったわね」
「時間ちょうどだけど」
俺。
ハヤテ。
たると。
リンファ。
セリア。
シズク。
六人。
『今日は夜八時から遊ぼう』
そう約束していた。
「よし!」
ハヤテが立ち上がる。
「全員来たな!」
「来ましたね!」
「それで?」
リンファが聞く。
「今日は何するの?」
「…………」
ハヤテが止まる。
「何する?」
「決めてなかったの?」
「集まってから決めようと思ってた!」
「いつものやつね」
「いつものですね」
「いつもの~」
「…………」
俺も何も考えてなかった。
「それじゃあ!」
たるとが手を上げる。
「はい」
「デザート食べに行きませんか?」
「いきなり?」
「はい!」
「ログインしたばっかだぞ?」
ハヤテ。
「いいじゃないですか!」
「まあ、私はいいわよ」
リンファ。
「いいよ~」
セリア。
「私も構いません」
シズク。
「俺もいいよ」
俺も答える。
「やった!」
たると。
嬉しそう。
「美味しいお店、見つけたんです!」
「もう店まで決めてるの?」
「もちろんです!」
「…………」
最初から行くつもりだったらしい。
◇
《始まりの街》にある飲食店。
六人掛けのテーブル。
テーブルの上にデザート。
「美味しいです!」
たるとの前には大きなパフェ。
果物。
アイス。
クリーム。
色々乗っている。
「…………」
大きい。
「それ一人で食べるの?」
「もちろんです!」
即答。
「太らないですから!」
「そういう問題なの?」
リンファが笑う。
「この世界のいいところよね」
リンファの前にはケーキ。
セリアの前。
アイス。
シズク。
小さめのケーキ。
ハヤテ。
プリン。
俺も。
プリン。
「ガウ」
「何?」
ハヤテが俺のプリンを見る。
「プリン仲間だな!」
「そうだね」
プリン仲間。
「なんか嬉しいな!」
「そう?」
プリンを食べる。
「うまい」
「だろ!」
「ハヤテが作ったわけじゃないでしょ」
リンファ。
「俺が選んだ!」
「だから何?」
「…………」
俺は静かに食べる。
ふと思い出す。
そういえば今日、家電量販店のテレビで観たCM。
「みんな」
「ん?」
「明日の大型アップデート知ってる?」
「知ってるぞ!」
ハヤテ。
早い。
「もちろんです!」
たると。
「知ってるわ」
リンファ。
「見た~」
セリア。
「確認しています」
シズク。
「…………」
全員知ってた。
「俺、今日知った」
「遅くね!?」
「ゲーム内のお知らせ見てなかった」
「ガウさんらしいですね」
「そう?」
たるとがパフェを食べながら頷く。
「はい!」
「…………」
どういう意味だろう。
「今日、家電量販店でCM流れてた」
「へえ!」
「テレビ売り場で見てたら店員に声かけられた」
「テレビ買ったのか?」
「買ってない」
「じゃあ何買ったんだ?」
「ヘッドホン」
「テレビ関係ねえ!」
「元々それ買いに行ったんだよ」
「なるほどな」
ハヤテがプリンを食べる。
「で!」
スプーンを置く。
「エリアボス!」
「…………」
やっぱり。
昼間に想像した通りだった。
「明日追加だぞ!」
「そうだね」
「強そうだったよな!」
「CMだと姿ほとんど見えなかったけど」
「だからいいんだろ!」
「何が?」
「分からない敵!」
「…………」
楽しそうだな。
「《階層守護者》でしたね」
シズク。
「エリアボスとも書かれていました」
「そうそう!」
ハヤテ。
「戦いたい!」
「まだ実装されてもいませんよ」
「明日されるだろ!」
「そういう意味ではありません」
「…………」
いつもの二人。
「私は第二階層が楽しみです!」
たるとが手を上げる。
「新しい場所ですよ!」
「そうだね」
「どんなところなんでしょう!」
CMでは少しだけ映っていた。
知らない景色。
知らない魔物。
「それに」
たるとが笑顔で話す。
「新しい料理もあるかもしれませんね!」
「やっぱりそこ?」
「大事です!」
「大事なんだ」
「もちろんです!」
パフェを食べる。
「私は素材ね」
リンファ。
「やっぱり」
「何よ?」
「いや」
予想通りだった。
「階層が違うなら、今まで見たことない素材もありそうでしょ?」
「ありそう」
「糸とか布の材料があれば嬉しいわね」
「新しい魔法もあるのかな~」
セリアがアイスを食べながら話す。
「どうだろう」
「楽しみ~」
「皆さん」
シズク。
「第二階層の話をしていますが」
ケーキを一口。
「その前に《階層守護者》を倒さなければ行けないのでは?」
「…………」
全員が止まる。
「そうだった」
たると。
「CMではそう言ってたね」
「じゃあ!」
ハヤテ。
「倒そうぜ!」
「簡単に言いますね」
「倒さないと行けないんだろ?」
「それはそうですが」
「じゃあ倒す!」
「強さも分かっていませんよ」
「戦えば分かる!」
「…………」
シズク。
ため息。
「まあ」
リンファ。
「明日にならないと何も分からないわね」
「だね」
どこにいるか。
どんな魔物か。
どれくらい強いか。
何人くらい必要なのか。
何も分からない。
「…………」
俺は最後の一口を食べる。
ここのプリン。
甘くて美味しかった。
「そういえば」
リンファ。
「ギルド機能も追加されるんでしょ?」
「…………」
ギルド。
「そうみたいだな」
ハヤテ。
「忘れてたの?」
「エリアボスの方が気になる!」
「でしょうね」
「ギルドって今のパーティーとは違うんですよね?」
たると。
「みたいだね」
CMではパーティー機能とは別と言っていた。
複数のプレイヤーが所属するコミュニティだと。
「同じグループに所属する機能、ということでしょうか」
シズク。
「多分」
「何人くらい入れるんでしょうね~」
セリア。
「分からない」
「六人でも作れるのかしら?」
リンファ。
「…………」
六人。
俺。
ハヤテ。
たると。
リンファ。
セリア。
シズク。
「作れるんじゃない?」
「多分ね」
「まあ!」
ハヤテ。
プリンの空いた容器を前に。
「それは明日見れば分かる!」
「そうですね」
「それよりエリアボスだ!」
やっぱりそっち。
「でも」
たると。
「どこにいるんでしょうか?」
「…………」
第一階層はかなり広い。
今まで色々な場所へ行った。
でも。
まだ行ったことのない場所の方が多い。
「CMでは場所までは言ってなかったわね」
リンファ。
「探すしかないんじゃない?」
俺が言う。
「探索ですね!」
たるとが嬉しそうに話す。
「それなら楽しそうです!」
「いいな!」
ハヤテ。
「明日探しに行こうぜ!」
「私もいいわよ」
リンファ。
「私もいいですよ~」
セリア。
「私も構いません」
シズク。
「俺もいいよ」
「決まり!」
ハヤテ。
「明日はエリアボス探しだ!」
「探すだけですよ?」
シズク。
「見つけたら戦う!」
「話を聞いていましたか?」
「聞いてた!」
「聞いた上でそれなんですね」
「おう!」
「…………」
聞いてはいたらしい。
「でも」
たると。
「どこを探します?」
「…………」
全員でマップを開く。
第一階層は広い。
南側に《始まりの街》。
その周辺には森。
岩場。
湖。
色々ある。
「どこに追加されるか分からないのよね?」
リンファ。
「うん」
「手当たり次第かな~?」
セリア。
「それでは時間がかかりすぎますね」
シズク。
「じゃあ!」
ハヤテがマップを指差す。
「北!」
「…………」
北。
「なんで?」
「まだあんまり行ってないから!」
「それだけ?」
「それだけ!」
「…………」
特に情報があるわけじゃない。
階層守護者が北にいると聞いたわけでもない。
でも。
北側は俺達がまだあまり探索していない場所ではある。
「まあ」
リンファ。
「行ってない場所なら探索する意味はあるわね」
「素材もあるかもしれません!」
たると。
「たると、それリンファの方じゃない?」
「あっ」
「私は素材」
リンファが笑う。
「たるとは食べ物でしょ?」
「食べ物もあるかもしれません!」
「そっちは否定しないんだ」
「新しい魔物もいるかも~」
セリア。
「危険もあるかもしれませんから、注意は必要ですね」
シズク。
「敵なら俺がやる!」
ハヤテ。
「一人で突っ込まないでください」
「大丈夫!」
「何がですか?」
「…………」
いつも通り。
俺はマップを見る。
北側。
まだ行ったことのない場所。
何があるか分からない。
階層守護者がいるのかも分からない。
「俺も北でいいよ」
「よし!」
ハヤテ。
「じゃあ決まり!」
明日は大型アップデート。
そして。
六人で探索。
目的は《階層守護者》を探す。
向かう場所は北。
「楽しみですね!」
たると。
「だな!」
ハヤテ。
「まだ明日ですよ」
シズク。
「分かってる!」
「本当~?」
セリア。
「怪しいわね」
リンファ。
「…………」
俺も少し楽しみだった。
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