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第16話 ソロ

平日の仕事終わり。


帰宅して風呂と夕飯を終わらせた。


ふと時計を見てみると午後九時過ぎ。


「少しだけやろうかな」


俺はヘッドセットを被った。


◇◇◇


《始まりの街》。


「…………」


いつもの街。


プレイヤー。


NPC。


店。


人の声。


最近はログインすると誰かしらいることが多い。


「…………」


メニューを開き、フレンド欄を確認。


《ハヤテ OFFLINE》


《たると OFFLINE》


《リンファ OFFLINE》


《セリア OFFLINE》


《シズク OFFLINE》


「…………」


全員いない。


珍しい。


グループメッセージも確認する。


特に新しいメッセージはなかった。


「…………」


まあ。


こういう日もあるか。


ゲームを始めた頃は一人だった。


むしろ。


誰かと一緒に遊ぶようになったのは最近。


一人でも別に問題ない。


「何しよう」


クエスト。


探索。


素材集め。


レベル上げ。


色々ある。


「…………」


俺は自分の装備を見る。


短刀。


今までほとんどこれ一本。


近づく。


避ける。


斬る。


基本的には近接。


「遠距離欲しいな」


魔法は使えない。


弓。


「…………」


なんか違う。


「装備屋見てみるか」


一人だし時間もある。


適当に見てみよう。



装備屋に入る。


「いらっしゃいませ!」


NPCの店員。


壁にある棚には色々な武器がある。


剣。


槍。


斧。


弓。


杖。


短剣。


「いっぱいあるな」


今まであまりちゃんと見てなかった。


剣。


ハヤテが使ってる。


二本。


槍は長いし使いにくそう。


斧は重すぎて俺のスピードが生かせない。


「…………」


やっぱり違う。


棚を覗くと小さい武器が並んでいる。


短剣。


ナイフ。


そして。


「ん?」


見慣れない形。


手に取る。


細長い。


先端が尖っている。


《クナイ》


分類。


投擲武器。


「…………」


クナイ。


「忍者?」


自分を見る。


狼耳。


尻尾。


女の子。


軽装。


短刀。


そしてクナイ。


「…………」


まあ。


いいか。


詳細を見る。


《クナイ》


投擲可能。


近接使用可能。


投擲後は回収可能。


破損時は消失。


「回収できるんだ」


それなら使えそう。


値段を見る。


「二本セットで150G……」


高いような気がする。


まぁ。


試すくらいならいいか。


「これください」


「ありがとうございます!」


3セット購入。


ピコン。


《クナイを購入しました》


アイテム欄。


《クナイ×6》


「よし」


使ってみよう。



《始まりの街》を出る。


夜。


草原。


空には月。


昼よりプレイヤーも少ない。


少し歩く。


街から離れる。


「この辺でいいかな」


周囲には魔物なし。


人もいない。


木が一本生えてる。


「…………」


木。


「…………」


ゴウマ。


この前ずっと殴ってた。


「…………」


俺は殴らないけど。


クナイを一本取り出す。


木から少し離れる。


「これくらい?」


五メートルくらい。


クナイを見る。


「…………」


どうやって投げるんだろ。


説明。


《投擲可能》


それだけ。


「雑だな」


構える。


「…………」


こう?


分からない。


とりあえず投げてみる。


「やっ」


ヒュッ!


クナイが飛ぶ。


木。


「…………」


その右。


かなり右。


草むら。


ザクッ。


「…………」


外れた。


しかも。


結構外れた。


「…………」


歩く。


クナイ回収。


木の前へ戻る。


「もう一回」


構える。


投げる。


ヒュッ!


今度は左。


ザクッ!


地面。


「…………」


回収。


戻る。


三回目。


「やっ」


ヒュッ!


ザクッ!


「…………」


木に届かず、地面に刺さる。


「…………」


難しい。


近接の方が楽だ。


敵なら近づいて斬ればいい。


でも。


遠くから攻撃できれば便利。


逃げる敵。


こっちへ来る敵。


距離がある時。


使える場面はありそう。


「もう一回」


投げる。


外れる。


拾う。


投げる。


外れる。


拾う。


「…………」


地味。


一人で木に向かってクナイを投げて、一人で拾いに行く。


「…………」


何してるんだろ。


ゴウマのこと言えない気がしてきた。


「…………」


いや。


木は殴ってないから大丈夫。


多分……。


もう一度。


構える。


「…………」


さっきは右。


その前は左。


力を入れすぎると方向がズレる。


腕だけで投げる。


「…………」


違うな。


少し身体を使う。


踏み込む。


腕。


手を離す。


ヒュッ!


カッ!


「…………」


木の端に刺さった。


「お」


初めて刺さった。


「…………」


もう一回。


クナイを抜く。


同じ位置へ戻る。


構える。


踏み込む。


投げる。


ヒュッ!


ザクッ!


「…………」


地面。


「…………」


偶然だった。


もう一回。


ヒュッ!


カッ!


刺さる。


「…………」


今度は当たった。


何となく分かってきた。


投げる方向。


手を離すタイミング。


力。


距離。


「…………」


もう少し近くからやるか。


距離を縮める。


投げる。


カッ!


当たる。


「なるほど」


近いと当てやすい。


当たり前だけど。


今度は少し離れる。


ヒュッ!


カッ!


木。


「…………」


ヒュッ!


ザクッ!


地面。


「遠いと難しいな」


拾う。


戻る。


また投げる。



投げる。


拾う。


投げる。


拾う。


しばらく繰り返した。


「…………」


最初よりはマシ。


木には当たる。


中心。


狙った場所までは難しい。


でも。


木には当たるようになってきた。


「実際に動く相手だとどうなんだろ」


木は動かない。


魔物は動く。


「…………」


試すか。


クナイを回収。


短刀を確認。


草原を歩く。


少しして。


ガサッ。


「…………」


いた。


ゴブリン。


一体。


棍棒。


まだ俺には気付いていない。


「ちょうどいい」


クナイを一本。


距離。


木に投げていた時より少し遠い。


「…………」


構える。


ゴブリンが動く。


そして止まる。


また動く。


「難しいな」


タイミングを見る。


「…………」


今。


ヒュッ!


「ギャッ!?」


カッ!


「…………」


当たった。


肩にクナイが刺さっている。


「ギャギャ!」


ゴブリンが俺に気付く。


走ってくる。


「倒せるほどじゃないか」


クナイだけでは大したダメージになっていない。


ゴブリンが棍棒を振り上げる。


俺は短刀を抜く。


ブンッ!


避ける。


横に踏み込む。


ザシュッ!


「ギャッ!」


ゴブリンが倒れた。


「…………」


短刀。


クナイ。


倒れたゴブリンからクナイを回収。


「練習すれば使えるかも」


現状だと、遠くから倒すことは難しそう。


でも。


先に攻撃する。


注意を引く。


少し削る。


近づいてきたところを短刀。


「…………」


こっちの方がいいかも。


短刀だけよりできることは増える。


「もう少しやろう」



ゴブリン。


ヒュッ!


外れた。


「ギャッ!」


「…………」


動くとやっぱり難しい。


接近。


ザシュッ!


倒す。


次。


ウルフ。


ヒュッ!


カッ!


「ガウッ!」


当たる。


走ってくる。


横へ回避。


ザシュッ!


倒す。


次。


ゴブリン。


ヒュッ!


ザクッ!


「…………」


地面。


「ギャギャ!」


「こっち来るよね」


短刀。


戦う。


倒す。


回収。


また探す。


「…………」


少しずつ当たるようになってきた。


最初は木にすら当たらなかった。


それを考えれば。


「まあ」


クナイを見る。


「悪くないかな」


メニューを開き、時間を確認する。


午後十一時四十七分。


「…………」


もうこんな時間。


明日も仕事だ。


「帰ろ」



《始まりの街》。


戻る。


夜でも人はいる。


冒険者ギルド。


店。


プレイヤー。


NPC。


「…………」


今日は一人。


クエストはしてない。


誰とも遊んでない。


装備屋へ行って。


クナイを買って。


投げた。


外した。


拾った。


また投げた。


少し当たるようになった。


魔物にも使った。


それだけ。


「…………」


まあ。


こういう日も悪くない。


メニューからログアウトを選択。


YES。


視界が暗くなった。


◇◇◇


目を開けると自分の部屋。


「…………」


ヘッドセットを外して片付ける。


そして。


ベッドに横になる。


「疲れた」


明日も仕事。


目を閉じる。


「…………」


クナイ。


もう少し練習すれば普通に使えるようになるかな。


「…………」


今度またやろう。


そのまま俺は眠るのだった。

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